離散力学系
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/13 05:52 UTC 版)
独立変数を t とし、m 個の従属変数を (x1, x2, …, xm)⊤ = X と表す。力学系では独立変数 t を時間と呼ぶ。X の空間を相空間と呼び、m-次元実数空間 Rm ∋ X とする。時間を離散的として扱う場合 t ∈ Z であり、離散力学系と呼ばれる。離散力学系では時間を n などで表す。離散力学系を定める写像 f(X) が与えられているとき、ある点 X ∈ Rm に f を繰り返し適用することで、 X , f ( X ) , f 2 ( X ) , f 3 ( X ) , … , f n ( X ) , … {\displaystyle X,\ f(X),\ f^{2}(X),\ f^{3}(X),\dotsc ,\ f^{n}(X),\dotsc } という数列が得られる。この集合を離散力学系の軌道と呼ぶ。ここで fn は f を n 回適用することを意味し、m = 3 であれば、f3 = f(f(f(X))) である。幾何学的にみれば、離散力学系の軌道は相空間上の点列として描かれる。 最初に与える点 X を特に初期条件や初期値と呼び、X0 で表す。X0 から始まる軌道を O(X0) で表す。上記のように、X0に写像 f を繰り返し適用することで軌道が得られる。正確にはこれは時間を非負整数に取ったもので前方軌道または正の半軌道と呼ばれ、 O + ( X 0 ) = { X ∈ R m ∣ X = f n ( X 0 ) , n = 0 , 1 , 2 , … } {\displaystyle O_{+}(X_{0})=\{X\in \mathbb {R} ^{m}\mid X=f^{n}(X_{0}),\ n=0,1,2,\dotsc \}} で与えられるものである。f が同相写像で逆写像 f−1 が定義できるのであれば、時間を反転させた後方軌道または負の半軌道 O − ( X 0 ) = { X ∈ R m ∣ X = f n ( X 0 ) , n = 0 , − 1 , − 2 , … } {\displaystyle O_{-}(X_{0})=\{X\in \mathbb {R} ^{m}\mid X=f^{n}(X_{0}),\ n=0,-1,-2,\dotsc \}} が与えられる。さらに、前方軌道と後方軌道を足し合わせた集合 O ( X 0 ) = O + ( X 0 ) ∪ O − ( X 0 ) = { X ∈ R m ∣ X = f n ( X 0 ) , n ∈ Z } {\displaystyle O(X_{0})=O_{+}(X_{0})\cup O_{-}(X_{0})=\{X\in \mathbb {R} ^{m}\mid X=f^{n}(X_{0}),\ n\in \mathbb {Z} \}} を全軌道や単に軌道と呼び、O(X0) は n = 0 で X0 を通る軌道を意味する。 物理的には、前方軌道が未来に向かって時間が進むときの軌道であり、後方軌道が過去に向かって時間が戻るときの軌道といえる。f の逆写像が定義できないときは、後方軌道を一意に決めることができない。
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離散力学系
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/09 23:01 UTC 版)
「トランスクリティカル分岐」の記事における「離散力学系」の解説
離散力学系におけるトランスクリティカル分岐の標準形は、次の1次元写像で与えられる。 x ↦ f ( x , μ ) = x + μ x ∓ x 2 {\displaystyle x\mapsto f(x,\mu )=x+\mu x\mp x^{2}} 連続力学系と同じく、ここでは、右辺第3項の符号が負である場合を考える。この写像の固定点(不動点)とは、 f ( x ) = x {\displaystyle f(x)=x} を満たす点 x である。連続力学系と同じく固定点を x* で表すと、離散力学系の標準形の固定点は x* = 0 および x* = μ である。x-y 平面で考えると、y = f(x) の曲線が y = x の直線と交わる箇所が固定点である。μ を変化させると、f(x) の曲線は以下の図のように変化する。 パラメータ μ と固定点 x* の変化は次のようになっている。 μ < 0 かつ |μ| ≪ 1 では、x* = μ は不安定固定点、x* = 0 は安定固定点である。μ を増加させていくと、x* = μ は 0 へ近づいていく。 μ = 0 では、2つの固定点が衝突、一致して、固定点は x = 0 のみとなる。 μ > 0 かつ |μ| ≪ 1 では、再び固定点は2つになり、今度は x* = μ が安定固定点、x* = 0 が不安定固定点になる。 離散力学系の標準形の分岐図は、連続力学系と同じ形である。
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離散力学系
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/10 09:49 UTC 版)
離散力学系におけるサドルノード分岐の標準形は、次の1次元写像で与えられる。 x ↦ f ( x , μ ) = x + μ ∓ x 2 {\displaystyle x\mapsto f(x,\mu )=x+\mu \mp x^{2}} 連続力学系と同じく、ここでは、右辺第3項の符号が負である場合を考える。この写像の固定点(不動点)とは、 f ( x ) = x {\displaystyle f(x)=x} を満たす点 x である。連続力学系と同じく固定点を x* で表すと、離散力学系の標準形の固定点も、μ > 0 では x* = ±√μ で、μ < 0 では存在しない。x-y 平面で考えると、y = f(x) の曲線が y = x の直線と交わる箇所が固定点である。μ を変化させると、f(x) の曲線は以下の図のように変化する。分岐点の μ = 0 で f(x) の曲線が対角線にちょうど接する。このため、1次元離散力学系のサドルノード分岐は接線分岐(英語: tangent bifurcation)という名でも呼ばれる。 標準形のパラメータ μ と固定点 x* の変化は次のようになっている。 μ < 0 では、固定点は存在しない。 μ = 0 では、x = 0 にただ1つの固定点が現れる。 μ > 0 では、1つだった固定点は x* = ±√μ という2つの固定点に分かれる。μ が 1 よりも十分小さい範囲で、片方の x* = √μ が沈点で、もう片方の x* = −√μ が源点である。 離散力学系の標準形の分岐図は、連続力学系と同じ形である。
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離散力学系
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/26 15:06 UTC 版)
t は整数全体でのみ定義されるような力学系は離散力学系とよばれる。離散力学系は多様体のある変換の反復写像としてとらえられる。つまり、任意の整数 n について fn は f1 を n 回合成した(n が負ならば f の逆写像を -n 回合成した)写像になっている。したがって離散力学系は可逆変換 f1 が定める整数の加法群Zによる多様体Mへの作用だということになる。
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