軍隊など統制組織における用法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/16 15:35 UTC 版)
「サー」の記事における「軍隊など統制組織における用法」の解説
イングランドでは、軍隊や警察など、階級化された組織における上位階級者に対して、特定の階級それぞれにふさわしい個別の敬称を用いる代わりに、広く「サー」が用いられることがあるが、同様の慣行はカナダのフランス語圏でも一部で行なわれている。ほとんどの言語において、このように誰に対しても用いられるような呼称は十分に敬意が込められていないと受け取られるか、ドイツ語の「ヘル (Herr)」の場合のように、階級名称を続けて用いるのが普通になっている。 男性の上官に対して呼びかける場合、特定の階級に言及する呼び方に代えて「サー」を用いることができる(ただし、士官や准士官に対して用い、下士官には通常用いない)(フィクション作品の中では女性の上官に「サー」を用いる場面が描かれることがよくあるが、女性上官は「マーム (ma'am)」と呼びかけられる)。しかし、アメリカ海兵隊やアメリカ沿岸警備隊の新入隊員は、基礎訓練において男性士官や下士官、特に指導する担当教官(海兵隊では drill instructor、沿岸警備隊では company commander、これ以外の各軍ではdrill sergeant よって軍曹・曹長が務める)を、「サー」と呼ぶ。アメリカ軍に入隊したばかりの新兵は、士官を常に「サー」と呼ぶ。訓練中は「サー」が一貫して用いられるが、最初の指導教化を経た後はそれぞれの階級に応じた呼称(サージ、ルテナン、キャプテン、メジャー、カーネル、ゼネラル)を用いる。 アメリカ英語において、非公式な慣用表現となっている用法のひとつとして、下位の者が上位の者に応答する際、強調のために応答の前後にサーを付け、「Sir, yes(no), sir!」のようにする、という慣行があり、特に基礎訓練のドリルにおいてこれが行なわれている。アメリカ沿岸警備隊の新入隊員もこれを実践している。なお「Yes, sir!」と「アイアイサー(Aye aye sir)!」は似ているようだがその用途は全く異なる。「Yes」は呼ばれた際に“はい、何でしょう?”と応える表現で、「Aye aye」は下された指示を実行する「了解!」である。 アメリカ陸軍でも、イギリス軍でも、下士官を「サー」と呼ぶのは不適切とされている。ただし、イギリス陸軍においては、パレード行進の際には下士官も、准士官と同じように「サー」と呼ばれる。 王立カナダ騎馬警察においては、幹部警察官のみが「サー」と呼ばれ、下級警察官や巡査は階級によって呼びかけられる。イギリスの警察において、警部補(inspector)以上の階級にある幹部警察官は「サー」と呼ばれる。一般的にそれらしい呼称だと信じられている「ボス (Boss)」や、(governor を変形した)「Gaffer」、「Guv」といった呼び方は、テレビや映画が創り出したものである。
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