FRAM改装
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/11 13:41 UTC 版)
1950年代、冷戦のグローバル化が進み、また各種の技術進歩によって海洋戦の様相が一変する一方、アメリカ海軍の主力艦艇は依然として第2次大戦期に建造されたものによって占められていたことから、艦隊全体の近代化・艦齢延長を狙ったFRAM改装が計画された。駆逐艦に対するFRAMの場合、300隻に及ぶと予測されたソ連の潜水艦隊への対抗策としての対潜戦能力向上が主眼とされており、その程度によって、FRAM Mk.I(FRAM-I)、Mk.II(FRAM-II)の2パターンがある。 FRAM-Iは、主としてギアリング級を対象としたものであり、75隻が改装を受けた。改装範囲は多岐に渡り、船体・主機・兵装の換装が行われている。艦橋などの構造物は新しく作り直され、CICは拡大、蒸気タービン・ボイラー等、主機もそれぞれ新しいものに換装されている。また、艦齢も8年延長された。 対空捜索レーダーはAN/SPS-29ないし改良型のAN/SPS-37(一部艦はAN/SPS-40)に、ソナーもより新型で低周波・大出力のAN/SQS-23に換装され、一部艦では可変深度ソナーも搭載された。兵装は、対艦用の533mm5連装魚雷発射管、対空用の40mm機銃ないしMk.33 3インチ連装砲はいずれも撤去され、3基のMk.38 5インチ連装砲も1基が撤去された。新しく対潜兵装として、Mk.44短魚雷を発射できるMk.32 3連装短魚雷発射管、同魚雷をロケットで遠距離に投射できるアスロック8連装発射機、同魚雷を無人対潜ヘリコプターでさらに遠距離に投射できるQH-50C DASHの運用設備(格納庫と発着甲板)が設置された。QH-50C DASHは、艦により遠隔制御される無人対潜ヘリコプターで、Mk.44対潜魚雷を2本搭載可能であったことから、この導入によって、攻撃可能範囲が大幅に拡大された。 FRAM-I改装艦も、その兵装配置からグループA(FRAM Mk.IAまたはFRAM-IA)とグループB(FRAM Mk.IBもしくはFRAM-IB)に大別される。FRAM-IA改装艦は、3番(後部)砲塔が撤去されており、元々3番砲塔があった後部甲板にMk.32 3連装短魚雷発射管2基を装備しているほか、2番砲塔の後方左右(艦橋のすぐ下)に2基のヘッジホッグを装備している。FRAM-IB改装艦は、2番砲塔を撤去して空いたスペースにMk.32 3連装短魚雷発射管とヘッジホッグを2基ずつ装備している。 またFRAM-II改装は、主としてフレッチャー級およびサムナー級を対象に計画されたものであるが、本級に対しても一部適用されている。これはおおむねFRAM-Iに準じるものの、より漸進的なものに留められており、魚雷・機関砲は撤去されたが5インチ砲は3基維持され、対潜兵装の内アスロックは搭載されなかった。艦齢延長も5年に留められている。 FRAM-IA改装後の「ペリー」(1969年撮影)。こちらは前部2番砲塔を維持する代わりに、後部砲塔を撤去したうえで後部甲板にMk32 3連装短魚雷発射管を搭載している。 FRAM-IB改装後のバジロン(1964年撮影)。前部2番砲塔を撤去し、空いたスペースにMk32 3連装短魚雷発射管とヘッジホッグを搭載したほか、前後の煙突の間にアスロック発射機を搭載し、後部煙突の後方にQH-50 DASHの格納庫と発着甲板を追加している。 FRAM-II改装後のエヴァレット・F・ラーソン(1969年撮影)。砲塔3基はそのまま維持されているが、アスロック発射機は装備していない。前後煙突の間の両舷にMk32 3連装短魚雷発射管を搭載しているほか、2番砲塔の斜め後方両舷(艦橋の直前)にヘッジホッグを装備している。
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