豆
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/19 08:09 UTC 版)
種類
豆は植物分類学上はマメ科に属する植物の種子の事であり、マメ科には650属、18,000種があるが、ヒトが食用としているのは70-80ほどである[19][20]。マメ科の植物は熱帯から亜寒帯、乾燥地帯から湿潤地帯、海抜ゼロメートル地帯から高山までと広い地域に分布している。形態も1年生草本植物から多年生の木本植物まである[21]。
作物の豆は国内外の食料の生産集計などで2つに分類されている。多くの豆は重量の約60%が炭水化物で、タンパク質を約25%含み、脂質の含有率はわずかで、主に食用にされる[22]。これらが「食用豆」である。もう1つの分類は、含油率が高い豆で搾油用の作物であり、「油糧作物」に含まれる。大豆はタンパク質を36%、炭水化物を30%、脂質を20%含んでおり、ラッカセイは50%が脂質、タンパク質が26%、炭水化物は16%で、この2つは油糧作物に分類されている。以降の節では、「食用豆豆類」と「油糧作物」に分類される大豆およびラッカセイは分けて記述する。
- インゲンマメ属・インゲンマメ種
- インゲンマメ(隠元豆)は純食用の豆類の中の最大生産品種で、多くの栽培種があり、大きさも大小、色も単色の白、黒、赤ほか、斑紋入りのものなど様々である[23]。原産地はラテンアメリカであり、スペイン語でFrijol(フリホル)と呼ばれるが、フリホルは現地語起源ではなく、学名になっているラテン語のPhaseolusが起源で、古代西アジア原産の豆を示していた。インゲンマメは英語ではCommon Bean(一般の豆)とも呼ばれ、国際連合食糧農業機関(FAO)の集計では単にBeans, dryと表示されている[24]。
- キドニー・ビーン(英en:Kidney bean) - 代表的な豆の1つで大粒の腎臓型でアズキ色である。金時豆に似ているが異なる栽培種であり日本では生産されていない[19]。
- 赤インゲン - 金時豆
- 白インゲン - 大福豆(おおふくまめ)、手亡(てぼう)、白金時
- ブラック・ビーン(英: Black bean)、フリホル・ネグロ(西: Frijol Negro) - 黒いんげん豆(英: Black turtle bean)とも、小粒の黒い豆でメキシコや中米でフリホレス、ブラジルでフェジョアーダに使われる。日本の黒豆(黒大豆)に似ているが属も種も異なる。
- うずら豆(英: pinto bean) - 代表的な豆の1つ。斑紋入り。
- とら豆 - 斑紋入り。
- ライマメ (英: lima bean, butter bean)
- キマメ属
- キマメ(木豆[26]、(英)Pigeon Pea) - 高さ1-3mの低木の種子である[27]。熱帯の豆でインドでダールに使われる。
- ササゲ属
- ササゲ(大角豆[28]、英: Cow pea, black-eyed pea)、赤いササゲはアズキによく似ている。関東以南で栽培されており、沖縄で作られている「黒小豆」はササゲである[29]。
- ジュウロクササゲ
- バンバラマメ
- アズキ(小豆、英: Azuki bean)、大納言、タケアズキ(ツルアズキ)はアズキによく似たササゲ属の豆でタイ、ミャンマーなどから輸入されている[30]
- 緑豆(green gram)、スプラウトがもやしとして広い地域で栽培されている。
- ソラマメ属
- ソラマメ(空豆、英: Broad bean, Fava bean)
- ダイズ属
- 大豆(米: Soybean、英: Soya bean)、青大豆、黒大豆(黒豆)、高タンパク・高脂質であり、主に搾油・飼料用に利用される。
- ヒヨコマメ属(学名:Cicer、英名:chickpea、スペイン語名:garbanzo)
- ヒヨコマメ。スペイン語名のガルバンゾという名前でもよく知られており、一説には輸入先としてスペイン語圏であるメキシコからの輸入が多かったからとされる。多湿を嫌うマメなので日本では生産はほとんどなく、輸入も950トンと少ない[30]。
- ラッカセイ属(学名:Arachis)
