高齢者の嚥下障害と診断と治療
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/20 23:53 UTC 版)
「堀内朗」の記事における「高齢者の嚥下障害と診断と治療」の解説
現在は、高齢の嚥下障害者に対して胃瘻を作ることを遅らせる、作らずに最後まで看取れないかというテーマに取組んでいる。経鼻内視鏡を用いて嚥下機能検査を行い、兵頭・駒ヶ根スコアに基づいた機能評価と嚥下が可能なゼリー(ゲル化剤)、交互嚥下により経口摂取を出来る限り継続することで、胃瘻を必要としない世の中を目指している。 通常の嚥下内視鏡検査や嚥下造影検査との相違点 通常、耳鼻咽喉科医や歯科医が実施している嚥下内視鏡検査は、送気・送水・吸引機能を有さない外径3mmの内視鏡を使用している。多くの場合、携帯型のどこにでも持ち運べるタイプで往診先でも容易に検査ができることが長所である。極細径であるため鼻腔の局所麻酔を使用せずに実施できる。短所は、重症の嚥下障害者では、口腔内に唾液・食物が残留し見えにくい場合には検査が困難なことである。この状態で検査を継続することは消化器内視鏡医などの嚥下機能検査初学者には困難なことが多い。一方、経鼻内視鏡を使用すると、鼻腔の局所麻酔は必要であるが、送気・送水・吸引機能を有するため口腔内の唾液を吸引して検査を継続できる。筆者の私見では、通常の嚥下内視鏡検査はこれまでは比較的軽症の嚥下障害者を対象に嚥下機能評価が実施されたが、経鼻内視鏡による嚥下機能評価法は重症の嚥下障害者の評価も可能である。嚥下造影検査では、摂食、嚥下障害の検査法のゴールドスタンダードと考えられているが、透視室への移動、透視による被曝、実際の摂食場面の再現が困難であるという問題がある。加えて、被検者が食べたい、被検者に食べさせたい食物の嚥下状態を直接評価することは困難である。一方、経鼻内視鏡による嚥下機能評価ではこれが可能で、もしも食物が誤嚥したとしてもよく見えるので吸引を含めた処置が容易で安全に対処できる。 兵頭・駒ヶ根スコアを利用した嚥下機能評価の利用法 嚥下障害のリハビリテーションとしては、実際の食事に対処する嚥下運動訓練や認知力訓練が行われる。 具体的には、 食品の調整(トロミ剤とゲル化剤) 誤嚥防止の姿勢形成や食べ方(クラッシュゼリー等を使用した交互嚥下による咽頭残留物の除去)と食べさせ方 口腔ケア である。 これらの方法は本人が自立的に行っていく事を期待するが、介助者が行うことで効果が期待できることも多い。たとえば姿勢については、 座位姿勢の安定化 両上肢の自由な利き手とテーブル面への支持 頭部前屈位 がポイントである。 兵頭・駒ヶ根スコアを利用した嚥下障害者に対する対処法:0−4点の軽症者では、食事に集中するように指導するだけでも効果が期待でき、嚥下時の頭部前屈位の有用性を理解していただくことも大切である。 5−7点の中等症者は、トロミ材の濃さ、ゲル化剤の利用など嚥下調整食品の調整に重点を置く。高齢者では、食品の口腔内の残留が誤嚥性肺炎の原因になることが多いので水分ゼリーを利用した交互嚥下が有用である。 8点の嚥下障害者においては、アイソニックグリーンゼリーを利用した嚥下訓練(1回30分以内、1日3回、ゼリーを嚥下するだけ)が有用であった。実際、当センターの経験では兵頭・駒ヶ根スコア8点の患者12名のうち、4名(33%)が兵頭・駒ヶ根スコア7点以下となり、ペースト食の経口摂取が可能になった。
※この「高齢者の嚥下障害と診断と治療」の解説は、「堀内朗」の解説の一部です。
「高齢者の嚥下障害と診断と治療」を含む「堀内朗」の記事については、「堀内朗」の概要を参照ください。
- 高齢者の嚥下障害と診断と治療のページへのリンク