超絶主義
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/08/11 03:46 UTC 版)

超絶主義(ちょうぜつしゅぎ / 英: Transcendentalism)は、1820年代後半から1830年代にかけてアメリカ東部で発展した哲学運動である[1][2][3]。超越主義(ちょうえつしゅぎ)とも言う[4]。英語ではトランセンデンタリズム(Transcendentalism)と言い、「乗り越える」を意味する「transcend」という語に由来する[5]。
概要
1830年代半ば頃から1860年頃にかけアメリカ合衆国ニューイングランド地方のユニテリアン派の中よりラルフ・ワルド・エマーソンやヘンリー・デイヴィッド・ソローらによってロマン主義運動・思想(理想主義運動)が行われた[4][5]。これは、1836年9月8日、ボストンに「超絶クラブ」が設立されたことが発端とされる[5]。同年の評論「Nature」において、アメリカのラルフ・ワルド・エマーソンは、この超絶主義を世に打ち出した。
超絶主義は、客観的な経験論よりも、主観的な直観を強調する。その中核は、人間に内在する善と自然への信頼である[1]。一方、社会とその制度が個人の純粋さを破壊しており、人々は本当に「自立」して独立独歩の時にこそ最高の状態にある、とする。
エマーソンの超絶主義哲学は、19世紀後半にアメリカで始まったキリスト教異端的霊性運動ニューソートの理論的根拠として用いられ、運動が広まる支えとなっており、ニューソートはニューエイジ、カルト、通俗心理学、自己啓発運動や自己啓発書に大きな影響を与えた[6][7]。
思想
超絶主義は、ドイツロマン主義、とりわけヨハン・ゴットフリート・ヘルダーとフリードリヒ・シュライエルマッハーの思想と親密である。スタンフォード哲学百科事典によれば「イギリスとドイツのロマン主義、ヨハン・ゴットフリート・ヘルダーとフリードリヒ・シュライエルマッハーの聖書批評とデビッド・ヒュームの懐疑論」[1]に触発され、さらにはイマヌエル・カントに代表されるドイツ観念論の「超越論的」哲学をも包摂している。しかしながら、初期の超絶主義は、元来ドイツ哲学とは疎遠であり、むしろ主としてイギリスのトーマス・カーライル、サミュエル・テイラー・コールリッジや、フランスのヴィクトル・クザン、アンヌ・ルイーズ・ジェルメーヌ・ド・スタールらの思想に依拠していた。
超絶主義運動に関係する人物

- ラルフ・ワルド・エマーソン
- ヘンリー・デイヴィッド・ソロー
- マーガレット・フラー
- エイモス・ブロンソン・オルコット
- ルイーザ・メイ・オルコット
- チャールズ・ティモシー・ブルックス
- オレステス・ブラウンソン
- ウィリアム・エラリー・チャニング
- ウィリアム・ヘンリー・チャニング
- ジェームズ・フリーマン・クラーク
- クリストファー・パース・クランチ
- ジョン・サリバン・ドワイト
- コンバース・フランシス
- ウィリアム・ヘンリー・ファーネス
- フレデリック・ヘンリー・ヘッジ
- シルベスター・ジャッド
- セオドア・パーカー
- エリザベス・ピーボディ
- ジョージ・リプリー
- トーマス・トレッドウェル・ストーン
- ジョーンズ・ヴェリー
- クリス・マッキャンドレス
- ウォルト・ホイットマン[8]
脚注
- ^ a b c Goodman, Russell (2015). "Transcendentalism". Stanford Encyclopedia of Philosophy. "Transcendentalism is an American literary, political, and philosophical movement of the early nineteenth century, centered around Ralph Waldo Emerson."
- ^ Wayne, Tiffany K., ed (2006). Encyclopedia of Transcendentalism. Facts On File's Literary Movements. ISBN 9781438109169
- ^ "Transcendentalism". Merriam Webster. 2016."a philosophy which says that thought and spiritual things are more real than ordinary human experience and material things"
- ^ a b 『超絶主義』 - コトバンク、『超越主義』 - コトバンク、『トランセンデンタリズム』 - コトバンク
- ^ a b c “アメリカ超絶主義・ロマン主義文学 コレクション│甲南女子学園 オフィシャルサイト”. gakuen.konan-wu.ac.jp. 2020年9月22日閲覧。
- ^ PHILIP JENKINS. “New Thought”. patheos. 2022年7月23日閲覧。
- ^ “New Thought Movement”. Encyclopedia. 2022年7月23日閲覧。
- ^ Gura, Philip F. American Transcendentalism: A History. New York: Hill and Wang, 2007: 7–8. ISBN 0-8090-3477-8
外部リンク
- 『超絶主義』 - コトバンク
- 『トランセンデンタリズム』 - コトバンク
超絶主義
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/17 14:59 UTC 版)
ヨーロッパと北アメリカで都市化と工業化が拡大していくと、その流れに反するようにして、ニューイングランドにおいてトマス・コールやフレデリック・エドウィン・チャーチなどのハドソン・リバー派の画家やフレデリック・ロー・オルムステッドなどのランドスケープアーキテクト、そしてヘンリー・デイヴィッド・ソローとラルフ・ワルド・エマーソンのような哲学者たちが超絶主義を掲げて作品を発表し始めた。ニューイングランドの他の景勝地と同じように、超絶主義の哲学的、芸術的、環境保全の運動は、メタコメット山地を産業資源からレクリエーション資源へと認識を改めていった。ホテルや公園、夏の別荘地が1880年代中頃から20世紀初頭にかけて山々へ築かれていく。その中でもホルヨーク山(英語版)やトム山(英語版)、シュガーローフ山(英語版)、ノノータック山(英語版)に築かれた山頂ホテルや宿屋は、注目すべき建造物といえる。マサチューセッツ州グリーンフィールドのポエッツ・シート・タワー(英語版)やコネチカット州メリデンのハバード・パーク(英語版)(フレデリック・ロー・オムステッド監修により設計)などの公園や園内施設は、都市部の人口密集からの一時避難を意図して設けられている。ヒルステッド美術館(英語版)や Heublein Tower などの地所は、地元の財界人や投資家の隠居用山荘として築かれた。大衆の関心は徐々に、合衆国の西への拡張と近代的な交通機関の整備により、遠隔であまり開発の進んでいない地域へと移っていったが、メタコメット山地に対する初期のレクリエーションの関心が残した自然、文化、歴史的遺産は、未だに現代の保護活動への努力を保ち続けている。私人の邸宅は美術館となり、火災などで損傷した古いホテル等の遺構は、篤志による寄贈、買収、税金未払いによる押収などにより自治体や州立の公園へと姿を変えた。かつてホテルや邸宅を訪れたゲストが抱くノスタルジアが維持保存活動を後押ししている。
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