- ラッカセイ(落花生、南京豆)、高脂質であり油糧作物に分類されている。豆の中では比較的毒性が低く、乾煎りしたものでも中毒せずに食べられる。
- フジマメ属
- フジマメ
- シカクマメ属
- シカクマメ
- ナタマメ属
- ナタマメ
- ルピナス属(学名:Lupinus)
- ルピナスの豆(lupin bean)は日本ではあまり知られていないが、栄養価が高く、ダイズアレルギーを回避する代替食材として欧米では人気があるという。食用とされるのは毒性が低い一部の種である。食用種であってもほかの豆と比べて毒性が強く、長時間水に晒すなどの毒抜き処理が必要とされる。
- レンリソウ属(学名:Lathyrus)
- 花を観賞するスイートピーの仲間である。グラスピー(L. sativa、英名grass pea)が知られる。豆はほかの食用種と比べて毒性が強く、長時間水に晒すなどの適切な毒抜き処理をしないと中毒する。
- クラスタマメ属
- クラスタマメ
- ネムノキ亜科 インガ属
- インガ・エドゥリス
マメ科の植物であるが、「種子(豆)」以外が利用されるもの。ヒカマ(クズイモ属)、ローズウッド・紫檀(ツルサイカチ属)、萩(ハギ属)、レンゲ(ゲンゲ属)、藤(フジ属)、クズ(クズ属)、クローバー・アルファルファ(シャジクソウ属)、 アラビアガム(アカシア属)、タマリンド(タマリンド属)、ホドイモ(ホドイモ属)、ミズオジギソウ(ミズオジギソウ属)、ルイボス(アスパラトゥス属)、チョウマメ(チョウマメ属)、カンゾウ(カンゾウ属)など。
マメ科以外の植物の種子で通常豆と呼ばれるもの。コーヒー豆(アカネ科)、カカオ豆(アオイ科)、メキシコトビマメ(トウダイグサ科)など。
注釈
出典
- ^ a b kotobank - デジタル大辞泉 「豆」
- ^ 写真でわかる園芸用語集 「胚乳」
- ^ 写真でわかる園芸用語集 「莢果(きょうか)」
- ^ 写真でわかる園芸用語集 「裂開果(れっかいか)」
- ^ 写真でわかる園芸用語集 「節果(せつか)」
- ^ 楽天 「「種 アルファルファの検索結果」
- ^ 朝日新聞・どらく 「タマリンド」
- ^ BBC Mundo (西語)El frihol se origino en Mesoamerica
- ^ en:Peanut#Historyより。
- ^ Dillehay, Tom D.. “Earliest-known evidence of peanut, cotton and squash farming found”. 2007年6月29日閲覧。
- ^ 豆類協会 「豆の通ってきた道」
- ^ 豆類協会 「大豆」
- ^ “国際マメ年について (IYP 2016)”. FAO駐日連絡事務所. 2016年12月7日閲覧。
- ^ キッコーマン 「大豆の歴史」
- ^ グリコ 「大豆のおはなし」
- ^ 豆類協会 「豆の通ってきた道」
- ^ 滋賀県湖北農業農村振興事務所 「滋賀県長浜市における小豆の生産振興について」
- ^ 豆類協会 「豆の日本への伝来の歴史」 (PDF)
- ^ a b 農林水産省 「特集2 雑豆(1)」
- ^ 農林水産省 「豆のこと、もっと知りたい。」
- ^ 豆類協会 「Q&A 豆の種類について」
- ^ 豆類協会 「豆の主な栄養素」
- ^ weblio - 日本豆類基金協会 「いんげんまめ」
- ^ 国際連合食糧農業機関(FAO) Classifications Production/Crops/ item code=176 Beans, dry
- ^ kotobank - デジタル大辞泉 「豌豆豆」
- ^ 跡見学園女子大学 「きまめ」
- ^ kotobank - 世界大百科事典 「キマメ」
- ^ 「ささげ」
- ^ 豆類協会 「ささげ」
- ^ a b c d e f g 豆類協会 「海外からの輸入」
- ^ 農林水産省 「豆のこと、もっと知りたい。」
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v 国際連合食糧農業機関(FAO) FAOSTAT Food and agriculture data
