にべもなく、よるべもなく
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/15 07:29 UTC 版)
「傘をもたない蟻たちは」の記事における「にべもなく、よるべもなく」の解説
工藤誠也先輩が「妄想ライン」という掌編小説で文学賞をとり、海と山と工場しかない小さなこの街の地元新聞に大きく取り上げられた。幼なじみのケイスケがどうしても読みたいというので、純は漁師の根津爺に頼んで買ってきてもらい自分も読んでみたが、良さが全くわからない。愛車のポルシェ・カイエンの助手席に女を乗せて首都高を走る話だったが、「東京はあんなんじゃない」と思う純は、工藤先輩が本当に東京に行ったことがあるのかどうか、ケイスケと共に直接先輩に聞きに行くことになる。しかしそこで純は工藤先輩がサッカー部の男子生徒とキスをする姿を目撃してしまっただけでなく、「実は工藤先輩が好きだったんだ」と泣きながらケイスケから打ち明けられる。その後、同性愛への生理的な嫌悪感から、自分が長年の親友への見方を変えてしまっていることに気付いた純は、ゲイもののアダルトビデオなどを見てなんとか理解しようと努力する。しかしどうしても受け入れられずケイスケとの距離はどんどん遠くなり、やがて純は同じクラスの女子生徒・赤津舞と付き合うようになる。彼女がボーイズラブ漫画を持っていると知った日、純は強引に彼女と初めてのセックスをするが、ケイスケを理解できない自分、赤津を犯した自分こそ汚い最低の人間のように思え、入水自殺を図ろうとするが、そんな純を水から引き揚げて助けたのは他の誰でもない、ケイスケだった。純はケイスケから逃げていたことを面と向かって謝る。時は過ぎ、13年後。大人になった純は、婚約者の結子を兄のおさがりの三代目スズキ・ワゴンRの助手席に乗せ、「妄想ライン」と同じ場所を走って小説の描写の答え合わせをする。 純(じゅん) 14歳。8歳年上の兄が東京へ行った後に変わってしまったため、東京に対して苦々しい思いを持っている。 中学卒業後は地元の水産高校に進学し、高校卒業後は亡くなった根津爺の後を継いで魚屋兼猟師になった。 ケイスケ 純の親友で同い年。お互いの両親が学生時代からの知り合いのため、物心ついた時から一緒にいる幼なじみでもある。水泳を習っていたため泳ぎには自信があったが、小学2年生の時に海で溺れて以来、水泳は続けているものの、海では泳いでいない。中学3年になってからは水泳部の部長になった。 中学卒業後はスポーツ推薦で東京の進学校へ行った。 工藤 誠也(くどう せいや) 中学3年生。純やケイスケの先輩。掌編小説「妄想ライン」がある文学賞の佳作に選ばれて文芸誌に掲載された。爽やかなルックスで成績はトップクラスであり、陸上部のエース。教師やPTA会員からの人望もあり、生徒会長にも満場一致で抜擢された。 根津爺(ねづじい) 地元漁師。鮮魚店も営んでいる。家族はおらず、友達もいない。「あの爺さんに近づいてはいけない」というのが街の暗黙のルールとしてあったが、純の兄が東京へ行ってすぐの頃、好奇心から鮮魚店に忍び込んだ純に魚をごちそうして以来、純とケイスケとは仲良くしている。 実は昔、2人の漁仲間と船を出した時に船が転覆し、1人の仲間を亡くしたが、それを機に漁師を辞めた1人とは違って漁師を続けたため、人々に「ひとでなし」と言われるようになってしまった過去がある。 亡くなった後は遺書に従い、遺骨は純が海へ散骨した。 純の兄 いつも綺麗な女性とつきあっているおしゃれな兄だったが、高校卒業と同時に美容師を目指して上京。2年間専門学校に通い、1年程新宿の美容院に勤めたものの、ある日突然浮浪者のような格好で「東京はもういい」と実家に戻ってきた。その後ひきこもっていたが、父親が殴った後に自分が勤めている工場へ連れていかれ、なんとか人間らしさを取り戻した。 赤津舞(あかつまい) 中学3年生になって初めて純と同じクラスになった女生徒。派手でも地味でもなく、育ちは良さそう。バスケ部のマネージャー。 純と交際するようになるが、県内の私立高校に進学したため、その関係は自然消滅した。 結子(ゆうこ) 純の来月結婚予定の婚約者。新横浜が地元。
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