「非細胞性産物」と「細胞性産物」
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/24 00:32 UTC 版)
「細胞農業」の記事における「「非細胞性産物」と「細胞性産物」」の解説
非細胞性産物とは、細胞から生産されるタンパク質や脂質などの有機分子で作られ、生産物に細胞は含まれていないものを指す。世界初の非細胞性産物はインスリンである。 1922年より糖尿病の治療に用いられるインスリンは、豚や牛の膵臓から採取するしかなかった。しかし1978年、Arthur Riggs、Keiichi Itakura、Herbert Boyerらは細菌にヒトのインスリン合成遺伝子を導入することで、細菌からヒトのインスリンを生産させることを実現させた。これにより従来よりも安価で安全に、実際に人間が作るインスリンと同一のインスリンを供給できるようになった。現在に至るまで、インスリンの大部分は遺伝子操作された細菌や酵母によって生産され糖尿病治療に利用されている。 他の非細胞性産物の例として、レンネットや牛乳などがある。レンネットはチーズの製造に用いられる凝乳酵素で、本来は仔牛の第四胃から採取される。1990年にレンネットを生産できるように遺伝子操作された細菌がアメリカ食品医薬品局(FDA)に承認され、現在では世界に流通する45 %が細胞農業で生産されるレンネットである。 まだ流通はされてはいないが、牛乳や卵白、ゼラチンも細胞農業によって生産する研究も進められている。 細胞性産物とは生きた、もしくは生きていた細胞により構成される産物を指す。食肉や革、毛皮、木材、臓器まで含まれる。 細胞性産物につながる研究の始まりは1971年、Russell Rossはモルモットの大動脈から採取した細胞を培養して、8週間育てることに成功した。 また動物の幹細胞についても、1990年代から培養する事ができるようになった。2000年代には更に研究が進み、2013年にはMark Post教授率いるマーストリヒト大学の科学者らによって、世界で最初の筋肉細胞を培養して作ったハンバーガーの公開試食会がロンドンで開催された。まだ研究段階であるが技術的には生産はできることが示された。しかし上記の培養肉ハンバーガーの生産には、140gで3000万円の費用が掛かっている。現在のお肉と同等の価格まで下げることが当面の目標となっている。 現在では多くの研究機関やベンチャー企業が培養食肉の開発に取り組んでおり、個人で培養肉を作る人すらいる。
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