通常の数学
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/01 20:51 UTC 版)
しかし、与えられた X (カントールの場合には、 X = R) の部分集合を考えれば、宇宙は X の部分集合の集合の存在を要請する。(例えば、X の位相は X の部分集合の集合である。)X の様々な部分集合の集合は、それ自体は X の部分集合にならないが、代わりに X の冪集合 PX の要素はX の部分集合になる。これに続き、研究対象は宇宙が P(PX) になるような場合における X の部分集合の集合などを構成する。言い換えれば、X 上の二項関係 (デカルト積の部分集合 X × X) 、もしくは X からそれ自身への写像を考えれば、P(X × X) もしくは XX のような宇宙が要請される。 したがって、主要な関心が X であっても、 X よりもかなり大きな宇宙が必要とされることになる。上記のアイデアに続いて、X の宇宙としての 上部構造 が要請される。これは次のような再帰的構造によって定義される。 S0X を X 自身とする。 S1X を X と PX の和集合とする。 S2X を S1X と P(S1X) の和集合とする。 一般に、Sn+1X を SnX と P(SnX) の和集合とする。 次に X の上部構造 SX が S0X 、S1X 、S2X などの和集合とする。つまり、 S X := ⋃ i = 0 ∞ S i X . {\displaystyle \mathbf {S} X:=\bigcup _{i=0}^{\infty }\mathbf {S} _{i}X{\mbox{.}}\!} 集合 X の開始地点がどこであろうと、空集合 {} は S1X に属することに注意すること。空集合はフォン・ノイマン順序数 [0] である。さらに元が空集合のみの集合 {[0]} は、S2X に属する。これはフォン・ノイマン順序数 [1] である。同様に、{[1]} は S3X に属し、さらに {[0]} と {[1]} の和集合 {[0], [1]} も属するため、これはフォン・ノイマン順序数 [2] となる。このプロセスを続けていけば、すべての 自然数 はフォン・ノイマン順序数による上部構造の内部において表現される。次に、もし x と y が上部構造に属していれば、{{x}, {x, y}} が順序対 (x, y) を表現することになる。従って、上部構造は要求される様々なデカルト積を含んでいることになる。さらに、関数と関係もデカルト積として表現されるため、これらも上部構造に含まれる。このプロセスは、定義域がフォン・ノイマン順序数 [n] の関数などとして表現されるような n-tuples に対しても与えられる。 そのため、もし開始地点がちょうど X = {} ならば、数学で必要となる多くの集合は {} 上の上部構造の要素として現れる。しかし、S{} の要素のそれぞれは有限集合であろう!自然数のひとつひとつはそれに属すが、すべての自然数の集合 N は属さない(それは S{} の部分集合であるにもかかわらず)。実際、X 上の上部構造はすべての遺伝的有限集合から成る。このように、それは有限主義者の数学の宇宙と考えられる。時代をさかのぼれば、19世紀の有限主義者レオポルト・クロネッカーはこの宇宙において仕事をしたことが思い出される。彼は、それぞれの自然数は存在するが、集合 N(完全な無限)は存在しないと信じていた。 しかし、S{} は通常の(有限主義者ではない)数学者にとっては不足である。なぜなら、N が S{} の部分集合として利用可能であるとはいえ、依然として N の冪集合は利用不可能だからである。特に、実数の任意の集合は利用不可能である。そのため、もう一度上記のプロセスを開始して S(S{}) を形成する必要があるだろう。しかし、物事を単純に保つために、自然数の集合 N は所与として SN を形成し、N 上の上部構造をとってもよい。これはしばしば通常の数学の宇宙であると考えられる。通常研究される数学のすべてはこの宇宙の要素を参照していると考えるということである。例えば、普通の実数の構成(デデキントの切断)はどれも SN に属している。超準解析も自然数の超準モデル上の上部構造において行うことができる。 宇宙が関心のある任意の集合 U であった前節からの哲学のわずかな転換に注意しよう。研究される集合は、前節では宇宙の部分集合であったが、本節では宇宙の要素である。したがって、P(SX) はブール束であるが、関連するもの SX 自体はそうではない。結果として、上部構造の宇宙を前節の冪集合の宇宙であるとみて、それにブール束とベン図の概念を直接的に適用することはまれである。そのかわりに、個々のブール束 PA を用いて作業することができる。ここで、A は SX に属する任意の関連する集合である。すると、PA は SX の部分集合である(そして、実際に SX に属する)。カントールの場合 X = R では特に、実数の任意の集合は利用可能ではないので、実際にもう一度上記のプロセスを開始する必要があるだろう。
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