詐欺が成功した要因
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/26 03:10 UTC 版)
「積水ハウス地面師詐欺事件」の記事における「詐欺が成功した要因」の解説
不動産会社が地面師対策として通常実施する「知人による確認」を実施しなかった。取引をしようとする「所有者」の写真を近隣住民や知人に見せる方法で行われる本人確認手法の一種である。真の所有者は当旅館で生まれ育っているため、近隣で知らないものはないほどであったのに、これを怠った。 土地購入の承認を得るための稟議書承認の際、4名の回議者が飛び越され、予め現地視察をしていた社長が先に承認した。回議者全員が押印したのは手付金支払後だったとも報道された。当時不動産部長だったKは、「この取引はおかしい」と言い続けたが、阿部俊則社長や東京マンション事業本部長の常務らは、取引相手のネガティブ情報を伏せ、最終的にKに捺印させた。Kの証言では、取引前の2017年5月10日に積水ハウス本社法務部宛に送られてきた内容証明郵便について、怪文書の類とみなし不動産部には伝えなかった。 積水ハウスが手付金支払いと仮登記を行った後に、真の所有者から「売買契約はしていない、仮登記は無効である」などと記載された内容証明郵便4通が届けられ、さらにその一通には印鑑登録カードの番号が記載されていたにもかかわらず、積水ハウスはこれらを土地売買を知った者による妨害行為と思いこんで、偽の所有者から内容証明郵便を送っていない旨を記載した確約書を入手する程度の対応しか取らなかった。当時本当の所有者が長期入院中で面会謝絶となっており「なぜ登記を確認し、内容証明書類を作成できたのか」と不審視される点があったのが、積水ハウス側が真正の通知書と信じられなかった要因とされる。 妨害行為と思いこんだ積水ハウス側はこれに対応するため、残代金の決済日を約2か月早めて6月1日にした。残代金支払日の6月1日には、真の所有者の通報により現地に来た警察官は、積水ハウス社員に対して警察署への任意同行を求めた。残金支払手続中のことで、この連絡を受けた積水ハウス担当者は妨害行為だと思い、そのまま支払手続を完了した。 地面師は、これ以前に複数の不動産会社に声を掛けていたが、所有者の本人確認ができないという理由で断られていた。 積水ハウスは、都心でのマンション用地買収は得意分野ではなかったが、マンション事業部はこの案件を是非とも進めたい一心で、稟議承認の前に社長に現地を見せ、その後、社長による飛び越し承認があった。社内では「社長案件」と呼ばれるようになっていた。マンション建設用地を確保したいという社内の勢いが強く、その承認体制が機能しなかったといわれる。
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