可変深度ソナーとは? わかりやすく解説

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可変深度ソナー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/06/09 20:23 UTC 版)

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ジョルジュ・レイグ級駆逐艦搭載のDUBV-43可変深度ソナー。

可変深度ソナー(かへんしんどソナー、英語: Variable Depth Sonar: VDS)は、送受波器の深度を変更できるように、艦艇から送受波器を吊下して曳航する方式のアクティブ・ソナー[1][2][3]

原理

混合層が出現すると、サーフェスダクトによって海面付近への音線の到達は改善する一方、層深より下にシャドウゾーンが出現する。

海中での音速に影響を与える物理特性は、気微生物といった混入物を除けば、海水温塩濃度水圧という3つの基本量のみとされている。これを利用して、海中での音速は、深度を変数とする関数として定義でき、この音速-深度関数を音速プロファイルと称する。音速プロファイルは、それぞれ異なる特性と成因をもついくつかの層に分けられる。このうち海面直下に位置する表面層は、熱交換やの作用を受けやすく音速は不安定だが、で覆われたり風浪のある海域では、風や波により撹拌されて等温層を生じることがあり、これを混合層mixed layerと称する[4]

この混合層は、サーフェスダクト(表面ダクト)と称されるサウンドチャネルを形成する。サーフェスダクトが出現すると、海面付近への音線の到達は改善する一方、直接の、すなわち至近距離での音場を超えた距離では、その層の直下の水温躍層内はシャドウゾーンとなり、音線が到達できなくなる[注 1][4]。すなわち水温躍層に潜む潜水艦は、水上艦の探信儀では探知できないため、混合層下端の深度を知っておくことは対潜戦上重要であり、この深度を特に層深(layer depth)と称する[5]

そしてこの問題に対して、ソナーの送受波器そのものを層深より下の水温躍層内に吊り下げることで、シャドウゾーンを解消することが構想された。これが可変深度ソナー(VDS)である[2][3]

運用

VDSの送受波器(フィッシュ)は、投入・揚収作業の都合からあまり大きくできず、従って、使用周波数は比較的高くなるため、近距離の捜索・追尾が主目的となる[2]

しかしそのようにフィッシュの大きさを制限しても、特に荒天時は甲板上での取扱作業は困難であり、また吊下時の速度制限もあって、戦術上の不都合が指摘された。また航行中の艦から吊下したフィッシュの正確な位置把握が困難であるため、仮に探知を得ても、そのまま攻撃に使用するには目標諸元の精度が足りないという問題があり、対潜武器システムとしての有効性は限られた[3]

対潜戦のパッシブ戦化とともに、パッシブ・ソナーへの移行が図られることになった。ノックス級フリゲートでは、1980年度より、AN/SQS-35のフィッシュに曳航ソナー・アレイを付加したAN/SQR-18A(V)1戦術曳航ソナー(TACTASS)の運用を開始した[6]。また後継となるAN/SQR-19も1984年より量産に入ったが、こちらはアクティブ・ソナーをもたない純粋なパッシブ・ソナーであった[7]。ただしその後、潜水艦の静粛化が進むにつれて、パッシブ・ソナーだけでは探知が困難となったことから、再びアクティブ・ソナーが復権し、VDSからの送波とTASSからの受波を組み合わせる形態が開発されている[8]

代表的な機種

アメリカ合衆国

ソビエト連邦 / ロシア

フランス

  • DUBV-43 - ほぼAN/SQS-35 IVDSに相当する。曳航深度700メートル。
  • CAPTAS - 戦術曳航ソナーとしての機能も兼ね備えている。

脚注

[脚注の使い方]

注釈

  1. ^ ただしこのシャドウゾーンは完全なものではなく、海面からの散乱波などにより、若干の漏洩が生じる[4]

出典

  1. ^ 防衛庁 1980, p. 2.
  2. ^ a b c 木下 1991.
  3. ^ a b c 香田 2015, p. 97.
  4. ^ a b c Urick 2013, pp. 71-76.
  5. ^ 防衛庁 1978, p. 16.
  6. ^ Friedman 2004, pp. 359-362.
  7. ^ 香田 2015, pp. 178-179.
  8. ^ 東郷 2012.

参考文献


可変深度ソナー (OQA)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/16 01:30 UTC 版)

海上自衛隊のソナー」の記事における「可変深度ソナー (OQA)」の解説

詳細は「可変深度ソナー」を参照 アメリカのAN/SQA-10の日本版としてOQA-1がある。これは昭和40年代装備化されており、OQS-12/14と連携させて運用されたが、原型機同様に運用限定的なのだったその後アメリカ製のAN/SQS-35 IVDSが導入され、SQS-35(J)として運用された。

※この「可変深度ソナー (OQA)」の解説は、「海上自衛隊のソナー」の解説の一部です。
「可変深度ソナー (OQA)」を含む「海上自衛隊のソナー」の記事については、「海上自衛隊のソナー」の概要を参照ください。

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