農業への影響と抑制
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/24 10:10 UTC 版)
「ビロードモウズイカ」の記事における「農業への影響と抑制」の解説
栽培植物との競合はできないため、ビロードモウズイカはもはや深刻な農業雑草とは考えられておらず、耕作地からは簡単に駆除される。 ただし、カリフォルニア におけるシエラネバダ山脈東部の半乾燥地帯のような、そもそも植物が希薄な場所においてはそうとも言えない。 そのような生態的条件のもとでは、ビロードモウズイカは在来種の植物を駆逐してしまう。それは、野火の後で発生する傾向があり、標準的な植生遷移も妨げる。農業上の脅威ではないものの、ビロードモウズイカを完全に根絶することは非常に困難であり、過放牧の牧草地において特に問題になる。 この植物はコロラド( Class C)、ハワイ 、オーストラリアのビクトリア州(西ギプスランド地域は禁止区域、その他いくつかにおいては抑制区域である)で、有害植物(en:noxious weed)としての指定を受けている。 ビロードモウズイカは、有害な生物も益虫も両方含む多数の昆虫や病原菌の宿主であるにもかかわらず、それ自身は農業雑草とはならない。それはまた、キュウリモザイクウイルス(Cucumber mosaic virus)、Erysiphum cichoraceum(ウリ科植物のうどん粉病)、ワタ根腐病の潜在的感染源でもある。 ある研究では、ビロードモウズイカを宿主とする昆虫が29の異なる科から見付かった。その害虫の主なものはミカンキイロアザミウマ ( Frankliniella occidentalis )、Lygus lineolarisのようなLygus属のカメムシ、およびハダニ科に含まれる多数のハダニ類である。これらの存在により、ビロードモウズイカは越冬する有害生物の潜在的感染源となる。 ビロードモウズイカで普通に見られる他の昆虫は、一般のモウズイカ属の植物を、あるいは特にビロードモウズイカを専門に摂食とする。それらは、Haplothrips verbasci(クダアザミウマ属)、 Gymnaetron tetrum(ゾウムシ科) ( これらの幼虫は種子を食べる) 、および、Cucullia verbasci(ヤガ科) などである。 有益な昆虫もまた、ビロードモウズイカに発生する。それらは、Galendromus、Typhlodromus、Amblyseiusなどの捕食性ダニ類、Orius tristicolor(サシガメ類) 、Campylomma verbasci(カスミカメムシ科)などを含む。 害虫も益虫も両方共宿主となるこの植物の能力は、コナジラミの捕食者であるCampylomma verbasciやDicyphus hesperus(カスミカメムシ科) のような、他の作物における生物学的コントロールに使われる昆虫の安定した個体群を維持するために潜在的に役立つ 。 害虫の鱗翅目のあるもの、 Papaipema nebris(ヤガ科) や、Strymon melinus(シジミチョウ科)などもまた、ビロードモウズイカを宿主とする。 この植物の抑制は、適切な時期に手で引き抜いたり鍬で耕すような機械的な方法による管理が一番良い。できれば続けて在来種を播種することが好ましい。植物全体に生えている不愉快な毛のため、動物はほとんど食べない。そして液体除草剤がこの植物に効果を与えるためには界面活性剤を必要とする。なぜならこの毛により水分はちょうどロータス効果のように植物から流れ落ちてしまうからである。焼却も効果がない。それは新たな発生をもたらす芽ばえのために新しい裸地を作り出すだけにすぎない。 モウズイカ食専門のGymnaetron tetrum(ゾウムシ科)や、Cucullia verbasci(ヤガ科)も、通常はビロードモウズイカの全体的な個体数に対してわずかな影響力しか持たない。ヤギとニワトリもビロードモウズイカの抑制のために提案されたことがある。グリホサート 、トリクロピル およびスルホメツロンメチル などを含む接触型除草剤は(界面活性剤と共に使用すれば)効果的である。テブチウロンのような土壌型除草剤も効果的であるが、裸地を再生してしまうため、ビロードモウズイカの再成長を妨げるためには繰り返し使用する必要がある。
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