高性能とコストダウンの両立
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/05/20 01:08 UTC 版)
「オリンパス・ペン」の記事における「高性能とコストダウンの両立」の解説
米谷は、カメラの最重要パーツであるレンズセットに、写りを重視して、あえて高コストなテッサー型レンズを採用、しかも簡易な前玉回転ではなく全群を繰り出す構造にして使うことにした。 周囲からは米谷のレンズ性能へのこだわりぶりに「それではぜいたくすぎて採算が採れない」と批判が集中したが、米谷はハーフサイズでは引き伸ばし倍率が高くなることから妥協せず、レンズ以外の巻き上げ機構やシャッターなどには独自の工夫を盛り込んだ簡素化を徹底し、予算内で生産可能かつ機能は損なわない合理的な設計を実現した。 シャッターにもこだわった。当時#000の小型シャッターは安価なバリオ型二枚羽根のみで、5枚羽根のコンパー型やプロンター型は#00までしか存在しなかった。二枚羽根は羽根一枚が大きく高速で動かすことができないので同じシャッタースピードであっても動いている被写体を写し止められない。またシャッター速度B、1/25、1/50、1/100、1/200秒の4速で、スローシャッターが使用できなかった。米谷が思案に暮れていると、上司が「オリンパスワイドで#00シャッターを大量に購入した」という縁から、シャッターメーカーのコパル(現日本電産コパル)に行って頼んでみる旨提案した。コパルで対応した専務の前原春一と常務の池田は渋ったが、創業者で社長の笠井正人の一声で研究することとなった。完成までには時間がかかるので仕方なく初代ペンは2枚羽根シャッターを使用したが、この後コパルでは小さい#000シャッター規格に5枚羽根の複雑な機構を組み込み、しかも1年後に商品化しなければならないということで全社を挙げての大騒動になったという。 ライカM3の特徴であった、迅速巻き上げが可能になるレバー巻き上げ方式は多数の歯車が必要で、当時の大衆機では複雑かつ高コストになるため採用できず、同様の機能を安価に実現する方法が検討された。ベテラン写真家が、旧式のライカIIIfを扱う際に右手人差指の側面をノブに押し付けて引く方法で巻き上げていたことにヒントを得、ノブをもっと大きくしてカメラ背面にダイヤル状にして露出させ、ダイヤルのギザつきに親指の腹を擦り付けて巻き上げる構造が着想された。「リヤーワインディング」と称され、同様の方式は現在でもレンズ付きフィルムで見られる。 当初歯車を1枚も使わないカメラを目指していたが「リヤーワインディング」を採用するとスプロケット軸とフィルム巻き上げ軸を連結するため歯車が2枚必要になる。そこで代償のコストダウン策として、連動するフィルムカウンターを簡素化することが考えられた。フィルム巻き上げ歯車の上にそれより1歯少ない歯車を置くことで1回転するごとに確実に1歯ずれ、部品点数が少なく調整も不要で正確なフィルムカウンター機構ができ、これを特許とした。 米谷のこだわりは本来専門デザイナー任せになるカメラの外装デザインにまで及び、その行きがかりから本職のデザイナーでもない米谷自身がデザインまで自ら仕上げることになったが、撮影しやすさを重視したシンプルかつ機能的な形態となり、結果としては成功であった。 こうして完成した米谷の処女作カメラは「ペン」と名付けられた。製品名については、試作段階では「18」、「メモ」、「ミッチー」などの名称案があったが、結局桜井栄一常務の推した「ペン」に決定したという。
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高性能とコストダウンの両立
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/08 04:29 UTC 版)
「オリンパス ペン」の記事における「高性能とコストダウンの両立」の解説
米谷は、カメラの最重要パーツであるレンズセットに、写りを重視して、あえて高コストなテッサー型レンズを採用、しかも簡易な前玉回転ではなく全群を繰り出す構造にして使うことにした。 周囲からは米谷のレンズ性能へのこだわりぶりに「それではぜいたくすぎて採算が採れない」と批判が集中したが、米谷はハーフサイズでは引き伸ばし倍率が高くなることから妥協せず、レンズ以外の巻き上げ機構やシャッターなどには独自の工夫を盛り込んだ簡素化を徹底し、予算内で生産可能かつ機能は損なわない合理的な設計を実現した。 シャッターにもこだわった。当時#000の小型シャッターは安価なバリオ型二枚羽根のみで、5枚羽根のコンパー型やプロンター型は#00までしか存在しなかった。二枚羽根は羽根一枚が大きく高速で動かすことができないので同じシャッタースピードであっても動いている被写体を写し止められない。またシャッター速度B、1/25、1/50、1/100、1/200秒の4速で、スローシャッターが使用できなかった。米谷が思案に暮れていると、上司が「オリンパスワイドで#00シャッターを大量に購入した」という縁から、シャッターメーカーのコパル(現日本電産コパル)に行って頼んでみる旨提案した。コパルで対応した専務の前原春一と常務の池田は渋ったが、創業者で社長の笠井正人の一声で研究することとなった。完成までには時間がかかるので仕方なく初代ペンは2枚羽根シャッターを使用したが、この後コパルでは小さい#000シャッター規格に5枚羽根の複雑な機構を組み込み、しかも1年後に商品化しなければならないということで全社を挙げての大騒動になったという。 ライカM3の特徴であった、迅速巻き上げが可能になるレバー巻き上げ方式は多数の歯車が必要で、当時の大衆機では複雑かつ高コストになるため採用できず、同様の機能を安価に実現する方法が検討された。ベテラン写真家が、旧式のライカIIIfを扱う際に右手人差指の側面をノブに押し付けて引く方法で巻き上げていたことにヒントを得、ノブをもっと大きくしてカメラ背面にダイヤル状にして露出させ、ダイヤルのギザつきに親指の腹を擦り付けて巻き上げる構造が着想された。「リヤーワインディング」と称され、同様の方式は現在でもレンズ付きフィルムで見られる。 当初歯車を1枚も使わないカメラを目指していたが「リヤーワインディング」を採用するとスプロケット軸とフィルム巻き上げ軸を連結するため歯車が2枚必要になる。そこで代償のコストダウン策として、連動するフィルムカウンターを簡素化することが考えられた。フィルム巻き上げ歯車の上にそれより1歯少ない歯車を置くことで1回転するごとに確実に1歯ずれ、部品点数が少なく調整も不要で正確なフィルムカウンター機構ができ、これを特許とした。 米谷のこだわりは本来専門デザイナー任せになるカメラの外装デザインにまで及び、その行きがかりから本職のデザイナーでもない米谷自身がデザインまで自ら仕上げることになったが、撮影しやすさを重視したシンプルかつ機能的な形態となり、結果としては成功であった。 こうして完成した米谷の処女作カメラは「ペン」と名付けられた。製品名については、試作段階では「18」、「メモ」、「ミッチー」などの名称案があったが、結局桜井栄一常務の推した「ペン」に決定したという。
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