東北地方太平洋沖地震 津波

東北地方太平洋沖地震

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/24 10:57 UTC 版)

津波

日本国内

津波警報

仙台湾周辺の海岸線の変化
(上)浸水後(3月12日)
(下)浸水前(2月26日)
国土地理院の調査に基づく仙台市・名取市付近の津波浸水範囲。仙台平野の広範囲で海岸から4 - 6 km内陸まで浸水した。

この地震で気象庁は、気象庁マグニチュード7.9という推定に基づき[79]、まだ揺れの続いている中の14時49分、岩手県、宮城県、福島県の沿岸に津波警報(大津波)[注 28]、その他の全国の太平洋沿岸などに津波警報津波注意報を発表し、予想される津波の高さについて、宮城県で6 m、岩手県と福島県で3 mと発表した。しかし、実際の津波の高さはこれを大きく上回った。通常は地震発生15分後に算出されるモーメントマグニチュードがこの地震では算出できず、津波警報の続報に生かせなかった[79]。3m程度ならば2階に避難で助かると考え逃げ遅れた人も多かった[246]。また15時には岩手県沖の海底水圧計で5 mの津波が観測されていたが、津波の予測に水圧計を使うことは気象庁のマニュアルになかった。その後、水圧計よりも陸側に設置されたGPS波浪計や沿岸の検潮所などで高い津波が観測されたため、津波警報・注意報は15時14分、15時30分に更新・拡大された。岩手県釜石沖のGPS波浪計では15時12分に6.7 mを観測し、これはマニュアルによれば沿岸では10 m以上の高さになるとされる値だったが、15時14分の警報更新では10 m以上の予想は宮城県のみで、岩手県と福島県では6 mの予想だった[247]。15時30分には岩手県から千葉県九十九里外房までの予想高さが10 m以上になった[248][249]が、すでにその時間帯には三陸沿岸に津波が襲来していた。

3月12日(土)3時20分までに太平洋沿岸の北海道から小笠原諸島四国までと青森県日本海沿岸には津波警報(大津波)が、北海道日本海沿岸南部や東京湾内湾、伊勢湾瀬戸内海の一部、九州南西諸島などには津波警報が、日本海や瀬戸内海の沿岸などには津波注意報が発表され、日本の沿岸の全てで津波警報(大津波)、津波警報、津波注意報のいずれかが発表されたこととなった[250][251]。仙台市宮城野区太白区若林区・青森県太平洋側沿岸をはじめとして全国各地に避難指示が発令された[252][253]。気象庁が津波警報・注意報を全て解除したのは、丸二日以上経過した3月13日17時58分だった[254]。なお、気象庁が津波警報(大津波)を発表したのは1年ぶり(そのうち、青森・岩手・宮城では1年ぶり、北海道では約18年ぶり)である。

津波警報 (大津波) 等が発表された地域

本震発生の翌日(3月12日(土))の未明(午前3時20分)の時点で発表されていた津波警報(大津波)・津波警報・津波注意報は次の通り[255]

警報・注意報 津波予報区の名称 (名称は当時のもの)
津波警報
(大津波)
北海道太平洋沿岸東部 北海道太平洋沿岸中部 北海道太平洋沿岸西部 青森県日本海沿岸 青森県太平洋沿岸 岩手県 宮城県 福島県 茨城県 千葉県九十九里・外房 伊豆諸島 千葉県内房 小笠原諸島 相模湾・三浦半島 静岡県 和歌山県 徳島県 高知県
津波警報 北海道日本海沿岸南部 陸奥湾 東京湾内湾 愛知県外海 伊勢・三河湾 三重県南部 淡路島南部 愛媛県宇和海沿岸 有明・八代海 長崎県西方 熊本県天草灘沿岸 大分県瀬戸内海沿岸 大分県豊後水道沿岸 宮崎県 鹿児島県東部 鹿児島県西部 種子島・屋久島地方 奄美諸島・トカラ列島 沖縄本島地方 大東島地方 宮古島・八重山地方
津波注意報 北海道日本海沿岸北部 オホーツク海沿岸 秋田県 山形県 新潟県上中下越 佐渡 富山県 石川県能登 石川県加賀 福井県 京都府 大阪府 兵庫県北部 兵庫県瀬戸内海沿岸 鳥取県 島根県出雲・石見 隠岐 岡山県 広島県 香川県 愛媛県瀬戸内海沿岸 山口県瀬戸内海沿岸 山口県日本海沿岸 福岡県瀬戸内海沿岸 福岡県日本海沿岸 佐賀県北部 壱岐・対馬