- ^ 国際連合食糧農業機関(FAO) Classifications Food Supply/Crops Primary Equivalent/ item code=2555 Soybeans
- ^ 豆類協会 「国内生産」
- ^ 永らく最大の生産国であった米国は7倍、ブラジル497倍、アルゼンチン約5万倍、パラグアイ5018倍などが急増、インドも2522倍
- ^ 大生産国ではあるが国内需要を満たせておらず、総交易量の約6割を輸入。
- ^ 1961年と81年はソ連の数値
- ^ 1961年と81年はソ連に含まれる
- ^ 1961年の生産量は米国、中国、インドネシアに次ぐ量であった。
- ^ 「白いんげん豆の摂取による健康被害事例について」
- ^ 健康食品管理士認定協会 「白いんげん豆食中毒事件」
- ^ 英語版のen:Glucose-6-phosphate dehydrogenase deficiency#Signs and symptomsの記述ではFavismとG6PDの関連は are not well understoodとある。
- ^ 医歯薬出版株式会社 「日本人の食事摂取基準(2010年版)」
- ^ Bloomberg Appetite for Meat in China Means Agriculture Imports, FAO Says
- ^ 農林水産省 「大豆をめぐる最近の動向について H22-1」
- ^ “「野菜350g」は本当にカラダにいいの…?食生活のウソホント”. FRIDAYデジタル (2020年7月16日). 2020年11月27日閲覧。
- ^ Godman, Heidi (2021年12月1日). “Harvard study: Healthy diet associated with lower COVID-19 risk and severity” (英語). Harvard Health. 2021年12月5日閲覧。
- ^ 吉川雅之、薬用食物の糖尿病予防成分 『化学と生物』 2002年 40巻 3号 p.172-178, doi:10.1271/kagakutoseibutsu1962.40.172
- ^ 豆類ポリフェノールの抗酸化活性ならびにα-アミラーゼおよびα-グルコシダーゼ阻害活性、齋藤優介ほか、日本食品科学工学会誌、Vol.54(2007) No.12
- ^ アメリカ合衆国農務省(USDA) Nutrient data laboratory
- ^ Harold McGee 2008, pp. 471–476.
- ^ 楽天レシピ 「金時豆の甘煮」
- ^ allrecipes.com Boston Baked Beans
- ^ kotobank 「pea soup」
- ^ 豆類協会 「豆の戻し方」
- ^ コスモポリタン_(雑誌) 「栄養満点!レンズ豆の美味しい使い方とおすすめレシピ」
- ^ エジプト大使館 「エジプト料理」
- ^ 飲み物がわかる辞典. “珈琲(コーヒー)とは? 意味や使い方”. コトバンク. 2024年5月3日閲覧。
- ^ 精選版 日本国語大辞典. “カカオ(かかお)とは? 意味や使い方”. コトバンク. 2024年5月3日閲覧。
- ^ kotobank - 平凡社・世界大百科事典 「高杯∥高坏」
- ^ goo辞書 - 小学館・デジタル大辞泉 「坏」
- ^ 裘錫圭 1988, p. 116.
- ^ 張世超 1996, pp. 1167–8.
- ^ 季旭昇 2014, pp. 404–5.
- ^ 林志強等 2017, p. 58.
- ^ 裘錫圭 1988, pp. 246–7.
豆と同じ種類の言葉
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ココアは、カカオ豆から作られる食品です。チョコレートもカカオ豆から作られます。カカオの生産は、赤道の南緯20度、および、北緯20度以内の高温多湿な地域で栽培されます。カカオの主な生産地域は西アフリカや...
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