指数関数 指数関数の概要

指数関数

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2014/11/07 14:40 UTC 版)

底が e である指数関数(グラフの 1 マスは 1

対数関数逆関数であるため、逆対数 (anti-logarithm, inverse logarithm ) と呼ばれることもある[1]

指数関数は次のように表記される。

b^x.

b を指数関数の (base ) といい、x を指数という。特に、底がネイピア数である場合 (b = e)、

e^x,\,\exp\,x,

と二種類の記法がある。 後者の記法を使って一般の底の指数関数を表すには、自然対数(底を e とする対数関数)を用いる。

b^x = \exp(x \ln b).

たとえば b = 1/2 の場合には、次のような表記ができる。

{\left(\frac{1}{2}\right)}^x = \exp{\left(x \ln \frac{1}{2}\right)} = \exp(-x \ln 2) .

特に断りがない場合、指数関数といえばネイピア数であるものを指す。また解析学の立場では、底がネイピア数でないものは指数関数とは呼ばないことが多い。このことは指数関数をどのような性質から定義するかによる。

定義

正の実数 a を底とする指数関数 ax は、次の公理から一意に定まる関数として定義される。

  • ax は、R から (0, ∞) への連続関数
  • a1 = a
  • ap + q = apaq

指数関数の値 ap において、指数 p自然数(あるいは有理数)であるとき、これは a冪乗に一致する。冪乗を適当な方法を用いて拡張することにより、指数関数を定義することも可能である。

微分

底がネイピア数 e である指数関数 ex導関数ex 自身となる。

\frac{d}{dx}e^x = e^x.

解析学においてはこの性質を満たす関数として指数関数を定義する。つまり、指数関数 exp(x) とは、

  1. \exp(0) = 1,
  2. \left(\frac{d}{dx} - 1\right)\exp(x) = 0.

を満たす関数のことである。この関数は代数的な定義で示される性質を満たし、両者は一致することが示される。

一般の指数関数 ax の導関数は自然対数 ln を用いて、合成関数の微分公式より、

\frac{d}{dx}a^x = \frac{d}{dx}e^{x \ln a} 
= \frac{{d}(x \ln a)}{{d}x}\frac{d}{{d}(x \ln a)}{e}^{x \ln a} = (\ln a)a^x

となる。a = e とすれば ln e = 1 なので最初の公式に戻る。

一般化

複素変数への拡張

exp x の解析的な性質より、これをマクローリン展開すると、

\exp x = \sum^{\infin}_{n=0}\frac{1}{n!}x^n

となることことを踏まえ、複素数 z に対し

\exp z = \sum^{\infin}_{n=0}\frac{1}{n!}z^n

を(収束半径は∞なので)複素変数の指数関数の定義とする。これにより、定義域を、任意の実数から複素数全体へと拡張することができる。

  • \exp z\,\exp w = \exp (z+w)
  • \exp z \ne 0
  • \frac{d}{dz}\exp z = \exp z

などは、複素関数としても成り立つ。

exp(ix) を、cis x と書き、複素指数関数 (complex exponential (function) ) と呼ぶことがある。ここで i虚数単位である。 exp x のマクローリン展開より、

\operatorname{cis}x = \sum^{\infin}_{n=0}(-1)^n\frac{1}{(2n)!}x^{2n} + i\sum^{\infin}_{n=0}(-1)^n\frac{1}{(2n+1)!}x^{2n+1}

と書けるが、右辺の第 1 項は cos x のマクローリン展開、第 2 項は sin x のマクローリン展開に i を乗じたものに他ならない。即ち、cis x = cos x + isin x であり、これが cis の名前の由来である。複素指数関数は、三角関数に関する和として表現できるのである。

任意の複素数 z は、z = x + iy (x, yR) と表現できるから、

\exp z = \exp(x + iy) = \exp x\cdot \exp iy = \exp x(\cos y + i\sin y)

が成り立つ。この「逆関数」として、複素変数の対数関数を定義することもできるが、(何かしらの制限を加えない限り)一価関数とはならない。こうして定義される対数関数 log z

\log z = \int_1^z \frac{{d}z'}{z'}

として定義される複素多価関数 log z と一致する。

一般の複素数 α≠0 を底とし、複素変数 z を指数とする指数関数は、複素変数の対数関数 log z に対して、

\alpha^z = \exp (z\,\log \alpha) = \exp (z\,(\ln |\alpha| + i \arg \alpha))

とおくことにより定義することができる。これは log α の多価性(偏角 arg α の不定性)により一般には多価関数となる。例えば、n を整数として

2^{1/2} = \exp ((1/2)\log2) = \exp ((1/2)(\ln2\,+\,2n\pi i)) = \exp (\ln\sqrt{2}) \exp(n\pi i) = \pm\sqrt{2}

