資材の運搬・供給
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/25 03:41 UTC 版)
「笹子トンネル (中央本線)」の記事における「資材の運搬・供給」の解説
工事に使用する資材は、一部は現場付近で調達できるものがあったが、爆薬・セメント・鋼材・石炭などは遠隔地から輸送しなければならず、峻険な山を越えるか急流を遡っての輸送は大変な困難が伴った。資材輸送の遅延により工事の進行に支障をきたすことも多く、また輸送費も多額のものとなった。 東口へは2通りの輸送路があり、八王子から小仏峠を越えて17里(約66.8 km)の距離を輸送するもの、もう1つは東海道本線御殿場駅から篭坂峠を越えて17里の距離を輸送するものであった。いずれも雨の降った後は泥濘と化す道で困難が多く、発送から現地への到着まで1か月を要するほどであった。1902年(明治35年)になり工事列車の運転区間が伸びてくるとそれに頼るようになったが、これによる輸送は結局一部のみであった。西口へは東海道本線岩淵駅(現在の富士川駅)から富士川を遡り鰍沢に揚陸し、甲府・勝沼を経て輸送した。鶴瀬村(甲州市大和町鶴瀬)から先は車馬の通れる道が無く、工事を行って1マイル27チェーン(約2,140 m)の馬力牽引の資材運搬線路を敷設した。こちらもやはり発送から1か月ほどかかる道のりであった。 トンネルの覆工に用いた煉瓦は、基本的に現地で調達された。必要とされる量が多く重いため遠距離の輸送は高くつくからである。東口では黒野田と初狩に製造所を置いたが良質の粘土が手に入らないため深谷産(日本煉瓦製造)のものに比べて品質は劣った。後に工事列車が猿橋駅まで運転できるようになると深谷産のものも一部使用されたが、その割合は少なかった。西口については駒飼・小佐手での製造の他山梨煉瓦製造製のものを使用し、これは東口よりは品質がよかったが深谷産のものほどではなかった。石材と砂は坑口の近くで採集することができ輸送の必要が無かった。支保工やセントル材(覆工を施工する際の型枠)に使用する木材は主に松が用いられ、東口では初狩村や広里村から調達された。西口では近くに適当な松林がなく、北巨摩郡方面もしくは東口側から笹子峠を越えて輸送したため費用が高くついた。この他、現地に設置した蒸気機関の運転の燃料には付近の森林から調達した薪を用いていた。石炭も使用され、火力が強く利便性がよいという長所があったものの、長距離輸送に伴う高価格のため、経済的には薪の方が良好であった。
※この「資材の運搬・供給」の解説は、「笹子トンネル (中央本線)」の解説の一部です。
「資材の運搬・供給」を含む「笹子トンネル (中央本線)」の記事については、「笹子トンネル (中央本線)」の概要を参照ください。
- 資材の運搬・供給のページへのリンク