運営体制問題
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当事者自助団体「日向ぼっこ」(当時)代表廣瀬さゆりは2007年9月7日厚生労働省の第1回「児童部会社会的養護専門委員会」において、「内虐待事件が発生した施設の多くが、施設長や一部の配下の職員に人事権やケア方針などの決定の際、権限や権力が集中し過ぎていて、ワンマン・独裁運営管理になりやすい体質が憂慮されます。また、世襲制や同族経営が多い民間社会福祉法人経営と事件発生の関係性などの課題は、触れてはならない聖域としてタブー視されてはいないでしょうか。」と発言している。児童相談所で長年児童福祉司として働いた矢満田篤二は高い志で施設開設と運営をした初代から二代目施設長に移行することで、施設の私物化が起こったり、施設を経営の観点からとらえ、措置費目当てに児童相談所に入所児童措置を依頼するようになることについて著書で触れている。日本の児童養護施設はその5~7割が同族経営とみられ、施設長の妻が無給で献身的に働くことにより公立施設より安価で効率が良いとのメリットも指摘されるが、同族メンバー以外が上級管理職になりづらく、経営者に異を唱えづらいという問題がある。また、職員が労働組合を結成しづらく直時間労働に対して不十分な給与しかもらえないと感じるともいわれている。 虐待事件を元に、『第60回記念大会 全国児童養護施設長研究協議会(大阪大会)』開催において、児童養護施設では、満床状態に加え重い心的課題を抱えて個別的、治療的ケアを要する子どもたちが増加し、その養育に混迷、混乱が生じているのが現状だと認めている。「児童養護施設は、いつの時代も社会でもっとも弱い立場にある子どもたちの権利を守り、子どもたちの安心、安全の拠点であり続けなければなりません。」という内容の「子ども・家庭福祉の明日に向けた宣言」が採択され、また全国養護施設協会によりすべての児童養護施設に対して「人権擁護の自己点検にむけて本要項およびチェックリスト」が行わるようになった。施設の課題や入所児童自らが自分たちのことについて語り合う全国児童養護施設高校生交流会も一時行われたが、現在は途絶えてしまっている。途絶えた背景は、大会に参加した入所者が施設内虐待を訴えたが取り上げられず、地元の報道機関にリークし暴露したことがあったため、翌年から討論会が中止となりやがて交流会自体もなくなったとの経緯があった。なお、イギリスの脱施設化後の社会的養育の研究家である津崎哲雄はフォスタリング・ソーシャルワーカー養成の質の向上が急務であると語っている。
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