となる。ただし、ez については exp(z log e) のこととは解さず、ez = exp(z) と理解するのが一般的であるようである。しかしながら、ez を多価関数と考えた場合、(e^z)^w=e^{zw} は成り立たない(e が他の複素数でも同様)ので注意しなければならない。

複素変数への拡張は他にも方法があり、マクローリン展開を用いずに微分の自己再帰性と初期条件だけを与えた正則関数を考えても同じ結論を得る事ができる。

行列の指数関数

上記のテイラー展開x に任意の正方行列 X を代入することにより、行列の指数関数 exp X が定義される。

とくに、Xn 次の一般線型群 GL(n, R)リー環 gl(n, R) すなわち n 次の実正方行列全体を亘るとすれば、この指数関数

\exp: \mathfrak{gl}(n, \mathbb{R}) \to {GL}(n, \mathbb{R})

はリー環からリー群への指数写像の一つの例を与える。

指数法則等の不成立

正の実数に対する冪や対数についてのいくつかの恒等式は複素数に対しては成り立たない。複素数の冪や複素数の対数が一価関数として定義されたとしてもだ。例えば:

  • 恒等式 log(bx) = x · log bb が正の実数で x が実数のときにはいつでも成り立つ。しかし、複素数の対数の主枝英語版に対して
     i\pi = \log(-1) = \log\left[(-i)^2\right] \neq 2\log(-i) = 2\left(-\frac{i\pi}{2}\right) = -i\pi
    である。対数のどの分枝が使われているかを考えないと、恒等式の同様な不成立が起こる。(この結果のみを使って)言える最良のことは:
    \log(w^z) \equiv z \cdot \log(w) \pmod{2 \pi i}
    この恒等式(log(bx) = x · log b のこと)は log を多価関数と考えるときでさえ成り立たない。log(wz) の取り得る値は z · log w の取り得る値を部分集合として含む。log(w) の主値を Log(w) とし、m, n を任意の整数とすると、両辺の取り得る値は:
    \begin{align}
            \left\{\log(w^z)\right\} &= \left\{ z \cdot \operatorname{Log}(w) + z \cdot 2 \pi i n + 2 \pi i m \right\} \\
      \left\{z \cdot \log(w)\right\} &= \left\{ z \cdot \operatorname{Log}(w) + z \cdot 2 \pi i n \right\}
    \end{align}
  • 恒等式 (bc)x = bxcx および (b/c)x = bx/cxbc が正の実数で x が実数のときには正しい。しかし主枝を用いた計算によって示されるのは
    1 = ((-1)\times(-1))^\frac{1}{2}   \not = (-1)^\frac{1}{2}(-1)^\frac{1}{2} = -1
    および
    i = (-1)^\frac{1}{2} = \left (\frac{1}{-1}\right )^\frac{1}{2} \not = \frac{1^\frac{1}{2}}{(-1)^\frac{1}{2}} = \frac{1}{i} = -i
    である。一方、x が整数のとき、恒等式はすべての 0 でない複素数に対して成り立つ。
    指数関数を多価関数として考えれば、((−1)×(−1))1/2 の取り得る値は {1, −1} である。恒等式は成り立つが {1} = {((−1)×(−1))1/2} と言うことは間違っている。
  • 恒等式 (ex)y = exy は実数 xy に対して成り立つが、複素数に対してそれが正しいと仮定すると次のパラドックス英語版が生じる。1827年に Clausen英語版によって発見された[2]
    任意の整数 n に対して、
    1. e^{1 + 2 \pi i n} = e^{1} e^{2 \pi i n} = e \cdot 1 = e
    2. \left( e^{1+2\pi i n} \right)^{1 + 2 \pi i n} = e
    3. e^{1 + 4 \pi i n - 4 \pi^{2} n^{2}} = e
    4. e^1 e^{4 \pi i n} e^{-4 \pi^2 n^2} = e
    5. e^{-4 \pi^2 n^2} = 1
    しかしこれは整数 n が 0 でないとき誤りである。
    理由としてたくさんの問題がある:
    主要な誤りは、2行目から3行目に行くときに指数の順番を変えることで選ばれる主値が変わることだ。
    多価関数の視点から見ると、最初の誤りはもっと早く起きている。一行目で暗に含まれているのは、e は実数である一方 e1+2πin の結果は e+0i としてよりよく表現される複素数である。2行目の実数に複素数を代入することでベキが複数の値を取り得るようになる。2行目から3行目で指数の順番を変えることはまたいくつの値を結果が取り得るかに影響する。\scriptstyle (e^z)^w \;=\; e^{z w} ではなくむしろ \scriptstyle (e^z)^w \;=\; e^{(z \,+\, 2\pi i n) w} であり整数 n 上多価である。



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