人工衛星 人工衛星の概要

人工衛星

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/18 17:40 UTC 版)

GPS衛星の軌道アニメーション

有人宇宙船宇宙ステーションスペースシャトルも人工衛星に含まれ、アメリカ航空宇宙局等の人工衛星軌道データに掲載もされるが、これらについて触れる際には人工衛星とは呼ばれないのが一般的である。

人類初の人工衛星は、1957年ソビエト連邦が打ち上げたスプートニク1号である。21世紀初頭までに、数千もの人工衛星が地球周回軌道に打ち上げられた。人工衛星の用途は多岐にわたり、一般的なものは、軍事衛星偵察衛星通信衛星放送衛星地球観測衛星航行衛星気象衛星科学衛星アマチュア衛星などである。

人工衛星は地球を周回する軌道にあるものが大部分であるが、惑星探査目的で火星土星などの他の惑星の軌道上にも観測機がいくつか到達しており、各惑星の人工衛星となっている。これらは惑星の観測を行ったり、火星探査機などのように他惑星の表面に着陸した宇宙探査機からの各種観測データを地球まで中継送信している。

歴史

構想

人工衛星がフィクション内で初めて描かれたのはエドワード・エヴァレット・ヘイル英語版の短編小説、『レンガの月英語版』である。この話はThe Atlantic Monthly にて1869年からシリーズ化された[2][3]。この概念が次に登場したのは1879年、ジュール・ヴェルヌの『インド王妃の遺産英語版』である。

1903年コンスタンチン・ツィオルコフスキーは「反作用利用装置による宇宙探検」(ロシア語: Исследование мировых пространств реактивными приборами)を出版。これは宇宙船を打ち上げるためのロケット工学に関する最初の学術論文だった。ツィオルコフスキーは地球の回る最小の軌道に求められる軌道速度を8km/sと計算し、液体燃料を使用した多段式ロケットならば達成可能であることを示した。また、彼は液体水素液体酸素の使用を提案した。

1928年、スロベニアヘルマン・ポトチェニク英語版The Problem of Space Travel — The Rocket Motorドイツ語: Das Problem der Befahrung des Weltraums — der Raketen-Motor)を出版し、宇宙旅行と人間の永続的滞在性について述べた。彼は宇宙ステーションを発想し、ステーションの静止軌道計算を行った。彼はまた、人工衛星が平和的・軍事的に地上の観測に使用できることを詳細に記述し、宇宙空間の特殊な状態が科学実験に有意であることや、静止衛星を通信などに利用できることについても述べた。

1945年、アーサー・C・クラークは雑誌ワイヤレス・ワールド英語版上で、通信衛星を用いたマスコミュニケーションの可能性を詳細に記述した[4]。また、クラークは人工衛星打ち上げの計画、可能な衛星軌道などについても調査し、3機の静止軌道衛星で地球全体をカバーすることを提案した。

人工衛星の誕生

スプートニク1号:世界初の人工衛星

第二次世界大戦中に開発されたドイツV2ロケットの技術とその技術者たちによって、アメリカとソ連のロケット技術は急速な進歩を成し遂げ、人工衛星が現実のものとなりつつあった。

アメリカ合衆国は、1945年より海軍航空局英語版の下、人工衛星の打ち上げを検討してきた。1946年5月に米空軍のランド研究所が提出した報告書、「実験周回宇宙船の予備設計」(Preliminary Design of a Experimental World-Circling Spaceship) には「適当な装置を搭載した人工衛星は20世紀の最も強力な科学ツールの一つになりうる」と述べられており[5]、人工衛星が軍事的重要性を持つとは思っておらず、むしろ科学的、政治的、プロパガンダ的なものと当時見なしていた。アメリカ国防長官チャールズ・E・ウィルソンは1954年「私は国内の人工衛星計画を知らない」(I know of no American satellite program) と述べた[6]

1955年7月29日、ホワイトハウス1958年の春までに人工衛星を打ち上げると発表した。これはヴァンガード計画として知られるようになる。同年7月31日、ソ連は1957年の秋までに人工衛星を打ち上げると発表した。

セルゲイ・コロリョフと助手のケリム・ケリモフ英語版が率いるソ連のスプートニク計画が始まり、1957年10月4日初の人工衛星「スプートニク1号」が打ち上げられた[7]。スプートニク1号はその軌道変化を分析することによって大気上層の密度の確認に役立ち、電離層の無線信号外乱のデータを提供した。衛星の機体は加圧された窒素で満たされており、地球に送信された温度データから隕石が機体表面を貫通し、内圧が低下したことがわかった。これは初の流星物質の探知であった。