この時点で、日本における全ての沿岸部に、津波警報(大津波)・津波警報・津波注意報のいずれかが発表されていた[256]

観測された津波

調査により推定された各地の津波の浸水高・遡上高の緯度方向における分布、東北地方太平洋沖地震津波合同調査グループ、2012年3月1日発表による。
各地の検潮所・験潮所・験潮場で観測された津波の高さ。岩手県・宮城県・福島県・茨城県にかけての太平洋岸と、北海道の一部で3 mを超える大津波が観測された。また、太平洋岸の広い範囲で1 m以上の津波が観測されている。
三陸における過去の津波の高さとの比較。赤:東北地方太平洋沖地震、黄色:2010年チリ地震、緑:1960年チリ地震、水色:1933年昭和三陸地震、青:1896年明治三陸地震。2011年および2010年の丸印は遡上高、三角印は浸水高。

地震によって、観測史上最大級の非常に大規模な津波が発生し、北海道[257]から千葉県[258]にかけて大津波が押し寄せた。特に岩手県・宮城県・福島県の3県では、海岸沿いの集落が軒並み水没したのをはじめ、仙台平野などの平野部では海岸線から数km内陸にわたる広範囲が水没、遡上した津波により河川沿岸ではかなり内陸まで水没した。陸に押し寄せた高い津波は、各地で防潮堤堤防を乗り越え、建築物構造物を破壊し、それらが瓦礫となって車などと一緒にさらに内陸まで侵入した後、引き波となって瓦礫を海まで引きずり出した後、後続の波によって再び内陸へという形で繰り返し沿岸を襲い、甚大な被害を出した[257][259][260][261][262]。また、震源から見て日本列島の裏側に当たる日本海側沿岸や瀬戸内海沿岸、東京湾内でも津波を観測している[263]。航空写真などを基に国土地理院が分析したところによると、津波により浸水した範囲は、青森・岩手・宮城・福島・茨城・千葉の6県62市町村で561 km2に及んだ[264]

計器観測された津波高

津波の第一波は、震源に近い観測所では地震発生とほぼ同時刻に数十cm程度の海面変動が観測され、陸に近い分岐断層のずれによる津波が早い段階で到達した可能性も考えられていた[265]。しかし、気象庁は後日の精査により、釜石大船渡石巻相馬の4地点については、津波によるものと海震などによるものとの区別が難しいことから速報値を取り消し、「11日午後2時台」として何分かは「不明」と発表し「今後も第1波到達時刻の特定は難しい」との見解を示した[266][265]宮古港では15時1分に124 cmの引き波を観測し、第一波の到達時刻と特定された[266]

検潮所の測定による津波の高さは、岩手県の宮古で8.5 m(15時26分)以上[注 29][267]、釜石で4.2 m(15時21分)以上、大船渡で8.0 m(15時18分)以上[267]、宮城県の石巻市鮎川で8.6 m(15時26分)以上[268]、福島県の相馬で9.3 m(15時51分)以上[8]などだった。ただ、東北地方のこれらの検潮所は津波によって途中から観測データを送信できなくなったため、それ以降については記録が残っていない[269]。このうち相馬の記録のみ、引き波の後の最初の押し波が全て記録されているが、気象庁はこの記録について、これ以降の津波の記録が他の検潮所と同様に計測できておらず、後続の波がこれよりも高くなった可能性を考慮して「9.3 m以上」と表現している。このほか、青森県の八戸で4.2 m(16時57分)以上(一時的に欠測の部分あり)[270]、茨城県の大洗で4.0 m(16時52分)を記録している[271]。福島県のいわき市小名浜では3.3 m(15時39分)だった[272]。距離が近い東北地方だけでなく、北海道の太平洋岸で1 - 3.5 m程度、千葉〜九州の太平洋沿岸で1 - 3 m程度、日本海側でも1 m未満の津波が観測された。

沖合に設置されたGPS波浪計は、岩手県北部沖〜福島県沖において15時12分から15時19分の間に最大波を観測し、このうち最大のものは岩手県南部沖(釜石沖)の6.7 mだった(沿岸ではさらに高くなる)。岩手県南部沖では少なくとも7回の津波を観測した。

