スマートグリッド
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各国の状況
米国
- 目的
- 経緯
- アメリカ合衆国ではカリフォルニア州の電力危機やニューヨークの大停電をきっかけに、送配電網の整備を求める声が大きくなった[32]。2003年の大停電事故の1ヵ月前に、米エネルギー省は「Grid2030」という送配電網の近代化に関するレポートを発表していた。2007年12月には「スマートグリッド」関連の投資資金補助や試験プロジェクトの予算に1億米ドルを拠出することを法律で決めた。バラク・オバマ大統領の就任1ヵ月後の2009年2月には、景気刺激策である「米国再生・再投資法」(American Recovery and Reinvestment Act, ARRA) の一部として、「スマートグリッド」関連分野に110億米ドル(日本円で1兆1000億円相当)を拠出することを決めた[32][33]。これが今日、米国の通信とIT機器メーカーの間まで広がったスマートグリッド・ブームのきっかけとなった[32]。
- ニューメキシコ州では州政府と日本の新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO) が中心となり、スマートグリッド構想に基づく実証研究プロジェクト「Green Grid」を企画している。日本の経済産業省は以前より州政府と太陽熱発電などの再生可能エネルギーで繋がりがあり、協力関係にあった。2009年2月には州政府から日本へ提案され、4月に会合が持たれて、6月末までにプロジェクト概要を提案し、2009年の夏には可否が決定される予定である。5MWの配電線(フィーダー線)1本を対象にして、1,200軒の家庭、1つの学校、複数の事業所を含む地域の電力網に2MWの電力貯蔵施設と1MWの太陽光発電施設を加えた[注 5][7]。
- オバマ大統領はアメリカ連邦議会 に対して、代替エネルギーの生産を2009年からの3年間で2倍にし、新しい「スマートグリッド」を建設するための法案を通過させるために遅滞なく行動するように要請した[34]。
- 化石燃料と温暖化ガスの排出削減は、エネルギー安全保障や地球温暖化問題の対策の1つとして多くの政府が推進している。米国の電力消費量を5%削減できれば、5,300万台分の自動車に相当する化石燃料の節約と温暖化ガス排出量の削減が実現するといわれており[35]、実現手段の1つとしてスマートグリッドが検討されている。
- スマートグリッドによる米国国内の電力網の変化は、2009年現在から既に始まったスマートメーターの導入であり、既に全米では8州を除く42の州政府が政策での何らかの形でスマートメーターへの取り組みを示しており、一部は取付け段階である。2011年から2020年頃までには、無線や有線通信によって家庭内の電気を使用する機器類の電力使用を遠隔操作することが想定されている(例)。米国の動きに対応して、日本を含む世界中の企業が将来の大きな市場を目指して自社の持てる技術を宣伝している[7]。
日本
2011年に政府が5年間でスマートメーター4000万台の導入計画を発表。スマートメーターの他、電力制御技術全般や超伝導ケーブル、NAS電池のような大規模蓄電池システムを売り込むビジネスチャンスとの見方が強い[7]。住友電気工業は高温超伝導ケーブルを売り込んでいる。日本では2013年ごろから実用化に向け、小規模な電力網で実証実験が行われている。もっとも、アメリカでの実験には日本企業が何度も参加している。同年2月の特許庁による報告では、1995年から2012年までの全世界における送電系統広域監視システムに関する特許登録件数を出願人国籍別にみた場合、日本が38.2%(483件。このうち東芝が359件)を占めた。2014年にスイスのABBグループを核としたカルテルが報告され、日本勢が芋づる式に摘発された。2015年に電力広域的運営推進機関を設置。
元々日本では、電力会社が大口需要家(工場、大規模ビル等)向けに光ファイバ等を用いて電力消費量をほぼリアルタイムにモニタリングするシステム(一般的に電力会社においてロードサーベイと呼ばれるもの)が1990年代より構築されている。一例を挙げると、東京電力では1995年、九州電力では1996年より同種のシステムが順次導入されている[36]。現在日本国内で開発が進められているスマートグリッド技術の多くは、このロードサーベイから発展したものである。
住友電気工業や住友精密工業により電力網構想が提案されており、太陽光発電と高温超電導直流電力ケーブルの組み合わせによる地球規模の電力網敷設を段階的に推進する「PPLPソリッドDC・超長距離・大容量・国際連系・海底ケーブル」によって、最終的には人類の必要とする全エネルギーを再生可能な手段によって得ることを目指している[37]。
経済産業省の望月晴文事務次官は2009年2月19日の記者会見で、アメリカでスマートグリッドが提唱されているのは送電網がつぎはぎだらけなためによく大停電を起こすのが理由で、日本は送電網がしっかりしているから追従する必要はないのではないかという見方を示した[38]。
東京工業大学・東京電力・東芝・日立製作所などが共同で「日本版スマートグリッド」実証実験を東工大キャンパスで2010年度から行うと報道された[39]。実験に東芝・日立製作所・東芝三菱電機産業システム・富士電機システムズ(現富士電機)・明電舎・伊藤忠商事・関電工の参加が決まっており、期間は3年間の予定である[39]。