この突然の成功がアメリカ合衆国スプートニク・ショックを引き起こし、その後のアメリカとソ連の熾烈な宇宙開発競争に繋がっていった。

スプートニク1号から3年半が経過した1961年6月、米空軍は米国宇宙監視ネットワーク英語版のリソースを利用し、115の人工衛星の目録を作成した[8]

宇宙監視網

米国宇宙監視ネットワーク (SNN) は1957年より宇宙天体を追跡しており、2008年現在8,000以上の人工天体を追跡している。軌道上に存在する人工物は数トンの人工衛星から5キログラムのロケットの部品まで様々である。これらの7パーセントは運用中の人工衛星であり、それ以外は全てスペースデブリである[9]

SNNは直径10センチ以上の物体を追跡している。アメリカ戦略軍は主に活動中の衛星に関心を持つが、ミサイルの接近と誤認しないように再突入するであろうスペースデブリも追跡している。


注釈

  1. ^ 高度が高くなれば重力の影響が小さくなるので、より低速(小さい遠心力)で周回できる。例えば高度約36,000 kmの静止軌道では約 3.1 km/sで人工衛星(静止衛星)となる。

出典

  1. ^ 第12回『秒速7.9Km』 北大リサーチ&ビジネスパーク
  2. ^ Rockets in Science Fiction (Late 19th Century)”. マーシャル宇宙飛行センター. 2008年11月21日閲覧。
  3. ^ Everett Franklin Bleiler; Richard Bleiler (1991). Science-fiction, the Early Years. ケント州立大学出版. pp. 325. ISBN 978-0873384162 
  4. ^ Richard Rhodes (2000). Visions of Technology. Simon & Schuster. pp. 160. ISBN 978-0684863115 
  5. ^ Preliminary Design of an Experimental World-Circling Spaceship”. ランド研究所. 2008年3月6日閲覧。
  6. ^ Alfred Rosenthal (1968). Venture Into Space: Early Years of Goddard Space Flight Center. NASA. pp. 15 
  7. ^ “Kerim Kerimov”, Encyclopædia Britannica, http://www.britannica.com/EBchecked/topic/914879/Kerim-Kerimov 2008年10月12日閲覧。 
  8. ^ David S. F. Portree; Joseph P. Loftus, Jr (1999年). “Orbital Debris: A Chronology”. ジョンソン宇宙センター. pp. 18. 2000年9月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年11月21日閲覧。
  9. ^ Orbital Debris Education Package”. ジョンソン宇宙センター. 2008年4月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年3月6日閲覧。
  10. ^ Grant, A.; Meadows, J. (2004). Communication Technology Update (ninth edition ed.). Focal Press. pp. 284. ISBN 0240806409 
  11. ^ Workshop on the Use of Microsatellite Technologies”. United Nations. pp. 6 (2008年). 2008年3月6日閲覧。
  12. ^ 小型宇宙衛星技術競争 ―NANO・PICOは国際標準技術化―(大型副次利用から最適小型利用へ)”. 2010年3月15日閲覧。
  13. ^ JAXA、“掃除衛星”の研究開発に着手-10年後小型機実用化”. 日刊工業新聞. 2010年3月17日閲覧。
  14. ^ 三菱電機 DSPACE/2009年4月コラムVol.2[自己増殖を続ける「宇宙ゴミ」を掃除せよ!:林公代]
  15. ^ 導電性テザー(EDT):研究開発部門 - JAXA
  16. ^ 環境事業 - 日東製網株式会社
  17. ^ James Oberg (1984年7月). “Pearl Harbor In Space”. Omni Magazine. pp. 42–44. 2008年3月6日閲覧。
  18. ^ 鈴木弘一『はじめての宇宙工学』森北出版株式会社、2007年。ISBN 978-4-627-69071-4 
  19. ^ a b c d 岩崎信夫『図説 宇宙工学概論』丸善プラネット株式会社、1999年。ISBN 4-944024-64-9 
  20. ^ a b 世界初の「木造」人工衛星打ち上げへ…土井宇宙飛行士「宇宙開発の資材として期待できる」”. 読売新聞オンライン (2023年6月21日). 2023年6月25日閲覧。
  21. ^ Vanguard Approaches Half A Century In Space”. SpaceRef.com. 2010年3月17日閲覧。
  22. ^ Conventional Disposal Method: Rockets and Graveyard Orbits”. 2010年3月17日閲覧。
  23. ^ 「軌道上サービス」 宇宙ごみ問題の解決策となるか”. AFP (2018年12月1日). 2018年12月1日閲覧。
  24. ^ 陸から最も離れた海、宇宙施設の墓場「ポイント・ネモ」”. AFP (2018年4月2日). 2018年4月7日閲覧。
  25. ^ 防衛省、「宇宙巡回船」の建造検討 警戒・監視、衛星修理も:時事ドットコム”. 時事ドットコム. 2022年1月18日閲覧。
  26. ^ a b Tariq Malik. “SpaceX Successfully Launches Falcon 1 Rocket Into Orbit”. Space.com. 2008年10月2日閲覧。
  27. ^ First time in History”. The Satellite Encyclopedia. 2008年3月6日閲覧。
  28. ^ 2013年1月17日(2011年12月2日)時点。SATCAT Boxscore”. celestrak.com. 2011年12月3日閲覧。