東北大学教授今村文彦[273]シミュレーションの結果として、津波により土砂が削り取られて流速や高さが増加したとしている。例えば気仙沼市では高さ8 mが土砂の効果で16 mになり、陸前高田市では速さが1.5倍になり、引き波の速さが2倍になった[274]

また、波源域から発せられた直接波だけでなく、太平洋の対岸にあたる南米で反射した長周期(30分から60分)の津波を約50時間後に津波コーダとして海底水圧計は観測していた[275]

気象庁による各津波予報区内で観測された津波の高さは以下の通り[255][263]

津波予報区 予報区内で最大値、又は高い津波の観測地点 最大波の時刻 津波の高さ
北海道太平洋沿岸東部 根室市花咲 11日 15:57 286 cm
北海道太平洋沿岸中部 えりも町庶野 11日 15:44 3.5 m
北海道太平洋沿岸西部 苫小牧東港 11日 16:17 246 cm以上
北海道日本海沿岸北部 稚内 12日 02:22 38 cm
北海道日本海沿岸南部 岩内港 12日 02:22 26 cm
オホーツク海沿岸 枝幸港 12日 05:03 43 cm
青森県日本海沿岸 竜飛 11日 16:32 46 cm以上
青森県太平洋沿岸 八戸 11日 16:57 4.2 m以上
陸奥湾 青森 12日 12:07 30 cm以上
岩手県 宮古 11日 15:26 8.5 m以上
釜石 11日 15:21 420 cm以上
大船渡 11日 15:18 8.0 m以上
宮城県 石巻市鮎川 11日 15:26 8.6 m以上
秋田県 観測されず(潮位データ欠測)
山形県 酒田 12日 00:54 0.4 m
福島県 相馬 11日 15:51 9.3 m以上
いわき市小名浜 11日 15:39 333 cm
茨城県 大洗 11日 16:52 4.0 m
千葉県九十九里・外房 銚子漁港 11日 17:22 2.5 m
千葉県内房 館山市布良 11日 17:06 172 cm
東京湾内湾 横浜 11日 17:38 155 cm
伊豆諸島 八丈島八重根 12日 02:48 1.4 m
小笠原諸島 父島二見 11日 16:46 182 cm
相模湾・三浦半島 小田原 11日 15:49 94 cm
新潟県上中下越 新潟西港 12日 04:55 18 cm
佐渡 観測されず
富山県 伏木富山港新湊 12日 04:49 9 cm
石川県能登 七尾港 11日 20:47 19 cm
石川県加賀 金沢 12日 12:56 19 cm
福井県 観測されず
静岡県 御前崎 11日 17:19 144 cm
愛知県外海 田原市赤羽根 11日 17:31 155 cm
伊勢・三河湾 名古屋 11日 19:36 105 cm
三重県南部 鳥羽 11日 19:14 182 cm
京都府 舞鶴 13日 11:40 25 cm
大阪府 大阪天保山 11日 18:48 62 cm
兵庫県北部 豊岡市津居山 12日 01:03 7 cm
兵庫県瀬戸内海沿岸 神戸 11日 20:06 27 cm
淡路島南部 洲本 11日 19:36 21 cm
和歌山県 串本町袋港 12日 01:32 151 cm
鳥取県 境港市境 12日 05:05 26 cm
島根県出雲・石見 浜田 12日 07:53 14 cm
隠岐 隠岐西郷 12日 04:06 10 cm
岡山県 玉野市宇野 11日 20:01 10 cm
広島県 11日 20:37 29 cm
徳島県 阿波由岐 11日 20:28 115 cm
香川県 高松 11日 22:27 17 cm
愛媛県宇和海沿岸 宇和島 12日 07:10 69 cm
愛媛県瀬戸内海沿岸 松山 11日 21:14 20 cm
高知県 須崎港 11日 20:59 278 cm
山口県日本海沿岸 下関市南風泊港 12日 03:28 11 cm
山口県瀬戸内海沿岸 下関港長府 11日 23:00 32 cm
福岡県瀬戸内海沿岸 北九州市門司 11日 23:10 34 cm
福岡県日本海沿岸 福岡市博多 12日 02:09 32 cm
有明・八代海 天草市本渡港 11日 21:04 70 cm
佐賀県北部 玄海町仮屋 12日 05:31 20 cm
長崎県西方 長崎 11日 21:20 84 cm
壱岐・対馬 壱岐島郷ノ浦港 12日 05:13 12 cm
熊本県天草灘沿岸 苓北町都呂々 12日 03:12 31 cm
大分県瀬戸内海沿岸 別府港 11日 20:29 55 cm
大分県豊後水道沿岸 佐伯市松浦 11日 17:40 43 cm
宮崎県 宮崎港 12日 03:33 164 cm
鹿児島県東部 志布志港 11日 17:38 106 cm
種子島・屋久島地方 種子島熊野 12日 03:23 152 cm
奄美諸島・トカラ列島 奄美市小湊 12日 01:49 121 cm
鹿児島県西部 枕崎 12日 02:28 91 cm
沖縄本島地方 那覇 11日 21:12 60 cm
大東島地方 南大東漁港 11日 17:26 19 cm
宮古島・八重山地方 宮古島平良 11日 19:34 65 cm
推定された津波高

