FSIから見える日本の脆弱性(失敗状態)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/21 06:23 UTC 版)
「失敗国家」の記事における「FSIから見える日本の脆弱性(失敗状態)」の解説
最新版(2020年度)のFSIにおいて、日本は179位中の161位で総得点は32.2点だった。過去の得点と比較すると、2020年度(前年度)に対し-0.1点、2016年度(5年前)に対し-2.9点、2011年度(10年前)に対し+1.2点となっている。日本の順位は前年(158位)より3つ下がり、G7諸国の中では3番目に安定した国になっている。 この数値は、「安定」カテゴリーの「より多い安定」ランクに属するもので、同じランクに属する他の国は点数が低い順にベルギー、フランス、韓国、ウルグアイ、マルタ、モーリシャス、リトアニア、スロバキア、チェコ、エストニアの10か国あり、日本はベルギー(31.0点)とフランス・韓国(両国とも32.5点)の間に位置している。また、FSIランキングの首位(イエメン)と最下位(フィンランド)の点数と比較すると、イエメンに対し-79.5点、フィンランドに対し+16.0点となっている。16.2 111.7日本は2006年度から2008年度までFSIの総合得点が30点未満の「持続可能」カテゴリーに属し、最も総得点が低かったのは2006年度の28.0点だった。だが、リーマン・ショックの影響から2009年度以降は総合得点が30点以上となり、「持続可能」の1ランク下の「安定」カテゴリーに属することになった。更に、2012年度は東日本大震災の影響により総得点が過去最高の43.5点(前年比+12.5点)を記録し、G7の中でカナダに次いで2番目に安定した国からイタリアに次いで2番目に脆弱性が高い国に2017年度まで転落した。翌2013年度に得点は36.1点(前年比-7.4点)にまで減少し、熊本地震の影響を受けた2017年度を除き、2014年度以降は点数が緩やかに減少しつつある。 最新版(2021年度)における各指標の値、及び前年度からの点数の変化(括弧]内に記載)は下記の通りである。また参考として、5年前、10年前、及び総合的に最も安定していた2006年度の数値と最新版との比較(括弧内に記載)も併記している。 日本の脆弱国家指標(FSI)指標最新版 (2021年度)5年前 (2016年度)10年前 (2010年度)最も安定 (2006年度)C1:安全保障装置の状態1.8点 (前年比:-0.1点) 1.3(最新比:-0.5) 2.0 (最新比:+0.2) 1.0 (最新比:-0.8) C2:利己的(派閥的)なエリートの台頭2.6点 (前年比:+/-0点) 2.6 (最新比:+/-0) 2.6 (最新比:+/-0) 1.3 (最新比:-1.3) C3:不満分子の存在2.5点 (前年比:-0.3点) 3.9 (最新比:+1.4) 3.9 (最新比:+1.4) 3.8 (最新比:+1.3) E1:経済状況の悪化と貧困3.7点 (前年比:+0.4点) 4.3(最新比:+0.6) 3.5 (最新比:-0.2) 2.6 (最新比:-1.1) E2:不均一な経済発展1.9点 (前年比:+0.5点) 1.8(最新比:-0.1) 2.3 (最新比:+0.4) 2.5 (最新比:+0.6) E3:人材及び頭脳流出2.9点 (前年比:-0.2点) 2.9 (最新比:+/-0) 1.8 (最新比:-1.1) 2.0 (最新比:-0.9) P1:国家の正統性0.5点 (前年比:-0.1点) 1.4 (最新比:+0.9) 2.0 (最新比:+1.5) 1.8 (最新比:+1.3) P2:公共サービス1.8点 (前年比:+0.5点) 1.8 (最新比:+/-0) 1.7 (最新比:-0.1) 1.0 (最新比:-0.8) P3:人権及び法の支配3.0点 (前年比:-0.2点) 3.2(最新比:+0.2) 3.0 (最新比:+/-0) 3.0 (最新比:+/-0) S1:人口構成圧力の増大5.7点 (前年比:+/-0点) 4.5 (最新比:-1.2) 3.6 (最新比:-2.1) 4.0 (最新比:-1.7) S2:難民および国内避難民の大量移動3.2点 (前年比:-0.3点) 3.4 (最新比:+0.2) 1.1 (最新比:-2.1) 1.0 (最新比:-2.2) X1:他の国家又は外部の主体の介入2.6点 (前年比:-0.3点) 4.0 (最新比:+1.4) 3.5 (最新比:+0.9) 4.0 (最新比:+1.4) 総得点数32.2点 (前年比:-0.1点) 35.1点 (最新比:+2.9) 31.0 (最新比:-1.1) 28.0 (最新比:-4.2) 12個ある指標は、「S1:人口構成圧力の増大」が10点満点の半数(5.0点)以上、それ以外では「E1:経済状況の悪化と貧困」の指標が満点の凡そ1/3にあたる3.4点以上となっている。状態の悪い(点数が多い)指標のワースト3は、1位が「S1:人口構成圧力の増大」の5.7点、2位は「E1:経済状況の悪化と貧困」の3.7点、3位は「S2:難民および国内避難民の大量移動」の3.2点であった。 前年の点数と比較すると、3つの指標が悪化し、8つの指標が改善し、1つの指標が変化無しだった。変動幅が最も大きかったのは「E2:不均一な経済発展」・「P2:公共サービス」の+0.5点で、2番目は「E1:経済状況の悪化と貧困」の+0.4点、3番目は「C3:不満分子の存在」・「S2:難民および国内避難民の大量移動」・「X1:他の国家又は外部の主体の介入」の+0.3点であった。 最新版と過去のFSIを比較すると、5年前(2016年度)と比べた場合、FSI総得点は-2.9点改善している。指標ごとに見ると、3つの指標が悪化し、6つの指標が改善し、3つの指標が変化無しだった。最も悪化した指標は「S1:人口構成圧力の増大」で+1.2点上がっている。2番目は「C1:安全保障装置の状態」で+0.5点、3番目に「E2:不均一な経済発展」で+0.1点それぞれ上がっている。逆に最も改善した指標は「C3:不満分子の存在」・「X1:他の国家又は外部の主体の介入」の-1.4点で、2番目は「P1:国家の正統性」で-0.9点、3番目は「E1:経済状況の悪化と貧困」の-0.6点となっている。 10年前(2010年度)と比べた場合、総得点は+1.1点悪化している。指標ごとに見ると、5つの指標が悪化し、5つの指標が改善し、2つの指標が変化無しだった。最も悪化した指標は「S1:人口構成圧力の増大」・「S2:難民および国内避難民の大量移動」で+2.1点上がっている。2番目は「E3:人材及び頭脳流出」で+1.1点、3番目に「E1:経済状況の悪化と貧困」で+0.2点それぞれ上がっている。逆に最も改善した指標は「「P1:国家の正統性」で-1.5点で、2番目は「C3:不満分子の存在」-1.4点、3番目は「X1:他の国家又は外部の主体の介入」の-0.9点となっている。 また、リーマンショックや東日本大震災が発生する前で総得点が最も低かった2006年度と最新版を比較すると、FSI総得点は+4.2点悪化している。指標ごとに見ると、7つの指標が悪化し、4つの指標が改善し、1つの指標が変化無しだった。1.0点以上の変動は、悪化した指標で4つ、改善した指標で3つあった。最も悪化した指標は「S2:難民および国内避難民の大量移動」で+2.2点となっている。以下、2番目は「S1:人口構成圧力の増大」の+1.7点、3番目は「C2:利己的(派閥的な)エリートの台頭」で+1.3点、4番目は「E1:経済状況の悪化と貧困」で+1.1点それぞれ悪化した。逆に最も改善した指標は「X1:他の国家又は外部の主体の介入」で-1.4点改善されている。その次に「P1:国家の正統性」・「C3:不満分子の存在」が-1.3点改善されている。 FSIの統計をまとめると、下記の2点が言える。 2011年度以外は常に点数が4.0点以上と高くなっている「S1:人口構成圧力の増大」(中でも持続可能な人口増加率)が慢性的に日本の抱えている脆弱性である。 リーマン・ショック・東日本大震災・新型コロナウイルス感染症流行の影響から2010年度以降、2020年度を除いて点数が3.4点以上となっている「E1:経済状況の悪化と貧困」と、東日本大震災の影響から2012年度~2020年度の間に点数が3.4点以上となっている「S2:難民および国内避難民の大量移動」の2点が、国家が現実に対応しきれていない脆弱性である。
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