  29. ^ India launches Switzerland's first satellite
  30. ^ In a difference of first full Bulgarian Intercosmos Bulgaria 1300 satellite, Poland's near first satellite, Intercosmos Copernicus 500(インターコスモス・
    コペルニクス500
    ) in 1973, were constructed and owned in cooperation with Soviet Union under the same Interkosmos program.
  31. ^ Hungary launches its first satellite into orbit.
  32. ^ First Romanian satellite Goliat successfully launched
  33. ^ アーカイブされたコピー”. 2012年12月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年12月12日閲覧。
  34. ^ Daphne Burleson (2005). Space Programs Outside the United States. McFarland & Company. pp. 43. ISBN 978-0786418527 
  35. ^ Mike Gruntman (2004). Blazing the Trail. American Institute of Aeronautics and Astronautics. pp. 426. ISBN 978-1563477058 
  36. ^ Brian Harvey (2003). Europe's Space Programme. Springer Science+Business Media. pp. 114. ISBN 978-1852337223 
  37. ^ http://bddnews.com/post/20140916_806/
  38. ^ http://bangla-joho.com/culture/2015/12/17/703/
  39. ^ Vremenik”. 2010年3月17日閲覧。
  40. ^ https://sorae.info/030201/4906.html
  41. ^ Dan Morrill. “Hack a Satellite while it is in orbit”. ITtoolbox. 2008年3月25日閲覧。
  42. ^ AsiaSat accuses Falungong of hacking satellite signals”. Press Trust of India. 2008年3月25日閲覧。
  43. ^ a b William J. Broad; David E. Sanger (2007年). “China Tests Anti-Satellite Weapon, Unnerving U.S.”. ニューヨーク・タイムス. 2008年3月25日閲覧。
  44. ^ Navy Missile Successful as Spy Satellite Is Shot Down”. Popular Mechanics (2008年). 2008年3月25日閲覧。
  45. ^ a b c 「衛星」発射を通告した北朝鮮、その正当性は 国際法の専門家に聞く:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル (2023年5月30日). 2023年11月21日閲覧。
  46. ^ a b c d e 弾道ミサイルと人工衛星とは”. 日本経済新聞 (2012年12月12日). 2023年11月21日閲覧。
  47. ^ a b c INC, SANKEI DIGITAL (2023年5月31日). “ミサイルとロケット、技術は同じ 国連では双方禁止”. 産経ニュース. 2023年11月21日閲覧。
  48. ^ 韓国軍、黄海に墜落した北の「軍事偵察衛星」と称した飛翔体の部品回収”. 読売新聞オンライン (2023年6月16日). 2023年11月21日閲覧。
  49. ^ a b 「衛星打ち上げ」なぜ批判 安保理決議違反と解釈”. 日本経済新聞 (2016年2月8日). 2023年11月21日閲覧。
  50. ^ a b https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/unsc/page3_003268.html
  51. ^ 北朝鮮の「人工衛星」と称するミサイル発射への抗議について | 東京都議会”. www.gikai.metro.tokyo.lg.jp. 2023年11月21日閲覧。
  52. ^ 北朝鮮ロケットは韓国近海へ 残がい回収で思わぬ「成果」か”. J-CAST ニュース (2012年4月13日). 2023年11月21日閲覧。
  53. ^ a b asahi.com(朝日新聞社):ミサイル継ぎ目で爆発か 韓国軍、残骸回収し調査へ - 北朝鮮関連”. www.asahi.com. 2023年11月21日閲覧。
  54. ^ 正恩氏「国防委第1委員長」に 権力継承を完了”. 日本経済新聞 (2012年4月13日). 2023年11月21日閲覧。
  55. ^ INC, SANKEI DIGITAL. “衛星カバーに保護機能なし 北朝鮮ミサイル、韓国分析”. 産経フォト. 2023年11月21日閲覧。
  56. ^ a b 日本放送協会 (2023年7月5日). “北朝鮮の軍事偵察衛星“性能全くない” 韓国軍 主要部分を回収 | NHK”. NHKニュース. 2023年11月21日閲覧。
  57. ^ 衛星ロケット回収で何がわかる 「正恩氏慌てたはず」韓国識者の見方:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル (2023年6月20日). 2023年11月21日閲覧。






人工衛星と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「人工衛星」の関連用語

人工衛星のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



人工衛星のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの人工衛星 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS