設定数値について
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/14 23:58 UTC 版)
「インフレターゲット」の記事における「設定数値について」の解説
インフレターゲットを採用すると、ハイパー・インフレに発展する危険性があるとの指摘があるが、その危険性はインフレターゲットに上限を設定することによって回避できる。 森永卓郎は「範囲の上限を超えれば、逆に金利の引き上げ・資金供給の引き締めで物価上昇率を下げるように誘導する。そのための目標圏の設定である」と指摘している。森永は「高めに出る消費者物価指数をインフレターゲットする場合、ゼロを目標にはできない。消費者物価指数の上昇率がゼロの場合、実際の物価上昇率はマイナスとなる。1-3%の物価上昇率を目指せば、実際には物価は変わらない或いは少しの上昇になる」と指摘している。 「消費者物価指数#実体経済との誤差」も参照 岩田規久男は、下限1%上限3%程度のインフレ・ターゲットの設定を提案していた。また岩田は、具体的なインフレ目標として、消費者物価指数の前年比上昇率が何年後に何%と、期限を切って設定する必要があるとしている。 エコノミストの山崎元は「長年にわたって日本の物価上昇率は低く、バブル期でも1%程度だったので、2%以上の物価目標は現実性が乏しいとの意見もあるが、だからこそデフレ癖が直り、マイルドなインフレが常態になるまで金融緩和を続ける必要がある」「金融緩和と財政赤字の拡大でインフレ率が上昇し始めると、ただちにハイパーインフレにつながるかのような『不安』ないし『脅し』の議論があるが、これは根拠が乏しい議論である」と指摘している。 原田泰は「2%インフレ目標とは、2%を超えたら金融を引き締めるとあらかじめ決めているので、決してハイパーインフレなどにはなりえない」「失業率が十分に低下したら、物価目標に必ずしも拘らなくても良い」と指摘している。原田は「大事なのは景気が良くなることで、2%というのはそのくらいのほうが雇用が良くなるという経験則があるからである」と指摘している。 竹中平蔵は3%もの物価目標を掲げると長期金利が上昇しかねないとの批判に対し、「効果がない、長期金利や物価が急騰しかねないという2つの矛盾した批判があるが、批判者は対案を出すべきである。効果がない可能性も、極めて大きな効果がある可能性もある。慎重に実行できる人を中央銀行総裁に選べばよい」と指摘している。 浜田宏一は「(2%の物価目標は)経済が回復してくれれば、1%に越したことはない」「インフレ目標の達成よりも雇用や生産など実体経済の回復が重要である」と指摘している。または浜田は「2%までなら何の問題もないが、4-5%になればインフレ課税となる。インフレは行き過ぎないように止めることは重要である」と指摘している。 ジョセフ・E・スティグリッツはインフレ目標政策について目標インフレ率が低い場合、失業を解決できない場合があると述べている。「日本で議論されているインフレ目標は、最低限のインフレ率を実現させるものであるが、3%程度のインフレ率を目標にするのがよい」と指摘している。「政府も適切な景気刺激策に取り組むなど、政府・日銀がそれぞれの役割を果たせば、(2%の物価目標の)達成は可能だと思う」と述べている。 2010年2月、IMFのリポートは「4%の目標が適切である」とした。 経済協力開発機構(OECD)は、2%の物価上昇目標の実現にはさらに大胆な量的緩和策が必要だと指摘し、社債や長期国債を含めた日銀による資産購入の拡大が望ましいとの見方を示している。 経済学者の池尾和人は「物価目標2%は、コストプッシュ的な形で上がっても生活は良くならない」と指摘している。
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