実証実験では実際の家庭生活を想定し、家庭用の太陽光パネルを設置して冷蔵庫などの一般的な家電製品や電気自動車、ヒートポンプ式給湯器に利用する一方、余った電力については蓄電池にためたり、電力会社に実際に売ったりするという。電力の売買状況をコンピューターで把握し、コンピューター内にシミュレートした送電線網への影響を分析。送電線網に影響を与えずに太陽光発電を有効利用できる売電の時間帯や電気自動車への充電時間帯などを検証する[39]。
日本より米国の方がスマートグリッド参入に意向や興味を示している企業は多種多様だが、日本国内では家庭内通信まで踏み込んだ改革を目指す計画ではなく、新築住宅などでの家庭用太陽光発電と家庭用コジェネレーション装置といった家庭での自家発電が進められている。日本国内は電力網でもロードサーベイに代表される電力監視センサのネットワークが充実してきており、各電力会社は需要家の負荷変動を予測しながら細かな変動は電力監視のネットワークで随時把握し細かな対応を行えるとしており、米国のように一般家庭の家電製品を電力需要に応じて遠隔制御する取り組みに積極的でない[7]。欧米や中国などが進める大規模なスマートグリッド計画と対照的に、日本では産官学共同にもかかわらず小規模な実証試験ばかり少数行われる程度の現状が"ガラパゴス化"に繋がるのではないかと危惧する声も出ている。
欧州
再生可能エネルギーの利用拡大。電気自動車のインフラ整備[40]。ブロックチェーンに使うモノのインターネットの普及拡大。地中海を取り巻くスーパーグリッドへの応用=スーパースマートグリッドまで構想されている。
英国とイタリアでは、電力料金の不払いに対応するためにスマートメーターの導入を進めている。1995-2012年の送電系統広域監視システムに関する特許登録件数では、米国市場ですらゼネラル・エレクトリックがABBグループにあと一歩及ばない(28対31)[要出典]。
EEBUS(E-E-Bus)は、スマートホームとスマートグリッドの間の相互コミュニケーションを可能にする架け橋である。 ドイツの技術者たちは、EEBUSを様々なデバイスが交信できるようにするための、国際共通言語つまり国際標準にすることを狙っている。[41] インテリジェントで将来性のある充電コントローラのメーカーとして有名なベンダー社(Bender GmbH & Co. KG)は現在、充電コントローラの全製品に標準機能としてEEBUS通信規格を提供している。このように、ベンダー社は設定を必要としないEEBUSを提供する最初のコントローラメーカーである。[42]
中国
スマートグリッド(智能電網)を利用した電力供給体制の整備(4兆元(約50兆円)の投資を決定)[43]。
注釈
- ^ NEDOに集った日本の協力体制。スマートコミュニティ・アライアンス会員一覧 2016年4月1日現在
- ^ 「Area Energy Management System(AEMS・エムス)」と呼ばれることもある。
- ^ 中央給電指令所では自動周波数制御装置 (AFC) などを使って10秒ごとに変動を監視し、負荷が増えて電圧が低下するか周波数が遅れる場合には発電所の出力を増すように調整が行われ、逆に負荷が減ると逆に出力を減らすように指示する。同様にそれぞれの発電所でも1秒ごとに調速器が発電周波数を一定に保つように働いている。
- ^ 世界中の家庭内の電気製品が送電網を経由した電力線の通信網で情報をやり取りするようになれば、現在のインターネット機器の10-100倍の数の端末が繋がる巨大な情報網が出現するため、未来のシスコシステムズ、次のGoogleを狙う企業はこれら2社のほかにもIBM、インテル、ベライゾン・ワイヤレスを筆頭に、多くの企業がチャンスをうかがっている。
- ^ ニューメキシコ州の「Green Grid」計画では、日本側からは経済産業省やNEDOの他にも、東京電力・日本ガイシ・パナソニック・日立製作所・東芝なども会合に参加している。
出典
- ^ “スマートグリッドとは?IT技術と自然エネルギーが結びついた次世代電力網 | 物流機器・輸送機器のレンタル | upr”. 2022年1月4日閲覧。
- ^ “スマートシティ - Society 5.0 - 科学技術政策 - 内閣府”. www8.cao.go.jp. 2022年1月4日閲覧。
- ^ “マイクログリッドとはいったい何のこと? 分散型電源で地産地消! – エコめがねエネルギーBLOG”. blog.eco-megane.jp. 2022年1月4日閲覧。
- ^ 日経新聞電子版 相次ぐスマートメーター設置拒否 米電力会社の憂鬱 2014/10/28
- ^ ロハスクラブ “スマートグリッド ”は、ボールダーから 2016年4月29日閲覧
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- ^ a b c d e f g h i 蓮田宏樹、Phil Keys著 『スマートグリッド』、日経エレクトロニクス2009年6月1日号
- ^ バンクトラック TO: BANK OF AMERICA CORPORATION, CITIGROUP INC., CRÉDIT AGRICOLE CIB, JPMORGAN CHASE, BNP PARIBAS, DAIWA, DEUTSCHE BANK, GOLDMAN SACHS, HSBC, MIZUHO, MORGAN STANLEY, RABOBANK, SEB 10 APRIL 2014
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- ^ http://www.nikkei.co.jp/news/main/20100313ATGM1203512032010.html [リンク切れ]
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