隊員の選抜
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 01:59 UTC 版)
SASは志願制を基本とし、イギリス全軍の将兵を対象にしているが、志願者の多くは空挺部隊やコマンド部隊に関係した軍歴を持っている。選抜試験は夏期と冬期の年二回行われ、どちらに志願してもよい。選抜試験中にやむを得ず負傷したといった特別の事情が無い限り、選抜試験は二回までしか受けることができない。志願者が不適格とみなされた場合、選抜フェーズの途中であっても容赦なく原隊へ送り返される。 指定された集合場所に出頭した志願者は、まずイギリス全軍共通の体力審査であるPFT(個人フィットネステスト)、次いでAFT(年次フィットネステスト)と同じものに合格しなければならない。その後は規定の重さの背嚢を身に付けた状態でのクロスカントリー行軍が繰り返される。荷物の重量は常に規定以上でなくてはならないため、行軍中に消費する飲料の重さもあらかじめ加味する必要がある。実施されるのはブレコン・ビーコンズとエラン渓谷で、前者での選抜訓練は現地の山の名前をもじってファン・ダンス(扇の舞い)とも呼ばれる。このフェーズでは地図とコンパスを使って定められた時間内にチェックポイントを次々と通過しなければならず、丘陵・山岳や錯綜地を踏破する距離も次第に伸ばされる過酷なもので、死者が出た事例もある。最終段階では負い紐を外した小銃が荷物に追加され、常に手放さず携行しなければならない。 山岳クロスカントリーに合格した者は外地(ベリーズ、ブルネイまたはマレーシア)でのジャングル教育に派遣され、熱帯雨林におけるナビゲーションや戦術行動、サバイバルに関する知識を得る。その次にはイギリス本国へ戻り、最終合格後にすぐ実戦任務に就くことができるよう、戦術や内外兵器について訓練を受ける。 最終テストは逃走訓練である。これはSAS単独ではなく、一般部隊からの参加者を交えて行われる。少人数のグループに分けられた訓練生は旧式の野戦服とわずかな装備だけを与えられると、追跡役の部隊から逃れつつ、一定時間内に指定された目的地を目指す。目的地にたどり着いた際に当初のグループを保っている必要は無く、単独行動であっても構わない。テストはそのまま尋問抵抗訓練(RTI)に移行し、訓練生たちは捕虜になったという想定で手荒に扱われる。暴力を振るわれることまでは無いが、すでに逃走訓練で疲労し、不快な環境下で罵声を浴びせられるなど圧迫感にさらされた志願者が平常心を失い、この段階で不合格になることは決して珍しくない。RTIで繰り返される仮想尋問で訓練生が話してもよいのは、氏名・階級・軍籍番号だけである。 当初200名前後だったSAS志願者のうち、多くが最初の数日間で脱落し、最終テストを突破するのは15ないし20パーセント程度である。
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