日本気象協会は、岩手県宮古市から福島県相馬市までの沿岸の津波高(海上での津波の高さ)は約8 - 9 mあったと推定した[33]。一方、陸上の比較的海岸に近い地点での浸水高は、浸水した痕跡などから、釜石で9.3 m、大船渡で11.8 m[263]、岩手県から宮城県牡鹿半島までの三陸海岸で10 - 15 m前後、仙台湾岸の高いところで8 - 9 m前後としている[33]。陸前高田市、南三陸町、宮古市などでは建物の4、5階まで浸水した[276]。津波の溯上高(斜面を駆け上がった高さ)は、三陸海岸では30 m以上のところがあった[277]。全国津波合同調査チームの調査によると、津波の遡上高は岩手県大船渡市の綾里湾において40.1 mにまで達したものが最大と見られており、この記録は明治三陸地震の最大記録38.2 m(同市綾里地区)を上回り、日本の観測史上最大の遡上高となった[9][278][279]。また東京大学地震研究所准教授の都司嘉宣によると、宮城県女川町の笠貝島では溯上高が43 mに達していた可能性がある[280]。他に、宮古市田老地区の小堀内漁港近くで37.9 m、岩手県野田村で37.8 m、宮城県女川町で34.7 m、大船渡市三陸町綾里で30.1 mの遡上高が確認されている[278][279][281][282]。福島県の警戒区域内での津波は、東京大学大学院教授佐藤愼司(海岸工学)らと福島県の共同で2012年2月に初めて調査が行われ、最大で21.1 m(富岡町小浜)に達していたことが分かった[283]

津波の波形と発生メカニズム

岩手県北部沖から宮城県北部沖のGPS波浪計では、潮位は最大波の数分前に小さく上昇し、その直後に高く鋭い波形が現れた。また女川町沖の波高計は15時16分に+5.77 mだったが、15時23分には-5.05 mとなり落差約11 mの引き波となっている[284][285][286]。釜石沖に敷設された海底ケーブル式水圧計による海面変動の記録(TM1, TM2)でも、最初に海面が徐々に2 m程度上昇したのち、約11分後にパルス的な3 m程度の急上昇が見られた。プレート境界の比較的深い部分の断層破壊によってもたらされたのが最初の長く緩やかな海面上昇で、それに続く急激な高い津波は、海溝近くでの大規模な断層破壊によるものと考えられている。

一方で、この二つの異なる波長の津波は異なる波源から生じたものとする推定があり、海底電位磁力計による観測結果から長波長の緩やかな海面上昇は宮城県沖の広範囲の断層滑りが原因であるのに対し、短波長のパルス波は震源から約100 km北東の海溝付近が波源と考えられ、この位置は明治三陸津波の波源域に近く、何らかの関連が示唆されるとしている[287]。この、短波長の津波は震源から約150 km北東の日本海溝付近で発生した海底地滑りの可能性があり、これが津波を巨大化させた一因である可能性があるという[288][289]。また、海洋研究開発機構が海溝軸まで及んだ地震断層と推定していたものは、海溝周辺の地形変形を検討した結果、地すべりの可能性があるとされる[290]

地滑りのメカニズム

プレート同士の摩擦で500度以上の熱が生じ、内部の水が膨張した結果、隙間を押し広げる力が働いて滑りやすくなった。[291]

各地で被害を出した津波

宮城県女川町では、鉄筋コンクリート製のビルが基礎部分ごと地面から抜けて横倒しになった。このような例は世界的にも稀。町はビルを被害資料として保存する方針[292][293]だったが、後に解体された[294]

