アリゾナ銃乱射事件と「血の中傷」
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/08 14:26 UTC 版)
「ティーパーティー運動」の記事における「アリゾナ銃乱射事件と「血の中傷」」の解説
2011年1月8日、アリゾナ州ツーソンで銃乱射事件が起きた。スーパーマーケットを会場とする政治集会で若い男が銃を乱射し、民主党のガブリエル・ギフォーズ下院議員が頭部を撃たれ、彼女は一命を取りとめたが、9歳の少女を含む6人が死亡、14人が負傷する大惨事となった。議員が標的となったことから報道合戦は加熱した。犯人は当初完全黙秘していたのだが、政治的理由で起こされた可能性があるとする憶測が急速に広まり、ギフォーズ議員のような民主党の中道派が狙われたのは、ティーパーティー運動を支持するサラ・ペイリンなどの保守派が煽ったからだという批判が巻き起こった。これは中間選挙の時にペイリンが「撤退してはならない。代わりに弾丸をつめろ」と発言していて、狙撃された議員を含む複数の民主党候補優位の選挙区に”標的マーク”をつけた地図をウェブにアップしていたからで、「弾丸をつめろ」の真意は「投票を意味していた」と釈明されたが、全米ライフル協会の終身会員であるペイリンの発言だけに、特に精神に問題のある常軌を逸した人物には、文字通り”撃ち殺せ”の意味にとられかねないと思われたからである。 1月12日、非難の矢面に立たされたペイリンはビデオ声明を発表し、被害者への哀悼もそこそこに「自分への非難は政治的陰謀」で、「ジャーナリストや評論家は、憎しみや暴力をあおる『血の中傷』をでっち上げるべきではない」と厳しい口調で反論した。しかし発言は宗教的に不穏当であったほか、まだ被害者が死線をさまよい、遺族が悲しんでいる最中に、極めて不謹慎であるという印象が世論に広まって、逆に支持者が一気に離れた。その後の捜査で、事件には全く政治的動機がなかったことが明らかになったが、この事件はいつものペイリンの失態というだけでなく、ティーパーティー運動の過度に攻撃的な政治手法そのものに冷水を浴びせ、一時のブームの「憑き物が落ちる」きっかけにとなったとされる。
※この「アリゾナ銃乱射事件と「血の中傷」」の解説は、「ティーパーティー運動」の解説の一部です。
「アリゾナ銃乱射事件と「血の中傷」」を含む「ティーパーティー運動」の記事については、「ティーパーティー運動」の概要を参照ください。
- アリゾナ銃乱射事件と「血の中傷」のページへのリンク