豆
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料理と加工食品
豆の調理法
食用の豆であっても一般に有毒タンパク質を含み、生食では中毒する。加熱して有毒タンパク質を変性・失活させることは豆を食べるうえで必須である。
煮る
最も一般的な調理方法であり、軟らかくなるまで水で茹でることで毒抜きを行った豆に味付けをして調理する。毒性が比較的強い豆を含むすべての豆に有効な方法であり、世界の伝統的な豆料理は毒抜きを兼ねた煮込み料理が多い。
他の野菜と違い、豆類はデンプン粒と子葉の細胞壁を水を吸わせて柔らかくする必要がある。エンドウマメなどの生豆は水分を含んでおり火の通りが早いが、白インゲンのような乾燥豆は水を通しにくく調理に1-2時間はかかる。また、一般の野菜は大量の沸騰したお湯でゆでる方が栄養素や色素の分解が抑えられるが、豆類の調理の場合は長時間煮込む必要があるために、湯量が多いほど色素や風味や栄養の損失が多くなる。沸騰するほどの火力で煮込むと時間は短縮できるが、種皮が破れて煮崩れてしまう。豆を煮る場合はなるべく湯の量は最小限にし、沸騰させない程度の温度で煮込むのが望ましい。
豆を煮る時に、硬水で煮ると含まれるカルシウムやマグネシウムが作用して細胞壁は硬くなる。煮汁に調味料を加えて煮こむ時、汁が酸性だと細胞壁内のペクチンを安定させ柔らかくなりにくくなり、アルカリ性だと逆に柔らかくなりやすくなる。糖分を加えると細胞壁の構造を強化し、デンプンの膨張を防ぐ。これらの要素を組み合わせると長時間煮ても煮崩れない煮豆料理ができる。逆に時間を短縮する方法として、事前に水に長時間浸け豆に充分水分を吸わせておくと、水を吸わせていない場合に比べて加熱時間を25%以上短縮できる。中ぐらいの豆の場合、2時間浸けると最大吸水容量の50%まで染みこみ、10~12時間浸けると100%に達する。沸騰したお湯で2~3分ゆでた後に冷水に浸けると2~3時間で100%の吸水状態になる。浸ける時に塩水や重曹水などのアルカリ水を使うと最大75%近い時間短縮ができるが、分量によっては風味や食感が変わってしまう。他には圧力鍋を使う方法もある。豆の保存状態によってはどう工夫しても柔らかくならない、なりにくい場合もある[51]。
炒る
比較的毒性の少ない豆は炒ることで食べることもできる。ラッカセイは油分が多いので乾煎りするが、大豆やヒヨコマメは水に浸けてから炒る。アンデス高地で栽培されているヌーニャ(英:nuna)という豆は、炒るとポップコーンのようにはじける。
豆を使った料理
- インゲンマメ
- 消費量が最大の食用豆であり、最も多くの国で消費されている。
- フリホレス - ラテンアメリカの料理。
- フェジョアーダ(ライマメ、ササゲも) - ブラジルなどポルトガル語圏の料理。
- チリコンカーン - テクス・メクス料理。
- ファバーダ - スペイン料理の1つ。
- カスレ - フランス料理の1つ。
- ベイクドビーンズ - イギリス料理・アメリカ料理、甘めの味付けであるが、日本の煮豆の豆1カップと砂糖0.83カップほど甘くはなく[52]、豆1カップと砂糖1/8カップ、塩茶さじ1杯の甘辛い味付けである[53]。
- アトーレ((西)Atole) - メキシコから中米にかけてのトウモロコシや豆から作られた汁粉のような甘い飲み物。
- ヒヨコマメ
- 2番目に消費量の多い豆であるが、消費地域は南から西アジアにかけて多い。
- ファラフェル(ソラマメも) - 西アジアの料理。
- フムス - 西アジアから東地中海沿岸の料理。
- パコラ - インド料理の1つ。
- 大豆
- 大豆は世界レベルでは油糧作物であるが、東アジアにおいては重要な食用豆でもある。未熟果(枝豆)や完熟果が食用にされ、味噌、醤油、豆腐、納豆など様々な食品へ加工もされる。詳細はダイズ#さまざまな大豆加工食品および豆腐#豆腐料理を参照。
- エンドウ
- en:Pea_soup ひき割りエンドウの濃厚スープ[54]は南欧から北欧にかけて各地で豆スープの定番のひとつとなっている。
- エルテンスープ - オランダ料理
- fr:Soupe aux pois - フランス料理
- マッシーピー - イギリス料理
- インド料理のダル
- ラッカセイ
- ジーマーミ豆腐 - 沖縄料理の1つ。
- ピーナツバター
- ササゲ
- ナイジェリアやニジェールなどアフリカ大陸における生産と消費が拡大している。1961年から2021年にかけて総生産量が10倍、1人あたりの供給量が4倍になった。
- Lobia Ka Salan ササゲカレー - インド料理。
- black-eyed pea 煮豆料理。
- アズキ 餡、汁粉など
- リョクトウ 春雨、モヤシ(大豆も)
- レンズマメ
- 豆の平たい形から水に浸して戻す必要も下茹での必要もなく[55]、ゆで時間も20-30分と短い[56]。ひとりあたりの生産量が増大している豆で、1961年から2021年にかけて1人あたりの供給量が倍になった。
- コシャリ - エジプト料理の1つ。
- ダール(キマメも) - インド料理の1つ。
- パーパド(ヒヨコマメも) - インドの平パンの1つ。
- キマメ
- サンバール - インド料理の1つ。
- ラッサム - インド料理の1つ。
- ソラマメ
- 種皮が厚く硬いので、アルカリ水でゆでて種皮を取り除いて食べることが多い。
- 豆板醤 - 四川料理の1つ。
- ファラフェル - 西アジア料理の1つ。
- フール(en:Ful medames) - エジプト[57]・スーダン料理。
- en:Judd mat Gaardebounen - ルクセンブルク料理。
- es:Michironesミチロネス - スペイン料理
- その他
- 甘納豆
- ダルバート - 豆スープのついたネパールの定食。
- チョレント
注釈
出典
- ^ a b kotobank - デジタル大辞泉 「豆」
