輸液製剤について
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/17 09:00 UTC 版)
輸液製剤はNa濃度によって何号液という呼び方をする。これは0.9%生理食塩水1に対していくつの5%ブドウ糖液を混ぜたかによって分類される。便宜上、生理食塩水を0号液と呼べば、すっきりと整理できる。低張複合電解質液には、1〜4号液が該当する。なお、こういった輸液製剤は日本医学独自のものである。 0.9%生理食塩水 細胞外液と浸透圧が等しい食塩水である。これで細胞外液を補充しようとするとクロールイオンが過剰に補給されることとなりアシドーシスとなることが知られている。基本的には細胞外液に分布し、細胞内液にはあまり分布しないと考えられている。細胞内に分布する場合は細胞内脱水などがあり、細胞外液から細胞内液への移動があるときである。 5%ブドウ糖液 ブドウ糖が速やかに吸収されるため細胞外に水を供給する作用をもつ。ブドウ糖自体は浸透圧の調整用であり、エネルギー源としては殆ど役に立たない量である。心不全患者に点滴で薬を投与する場合もよく用いる。あくまで体内に水分を補充するので細胞外液にも細胞内液にも均等に分布するため、細胞外液をとくに補充したいときには向かない。 リンゲル液(Ringer's solution) 細胞外液と似た電解質組成の製剤。0号液である。アルカリ化剤として乳酸塩や酢酸塩が配合されていることが多い。細胞外液の補充に用いられる。ラクテック®など。ショック時のバイタルサインの安定化には最も効果的な輸液製剤である。生理食塩水にカリウムやカルシウムを加えたのがリンゲル液であるが、リンゲル液でもクロールイオンが過剰となることが知られている。そこで酢酸や乳酸などを加えてクロールイオン量を抑えている。酢酸リンゲル液としてヴィーンF®、乳酸リンゲルとしてラクテック®がある。注射ではなく経口摂取でも脱水症状時の水分補給に効果があり、かつては長時間の手術後で疲労した医師が飲んだ例もあった。いわゆるスポーツドリンクは、リンゲル液を元にして、飲みやすいように食味を調整したものであるが、この逸話が開発のヒントになったという。1882年にイギリスの薬理学者シドニー・リンガーにより開発された。 1号液 開始液。Kを含まないため、高カリウム血症が否定できない場合にまず用いられる。ソリタT1号®などである。病態不明で腎機能がわからないとき利尿がつくまで1号液を用い、利尿がついてから目的にあわせて輸液製剤を変更するということはよく用いられる手法である。但し、小児の肥厚性幽門狭窄症では始めからKを投与した方がよいとされている。 2号液 脱水補給液。K・Pなどの電解質を含む。脱水の治療では使いやすいといわれている。 3号液 維持液。通常の状態で必要とされる電解質をバランスよく含む製剤。食事がとれない場合の維持輸液に用いられる。ソリタT3号®など。3号液は基本的に尿など体が排出するような水分の組成にあわせて作られている。すなわち3号液では基礎輸液の理論をそのまま輸液量として用いることができるという特徴がある。そのわかりやすさのため、維持輸液としては現場で最もよく使われる。 4号液 術後回復液 。 高カロリー液 おおむね1日に必要な程度のカロリーを投与できる製剤。維持液に加えて高濃度のブドウ糖やアミノ酸を含む。浸透圧が高いため中心静脈ルートから投与される。フルカリック1号®など。
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