東北大学の今村文彦によるとNHKが仙台市若林区で撮影した津波の映像を分析し、津波の速さは沿岸から1 km内陸の地点では秒速約6 m・時速20 km以上であったと明らかにした[295]。名取川では津波が陸地の倍の速さで逆流し、堤防からあふれ出して流れ落ちる過程でさらに加速したことで内陸6 kmまで浸水したり、川沿いの集落も被害を受けた[296][32][297]

また、今村の話によれば千葉県旭市飯岡地区では「エッジ波」という現象により、17時26分に7.6 mという津波を観測したという。

仙台平野では名取川鳴瀬川阿武隈川七北田川などで数km以上津波が遡上した。北上川では、津波が河口から約50 km上流の地点まで遡上したことが河川水位の記録データから判明した[298]十勝川においても、河口から約13 km上流の地点まで遡上した[299]。関東地方では利根川で河口から約40 km上流まで、荒川で河口から約28 km上流まで遡上していることが確認された。

岩手県の宮古市田老地区では、チリ地震津波から集落を守ったとされる高さ10 m、総延長2433 mの防潮堤を津波が乗り越え、防潮堤は580 mにわたって粉砕された[300][301]。岩手県釜石市では、ギネス世界記録に「世界最深の防波堤」と認定されている全長2 km、深さ63 mの防波堤釜石港湾口防波堤が平成21年(2009年)に完成しており、津波によって防波堤自体は全体の7割が倒壊したものの、釜石市街地への浸水を約6分遅らせることができたとの分析結果が報告されている[302]。これに対し同県の普代村では、高さ15.5 m、全長155 mの防潮堤、普代水門により村の海岸地域が守られ、村全体で死者0名、行方不明者1名の人的被害に留まっている[303]。一方、釜石市唐丹町小白浜での破壊の状態から、防潮堤は向かってくる津波に対しての耐波力は有していたが、越流した引き波を想定した設計が不十分であったため防潮扉が破壊され、後続波に対しては無防備となったと考えられている[304]

その後の余震によっても、たびたび津波警報や津波注意報が出された[249]。7月10日9時57分ごろに発生した三陸沖を震源とするM7.3、最大震度4の余震では、本震以降で初めて津波を観測した(岩手県の大船渡と福島県の相馬でともに10 cm)[305]

津波による被害(宮城県)
(左)気仙沼市JR気仙沼線最知駅上空から北向きに川原漁港周辺を空撮(2011年3月13日(日))
(中)仙台市宮城野区沿岸上空から北向きに仙台港周辺を空撮(2011年3月12日(土))
(右)名取市日和山から北向きに閖上地区を撮影(2011年4月6日)。数台の重機が瓦礫の撤去作業をしている。
津波警報・津波注意報の発表時間と切り替えの推移[306]、観測された津波の検潮所での最大波高
津波警報(大津波)が発表された予報区。津波の高さ (m) 表記のうち、標準の太さは津波注意報、太字は津波警報、
太字下線は津波警報(大津波)。"10 m<"は10 m以上。"N"は警報区分引き下げのみで予想高さなし。"-"は継続。
予報区 3月11日 12日 13日 検潮所の最大波高と時刻
(注記がないものは11日)[263]
地震発生
14:46
14:49 15:14 15:30 16:08 22:53 13:50 20:20 07:30 17:58
北海道太平洋沿岸東部 0.5 m 1 m 3 m 6 m N N 解除 根室市花咲 286 cm (15:57)
北海道太平洋沿岸中部 1 m 2 m 6 m 8 m N N 解除 えりも町庶野 3.5 m (15:44)
北海道太平洋沿岸西部 0.5 m 1 m 4 m 6 m N N 解除 苫小牧東港 246 cm (16:17) 以上
青森県日本海沿岸 0.5 m 1 m 2 m 3 m N 解除
青森県太平洋沿岸 1 m 3 m 8 m 10 m< N N 解除 八戸 4.2 m (16:57) 以上
岩手県 3 m 6 m 10 m< N N 解除 宮古 8.5 m (15:26) 以上
大船渡 8.0 m (15:18) 以上
釜石 4.2 m (15:21) 以上
宮城県 6 m 10 m< N N 解除 石巻市鮎川 8.6 m (15:26) 以上
福島県 3 m 6 m 10 m< N N 解除 相馬 9.3 m (15:51) 以上
いわき市小名浜 3.3 m (15:39)
茨城県 2 m 4 m 10 m< N N 解除 大洗 4.0 m (16:52)
千葉県九十九里・外房 2 m 3 m 10 m< N 解除 銚子 2.5 m (17:22)
伊豆諸島 1 m 2 m 4 m 6 m N 解除 八丈島八重根 1.4 m(12日2:48)
小笠原諸島 0.5 m 1 m 2 m 4 m N 解除 父島二見 182 cm (16:46)
千葉県内房 0.5 m 1 m 2 m 4 m N 解除 館山市布良 172 cm (17:06)
相模湾・三浦半島 0.5 m 2 m 3 m N 解除 小田原 94 cm (15:49)
静岡県 0.5 m 2 m 3 m N 解除 御前崎 144 cm (17:19)
和歌山県 0.5 m 2 m 3 m N N 解除 串本町袋港 151 cm(12日1:32)
徳島県 0.5 m 2 m 3 m N 解除 徳島由岐 115 cm (20:28)
高知県 0.5 m 2 m 3 m N N 解除 須崎港 278 cm (20:59)

