運転士の過失の有無
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/23 23:16 UTC 版)
「JR羽越本線脱線事故」の記事における「運転士の過失の有無」の解説
この列車には、運転士(当時29歳)と車掌(当時26歳)の2名が乗務していた。事故発生当日、事故列車は秋田駅発車の時点で1時間1分の遅延を生じていたが、途中風の強い区間では運転指令員の指示に従い25キロメートルで進行するなど、安全確保のための措置をとっていた。その結果、事故直前の酒田駅発車時点では、遅れは1時間8分に拡大していた。事故発生時も、通常なら時速120キロメートルで走行するところを、運転士は自らの判断により時速100 - 105キロメートルに減速して運行していたことが、事故後の調査で判明している。無理な定時運行や回復運行の敢行など、安全性を無視した無謀な運行を行った形跡はなかった。 事故発生後、運転士はすぐさま列車無線で新潟支社の輸送指令に脱線事故の発生を伝えて救助の要請を行い、車掌と2人で消防の到着まで救助作業を行った。消防隊員が到着した時、重傷を負いながらも「私より先にお客さまの救助をお願いします」と言って、救助作業を続けたという。 事故発生から半年後の2006年6月25日付け朝日新聞山形県版31面に掲載された検証記事によると、羽越本線の運転歴20年のベテラン運転士がインタビューに応じ、「突風が原因だったとしても、予測できないとすれば、どうしようもない」と語り、もし当時29歳の運転士ではなく自分が運転していたとしても事故を防ぐことはできなかったであろうとしている。この事故は、運転士の経験や能力の範疇を超える突風によって起こったと推定される。 それに対し、毎日新聞は2005年12月27日の社説で、「この路線を何度も運転している運転士ならば、風の音を聞き、風の息づかいを感じられたはずだ」と、事故の原因は突風ではなく運転士の経験不足による人災であるとして、無謀運行を敢行したとするJR東日本の運行管理体制を厳しく批判した。現実には高速走行中の運転士に判断は困難であり、社説掲載後の毎日新聞には非難が殺到し、掲載から約2ヶ月後の2006年2月7日、毎日新聞が検証記事において、科学的見地を無視した感情に偏った行き過ぎた批判であったことを認めた。その際、毎日新聞の紙面には外部の人間により構成される「開かれた新聞」委員会における委員たちの社説に対する発言を謝罪記事の代わりとして掲載している。委員たちの発言として社説に対する批判意見は掲載されているものの、「社説は学術論文ではない。記者の感情が高ぶり、憂慮が表れるのは当然。社説に冷静さのみを求めるのは誤りだ」という意見も掲載し、自社を擁護しているとして非難に拍車をかけることとなった。
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