人工衛星 構成

人工衛星

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/18 17:40 UTC 版)

構成

人工衛星のシステムは「衛星系」と「地上支援系」により構成され[18]、この二つの間でアップリンクダウンリンクが行われる。衛星系は、その衛星特有のミッションを遂行するための「ミッション機器」と電力通信姿勢制御などの基本的な機能に必要な「バス機器」から構成される。また、地上支援系は人工衛星を追跡し、データを取得して運用・管制を行うための機器からなる[19]

衛星バス部

TTC系

TTCとはテレメトリ(衛星の動作状況を地上に送信)・トラッキング(軌道測定用信号の送受信)・コマンド(機器の電源のオンオフ、モード切替などの動作指令)機能のことである。しかし近年はコマンドは搭載された計算機により自動送信される場合が増えており、TTC系をC&DH系(コマンド・データハンドリング系)と呼ぶようになっている[19]

電源系

  • 太陽電池バッテリー、シャント装置、電力制御機からなる。太陽電池は機体の表面、または太陽電池パドルに装着される。
  • かつては小型原子炉が人工衛星にも使われたことがあるが、現在はほぼ太陽電池が使用される。また太陽電池を装備せず、バッテリーのみの衛星も存在する。
  • 宇宙探査機では太陽電池が使えない事があるが、その場合は原子力電池など代替の電源を用意する。

姿勢制御系

人工衛星は、地球重力場のひずみ、月・太陽の引力、太陽風や希薄な空気分子など、地球の引力以外の微小な力を受け徐々に姿勢が変動する。姿勢安定には大きく分けて「スピン姿勢安定方式」と「三軸姿勢安定方式」があり、前者は構成が簡潔で、特殊な機器を必要としないため、宇宙開発の初期に多用されたが、形状が円筒形に限定され、太陽電池が円筒の表面にしか貼ることができない。後者は姿勢方向が自由に選択でき、縦型の大きな太陽電池パドルを取り付けられるなどの長所があるが、熱制御が複雑になるなどの短所もある[19]

推進系

  • 計画した軌道に衛星を投入しても、放置しておくと地球の重力異常や、太陽風による擾乱のために、徐々に軌道が変わっていく。そのため、スラスターを稼働させ、軌道制御を行う。
  • 偵察衛星の場合、偵察のために必要な軌道変更を行うためにも使用される。
  • 静止衛星の場合、静止トランスファー軌道から静止軌道に軌道変更するためのアポジキックモーターを搭載するが、それも推進系を構成する。
  • 静止衛星が寿命を全うし、残骸が貴重な静止軌道を占有することがないよう、最後に軌道高度を上昇させるためにも使用する。周回衛星が、地球に落下するとき、安全な突入軌道にするためにも使用できる。

構体系

衛星は打上げ時、分離時に大きな荷重・振動・衝撃を受ける。よって搭載機器への負担を軽減するように機体を設計する必要がある。中央円筒型、パネル支持型、トラス型などの構造があり、これらの複合により構成されることもある。材料としては強度が必要な箇所にはステンレスチタンなどが使用される[19]木材の利用も検討されている[20]

熱制御系

衛星は宇宙空間にて高温から低温の過酷な環境に晒される。また、真空である宇宙空間では輻射による廃熱しかない。そのため、搭載した機器が良好に動作するためには、動作温度に収まるよう上手く設計する必要がある。実際のハードウェアとしては、次のような手段を駆使して実現する。

  • サーマルブランケット - 断熱材のこと。熱の出入りを抑える。
  • ヒートパイプ - 熱源からの過剰な放熱をラジエータまで伝達する。
  • ラジエータ - 熱放射器のこと。
  • ヒーター - 過剰に冷却されないよう機器を暖める。

静止衛星では、夏至冬至春分秋分の条件下で、太陽光の当たり具合や、地球からの輻射を考慮しながら、有限要素化した衛星の構造モデルを用いて設計解析する。

ミッション部

観測機器

ミッションを実現するための観測機器。詳細はそれぞれの人工衛星の項目を参照。

トランスポンダ

トランスポンダは通信・放送衛星の場合搭載される機器。地上から発射された電波を受信し、周波数変換し、大電力増幅して再び地上に送出するための送受信機。

アンテナ系

アンテナは電波の出入り口で、放送・通信ミッションやレーダー観測衛星で重要な役割を果たす。

地上管制系


注釈

  1. ^ 高度が高くなれば重力の影響が小さくなるので、より低速(小さい遠心力)で周回できる。例えば高度約36,000 kmの静止軌道では約 3.1 km/sで人工衛星(静止衛星)となる。

出典

  1. ^ 第12回『秒速7.9Km』 北大リサーチ&ビジネスパーク
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  5. ^ Preliminary Design of an Experimental World-Circling Spaceship”. ランド研究所. 2008年3月6日閲覧。
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