イギリスの競走
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/13 00:02 UTC 版)
イギリスでは、現代でもしばしば正式な文書で「約10ハロン」というような表記が行われる。サンダウン競馬場のG1競走エクリプスステークスは、一般には「約10ハロン(1マイル1/4、あるいは1マイル2ハロン)」(約2011メートルに相当)と公称するが、より正確には1マイル1ハロン209ヤード(約2002メートル)である。ほかにも、イギリスで行われる競走は、ダービー(エプソム競馬場の12ハロン6ヤード)、セントレジャー(ドンカスター競馬場の14ハロン115ヤード)、インターナショナルステークス(ヨーク競馬場の10ハロン56ヤード)のように、半端な距離で行われるものがある。ダービーは、元来伝統的に「12ハロン」とされてきたスタート位置とゴール位置を近年に測量しなおしてみると、実際には誤差があったものである。その際に、12ハロンに合わせてスタートやゴールを移動することなく、伝統的なスタート位置やゴール位置をそのまま残したことで半端な距離で行われることになった。19世紀ごろまではスタートの方法がバリヤー式やフラッグ式であり、終盤まではゆっくりと走るレース形態も相まって、スタートでの多少の距離の差異は無視できる程度だったのである。世界最古の重賞競走といわれるセントレジャーは創設当初2マイルであったが、スタートしてすぐコーナーを曲がるので、やがてコーナーを曲がり切ったところからのスタートに変更になり、距離が少し短くなったが半端な距離であるのを認識したままで長い歴史を刻んでいる。また比較的歴史の浅いインターナショナルステークスでも「10ハロン」になお88ヤードの距離があるのは、誤差にしては数字が大きいので、このあたりにイギリス人の距離に対する考え方が窺える。 かつては今ほど厳密に距離を数値化していなかった。競馬の始めの頃の形態では、スタートとゴールが定まっていれば、その間の距離がどうであれ、勝敗を決することはできたからである。競馬が広まり、記録や出版が行なわれるようになっても、これは変わらなかった。18世紀や19世紀の新聞や資料では、競走の開催や結果の告知・報道の際は、「ニューマーケット競馬場のケンブリッジシャーコースで施行」とだけ表記されていた。「ケンブリッジシャーコース」のように表記するだけでスタート地点とゴール地点が一意に定まり、距離を表記する必要はなかった。のちに距離を数値で表現するようになったあとも、こうした表現は一部で残っており、現代では「400メートル地点で」と表現するところを「シティアンドサバーバンコース(のスタート地点)のあたりで」という表現が行なわれた。また、「1マイル+1ディスタンス(a mile and a distance)」という表現も行なわれた。例えば、かつて秋のニューマーケット競馬場の名物競走だったケンブッリジシャーハンデキャップは「ケンブリッジシャーコースで施行」と告知される。ケンブリッジシャーコースは「直線走路の最後の1マイル+1ディスタンス(the last mile and a distance,straight)」と定義されていた。「1ディスタンス (a distance)」というのは240ヤードに相当し、「1マイル240ヤード=1マイル1ハロン20ヤード」となる。これはかつてヒート競走が行なわれていた頃の名残りである。ヒートレースでは1着馬から240ヤード以上遅れると失格になるため、ゴールから240ヤード手前に「ディスタンスポール」という棒が設置されており、そこに審判がいて判定を行っていた。現代のイギリスでは、30馬身(おおよそ240フィート=80ヤードに相当)以上の着差を正式に「大差(1ディスタンス (a distance) )」という。
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