旧正月
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/28 12:58 UTC 版)
以下では、系統の異なる東南アジア(上座部仏教圏)やモンゴル・チベット(チベット仏教圏)の旧正月にも併せて言及する。
概説
ここで言う旧暦とは、狭義には中国・日本・朝鮮半島・ベトナム等でかつて使われていた中国暦およびその変種のこと(基本的に中華圏では時憲暦、日本では天保暦を指す)であるが、後述するように、広義にはモンゴルのチベット仏教暦、東南アジア諸国の上座部仏教暦のように他の地域・文化圏の旧暦を含む場合もある。
旧暦1月1日は、通常雨水(2月19日ごろ)の直前の朔日であり、1月21日ごろから2月20日ごろまでを毎年移動する。旧暦で平年だった年は翌年の旧正月は約11日後退し、閏月があれば約18日進む。
中国大陸・台湾・香港・朝鮮半島・ベトナム・モンゴル・ブルネイ等では、最も重要な祝祭日の一つであり、グレゴリオ暦(新暦)の正月よりずっと盛大に祝われる。ほかに、シンガポール、マレーシア、インドネシア、ミャンマーなど中華圏の影響の強い華人(中国系住民)の多い東南アジア諸国、世界各地の中華街などではChinese New Yearとして祝われる。ただし日本では、沖縄・奄美の一部地域や中華街等を除けば、現在はグレゴリオ暦の正月が祝われることが多い。
なお、旧正月は全ての国や地域で同じ日とは限らない。これらについては後で詳細に述べる。
日本・ベトナム等の旧正月は、時差により、中国標準時を使っている他国と異なることがある。
モンゴルの旧正月は、中国暦とは別系統のモンゴル暦(en)の年初なので、他国と異なることが多い。
一覧
漢字文化圏
- 日本語 - 旧正月(きゅうしょうがつ)
- 中国語 - 春節、新年、新春、大年、農暦年、農暦新年、旧暦年、元旦
- 朝鮮語 - ソルラル(ソラル)、ソル、クジョン(旧正)
- ベトナム語 - テト(テッ、節)、テトグェンダン(元旦節)
- 英語 - Lunar New Year、Chinese New Year、Chinese Lunar New Year、Spring Festival、Tet、○○(国名の形容詞) New Year
中国では、1911年の辛亥革命後、翌1912年の中華民国の成立時に太陽暦が正式に採用され、元旦は新暦の1月1日へ移動し、旧暦1月1日は「春節」とされ現在に至る。
英語では、「Chinese New Year」は中国に限らず中国暦での旧正月の総称として使える。ただし、中国人の春節に限定する用法もある[2]。なお、モンゴルの旧正月は中国暦ではないので含まない。[3][4]
「Lunar New Year」は、中国暦・モンゴル暦のみならずイスラム暦などを含む、太陰暦・太陰太陽暦一般の年初の総称である。各国の旧正月を特にいう場合は、「Korean New Year」「Seol」(ソルラル)などともいえる。ベトナムの旧正月は「Tết」(テト攻勢の「Tet」はこれに由来[5])で通じる[2]。
「Japanese New Year」は日本でのグレゴリオ暦の正月を意味するので、旧正月を意味するには「Traditional Japanese New Year」と言う必要がある。
チベット仏教圏
モンゴル語のツァガーンサルは、「モンゴル暦(en)の年初」の名称であって、他国語での旧正月の名称とイコールで結ばれるものではない。
上座部仏教圏
下記の国では、新年の祭りを太陽暦の4月14 - 16日に行う。国によっては13日も休日になる。水掛け祭りを行う。
- タイ王国 - ソンクラーン(Songkran)
- ビルマ - ティンジャン(Thingyan)
- スリランカ - スリランカの新年(シンハラ・タミル元日)
- カンボジア - カンボジアの新年
- ラオス - ラオスの新年(ピーマイラーオ)
休日
旧正月が国の休日となっているのは、中国・北朝鮮・ベトナム・シンガポール・マレーシア・インドネシア・ブルネイとモンゴルである。以下の国や地域では、休日は複数日にわたる。
- 中国本土 - 法律上は春節から3日だが、一般的に旧暦大晦日から7連休。
- 香港・マカオ - 旧暦1月3日まで(その3日間に日曜日があるときは旧暦1月4日または旧暦大晦日も)。
- 韓国 - 旧暦1月1日前後の3日間(土日祝の代替休日制度がある)。
- シンガポール - 最初の月の最初の2日。
- 台湾 - 旧暦1月5日まで。
- ベトナム - 旧暦大晦日から旧暦1月3日までだが、官公庁や民間企業では、前後1週間程度を休日にする。
注釈
- ^ 旧暦2033年問題の影響を受けるが、日本でも2月19日が有力。
- ^ 近年においては、2017年5月12日、推薦性国家標準のひとつとして、中国暦による日付の算出方法や日付(年月日)の表記法を定めた『農暦的編算和頒行』が発布され、それに基づいて実施されている。
- ^ 愛知県を例にとると、渥美郡渥美町(現:田原市)では1959年に正月の行事を翌年(1960年)から新暦で行うこととなったが、各集落で意見が分かれ、結果として集落ごとで新旧入り混じっての実施となる(集落内でも新旧それぞれに分かれて実施されるケースもあった)等大混乱だったことを、杉浦明平が自著で記している[6]。また、知多郡南知多町の篠島では、1973年から正月を新暦に移行している[7]。
- ^ 旧正月を祝う準備のため人々が町へ買い出しに集まったのをきっかけに商人たちが露店を出した、三重県亀山市の亀山大市(旧正月の時期に開催)[8]等が例に挙げられる。
出典
- ^ a b 「特集世界の中華料理」『アジア遊学』第77号、勉誠出版、2005年7月、107頁、ISBN 9784585103288。
- ^ a b Roy, Christian (2005). Traditional Festivals: A Multicultural Encyclopedia. ABC-CLIO. p. 320. ISBN 978-1-57607-089-5
- ^ “大英博物馆“韩国农历新年”争议背后的文化归属之争” (中国語). BBC News 中文 2023年1月25日閲覧。
- ^ 洪怡霖 (2023年1月22日). “農曆新年該譯成Lunar或Chinese New Year?多國被指「提早赤口」” (中国語). 香港01. 2023年1月25日閲覧。
- ^ “Milestones: 1961–1968 - Office of the Historian” (英語). Office of the Historian, Foreign Service Institute, United States Department of State. 2023年1月22日閲覧。
- ^ 杉浦明平『海の見える村の一年:新農村歳時記』岩波書店〈岩波新書, 青版 ; 417〉、1961年、90-95頁。 NCID BN01812801。
- ^ 「新春こぼれ話:さらば旧正月」、朝日新聞1973年1月1日付朝刊(名古屋本社版)、13頁。
- ^ “亀山大市”. 一般社団法人亀山市観光協会. 2022年8月3日閲覧。
旧正月と同じ種類の言葉
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