- ^ 写真でわかる園芸用語集 「胚乳」
- ^ 写真でわかる園芸用語集 「莢果(きょうか)」
- ^ 写真でわかる園芸用語集 「裂開果(れっかいか)」
- ^ 写真でわかる園芸用語集 「節果(せつか)」
- ^ 楽天 「「種 アルファルファの検索結果」
- ^ 朝日新聞・どらく 「タマリンド」
- ^ BBC Mundo (西語)El frihol se origino en Mesoamerica
- ^ en:Peanut#Historyより。
- ^ Dillehay, Tom D.. “Earliest-known evidence of peanut, cotton and squash farming found”. 2007年6月29日閲覧。
- ^ 豆類協会 「豆の通ってきた道」
- ^ 豆類協会 「大豆」
- ^ “国際マメ年について (IYP 2016)”. FAO駐日連絡事務所. 2016年12月7日閲覧。
- ^ キッコーマン 「大豆の歴史」
- ^ グリコ 「大豆のおはなし」
- ^ 豆類協会 「豆の通ってきた道」
- ^ 滋賀県湖北農業農村振興事務所 「滋賀県長浜市における小豆の生産振興について」
- ^ 豆類協会 「豆の日本への伝来の歴史」 (PDF)
- ^ a b 農林水産省 「特集2 雑豆(1)」
- ^ 農林水産省 「豆のこと、もっと知りたい。」
- ^ 豆類協会 「Q&A 豆の種類について」
- ^ 豆類協会 「豆の主な栄養素」
- ^ weblio - 日本豆類基金協会 「いんげんまめ」
- ^ 国際連合食糧農業機関(FAO) Classifications Production/Crops/ item code=176 Beans, dry
- ^ kotobank - デジタル大辞泉 「豌豆豆」
- ^ 跡見学園女子大学 「きまめ」
- ^ kotobank - 世界大百科事典 「キマメ」
- ^ 「ささげ」
- ^ 豆類協会 「ささげ」
- ^ a b c d e f g 豆類協会 「海外からの輸入」
- ^ 農林水産省 「豆のこと、もっと知りたい。」
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v 国際連合食糧農業機関(FAO) FAOSTAT Food and agriculture data
- ^ 国際連合食糧農業機関(FAO) Classifications Food Supply/Crops Primary Equivalent/ item code=2555 Soybeans
- ^ 豆類協会 「国内生産」
- ^ 永らく最大の生産国であった米国は7倍、ブラジル497倍、アルゼンチン約5万倍、パラグアイ5018倍などが急増、インドも2522倍
- ^ 大生産国ではあるが国内需要を満たせておらず、総交易量の約6割を輸入。
- ^ 1961年と81年はソ連の数値
- ^ 1961年と81年はソ連に含まれる
- ^ 1961年の生産量は米国、中国、インドネシアに次ぐ量であった。
- ^ 「白いんげん豆の摂取による健康被害事例について」
- ^ 健康食品管理士認定協会 「白いんげん豆食中毒事件」
- ^ 英語版のen:Glucose-6-phosphate dehydrogenase deficiency#Signs and symptomsの記述ではFavismとG6PDの関連は are not well understoodとある。
- ^ 医歯薬出版株式会社 「日本人の食事摂取基準(2010年版)」
- ^ Bloomberg Appetite for Meat in China Means Agriculture Imports, FAO Says
- ^ 農林水産省 「大豆をめぐる最近の動向について H22-1」
- ^ “「野菜350g」は本当にカラダにいいの…?食生活のウソホント”. FRIDAYデジタル (2020年7月16日). 2020年11月27日閲覧。
- ^ Godman, Heidi (2021年12月1日). “Harvard study: Healthy diet associated with lower COVID-19 risk and severity” (英語). Harvard Health. 2021年12月5日閲覧。
- ^ 吉川雅之、薬用食物の糖尿病予防成分 『化学と生物』 2002年 40巻 3号 p.172-178, doi:10.1271/kagakutoseibutsu1962.40.172
- ^ 豆類ポリフェノールの抗酸化活性ならびにα-アミラーゼおよびα-グルコシダーゼ阻害活性、齋藤優介ほか、日本食品科学工学会誌、Vol.54(2007) No.12
- ^ アメリカ合衆国農務省(USDA) Nutrient data laboratory
- ^ Harold McGee 2008, pp. 471–476.
- ^ 楽天レシピ 「金時豆の甘煮」
- ^ allrecipes.com Boston Baked Beans
- ^ kotobank 「pea soup」
- ^ 豆類協会 「豆の戻し方」
- ^ コスモポリタン_(雑誌) 「栄養満点!レンズ豆の美味しい使い方とおすすめレシピ」
- ^ エジプト大使館 「エジプト料理」
- ^ kotobank - 平凡社・世界大百科事典 「高杯∥高坏」
- ^ goo辞書 - 小学館・デジタル大辞泉 「坏」
- ^ 裘錫圭 1988, p. 116.
- ^ 張世超 1996, pp. 1167–8.
- ^ 季旭昇 2014, pp. 404–5.
- ^ 林志強等 2017, p. 58.
- ^ 裘錫圭 1988, pp. 246–7.
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