日本国外

太平洋津波警報センターが、アメリカ合衆国ハワイ州現地時間3月10日21時31分(地震発生から1時間45分後)に、同州に対し津波警報を発令[307]。太平洋津波警報センターはその他、ロシアやニュージーランド、南米のチリなども含む約50の太平洋沿岸の国・地域に津波警報を発令した[308]

日本から太平洋を隔てて遠く離れた中南米沿岸にも津波が押し寄せる恐れがあるとして、各国は市民に注意を呼び掛けた。沿岸地域や島嶼部では、津波を警戒して避難命令が出された[309]

南極スルツバーガー棚氷: Sulzberger Ice Shelf)付近(南緯77度西経148度)の海上に長さ9.5 km幅6.5 km厚さ80 m氷山が漂流していることが欧州宇宙機関の人工衛星Envisatによる観測で確認され、地震に伴う津波(高さ0.3 m)が繰り返し到達し、棚氷の一部を破壊し巨大な氷山を造ったとNASAが2011年8月9日明らかにした[310][311][312]

(左)津波によるエネルギー伝播の試算
(中)津波の太平洋沿岸各地への到達時間の試算
(右)津波によるエネルギー伝播のシミュレーション映像
(データは共にNOAAによる)
国・地域 避難 津波警報 津波の高さ 犠牲者 出典
台湾 0.1 m 0 [313]
中国大陸 0.5 m 0 [314]
ニュージーランド 0.4 m 0 [315]
アメリカグアム 0.4 m 0 [316][317][318]
アメリカ、北マリアナ諸島 0.4 m 0 [316][317]
アメリカ、ハワイ州(ほとんどの地域) 2.1 m 0 [319][320]
アメリカ、ミッドウェー島 1.5 m 0 [321]
アメリカ、ハワイ、マウイ島 2.1 m 0 [321][322]
アメリカ、アラスカ州シェミア島 1.5 m 0 [321]
アメリカ、アラスカ州アリューシャン列島 1.5 m 0 [321]
アメリカ、ハワイ、ハワイ島コナ 3.7 m 0 [321]
アメリカ、ウェーク島 1.8 m 0 [318][321]
アメリカ、カリフォルニア州 2 m 1 [323][324]
フィリピン(ほとんどの地域) 1 m 0 [325][326]
パラオ(一部地域) 0.11 m 0 [318][325][327][328][329][330]
ツバルナヌメア環礁 0.0/小さな波2回 0 [331]
インドネシアモルッカ諸島北スラウェシ州 0.1 m 0 [313][325][326][332]
インドネシアパプア州 1.5 m 1(行方不明5) [333]
ロシアオホーツク海沿岸 不明 不明 3.3 m 0 [334]
千島列島北方領土を含む) 3.3 m 0 [334][335]
メキシコ太平洋沿岸 不明 0.7 m 0 [336]
カナダブリティッシュコロンビア州 0.5 m 0 [337]
フランス領ポリネシアタヒチ島 0.4 m 0 [338][339]
フランス領ポリネシア、マルキーズ諸島 3.0 m 0 [340]
ペルーカヤオ 1.66 m 0 [341]
チリイースター島 0.3 m 0 [342]
チリアリカ 0.91 m 0 [341]

太平洋を往復した津波

津波は太平洋を越え、チリのタルカワノ観測所では2 mの津波を観測した (NOAA)。その津波の反射波が日本に戻ってきて47 - 48時間後に30 - 60 cmの津波が、小名浜、尾鷲、串本の各検潮所で観測されたと見られる[343][344]







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