インフレ課税
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/03 06:11 UTC 版)
インフレーションになると、現金価値の低下によって政府債務が減少し、課税と同じような効果がある。通貨を発行すれば、シニョリッジが国庫に収入として帰属し、直接徴税をしているかのような効果が生じる。これらを「インフレ課税」という。 エコノミストの山崎元は「財政支出もインフレに連動するため、財政支出を同じように拡大させてしまえば財政収支は赤字のままとなってしまうが、過去のストックベースの財政赤字は実質価値が減価していく」と指摘している。山崎は「インフレは実質的に、現金及び現金の同等物の保有者に対する課税である」と指摘している。 経済学者のトマ・ピケティは「財政についての歴史的な教訓としては、1945年のフランス・ドイツは対GDP比で200%の公的債務を抱えていたが、1950年には大幅に減少した。それは債務を返済したわけではなく、物価上昇が要因である。物価上昇なしに公的債務を減らすのは困難である」と指摘している。 田中秀臣は「『インフレ課税』は財政危機を回避する有効な手段となる。結果としてインフレ課税が生み出されるような穏やかなインフレ政策が、財政問題の解消に必要となる」と指摘している。 経済学者のケネス・ロゴフは「世界の主要中央銀行は、穏やかにインフレを高進させることが巨額の債務から逃れる上で有益であることを認識すべきである」「原則的に言えば、インフレは債務問題を解決する公正な方法とは言えない。短期的で穏やかなインフレ高進(例:2年間で6%程度)では、債務問題を解決することにはならないかもしれない。しかし、債務負担を軽減させ、他の手段を取るコストを減らすことができる」と指摘している。 7-8%の高いインフレ率を起こすことによって、国・企業が抱えている借金を目減りさせることを「調整インフレ」という。
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