指数閉体
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/09/02 04:28 UTC 版)
数学における指数閉体(しすうへいたい、英: exponentially closed field; 指数的に閉じた体)F とは、F は順序指数体 —すなわち、F は順序体で、なおかつ「指数函数」と呼ばれる F の加法群から F の正元の成す乗法群の上への準同型 E を持つ体(指数体)であって、E が順序写像となるもの— であって、その「指数函数」E が群同型かつ適当な自然数 n に対して 1 + 1/n < E(1) < n を満足するものを言う。
例
- 標準的な指数閉体の例は、実数全体の成す順序体である。ここで「指数函数」E としては、任意の a > 1 を底に持つ指数函数をとれる。
性質
- 任意の指数閉体 F は冪根(拡大)で閉じている (root-closed)。つまり、F の任意の正元は任意の自然数 n に対する n-乗根を F 内に持つ、別な言い方をすれば F の正元全体の成す乗法群は可除である。これは が成り立つことによる。
- その帰結として、任意の指数閉体はユークリッド体となる。
- その帰結として、任意の指数体は順序ピタゴラス体となる。
- 必ずしもすべての実閉体が指数閉体となるわけではない。例えば、実代数的数体は指数閉でない。実際、実数体の任意の指数閉部分体 F において「指数函数」E は適当な (1 <)a ∈ F に対して E(x) = ax の形にとれ、しかし a が代数的数ならばゲルフォント–シュナイダーの定理により E(√2) = a√2 は代数的でない。
- その帰結として、指数閉体の成す類は初等的(一階の理論で公理化可能)でないことが従う(これは、実数体と実代数的数体が、互いに初等同値な構造であることによる)。
- 指数閉体の類は擬初等類である。これは体 F が指数閉となるための必要十分条件として「上への函数 E2: F → F ×
+ で E2(1) = 2 となるものが存在すること」を挙げることができて、この E2 は一階公理化可能であることによる。
参考文献
- Alling, Norman L. (1962). “On Exponentially Closed Fields”. Proceedings of the American Mathematical Society 13 (5): 706–711. doi:10.2307/2034159. Zbl 0136.32201 .
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