血栞塗
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/27 06:53 UTC 版)
「岸辺露伴は叫ばない 短編小説集」の記事における「血栞塗」の解説
『ウルトラジャンプ』2018年1月号に掲載された、宮本深礼による短編作品。タイトルの読みは「ちしおりみどろ」。 あらすじ フグ毒による中毒について調べていた露伴はS市の図書館を訪れ、司書に稀覯本の『河豚食の誘い』を閉架書庫から出すように依頼する。 図書館に人影は少なく、司書によると見つけると不幸になるという「真っ赤な栞」がここの本に挟まっているという噂が立ったことで人が来なくなったという。 露伴はその話に興味を持ち、司書が閉架書庫に本を取りに行った間に栞を探し始めるが、児童コーナーでそこにあるはずのない『河豚食の誘い』を見つけ、その中のあるページを開いた際に「真っ赤な栞」を発見する。 登場人物 岸辺 露伴(きしべ ろはん) 杜王町に住む人気漫画家。フグ毒に関してリアリティのある情報を求め、中毒した際の症状を挑戦者自身が記した記録が書かれている本『河豚食の誘い』を目当てにS市の図書館を訪れ、そこで見つけると不幸になるという「真っ赤な栞」の噂を知る。 司書の女性 図書館の司書を務める若い女性。服装はだらしなく、適当な性格。 露伴の依頼で『河豚食の誘い』を閉架書庫まで取りに行かされるが、露伴が児童コーナーで『河豚食の誘い』を発見したのとほぼ同時に見つからなかったと報告しに戻って来る。 制止していたにもかかわらず露伴が『河豚食の誘い』のくっつき合ったページを開き、真っ赤な栞を見つけて実際に不幸に見舞われると、露伴にフグ毒で死んだ子供の例えを出して好奇心は時として命を奪う事もあると説明し、自らを「好奇心の赴くままに人の興味が至る果て…全てを知り尽くした存在」と称し、新たに「好奇心によって殺されそうになっている漫画家は、助かるために好奇心を捨てることができるのか」を知りたくなったと露伴に語る。 ヘブンズ・ドアーで本にされた彼女の人生の体験からは寛永の大飢饉で生き延びるために様々な物を口にし、食べる目的が次第に好奇心を満たす事へと変わると今度は食人や人間の解剖にまで手を出すようになっていった記録が残されており、その先のページからは露伴の真意を確かめるかのように大量の真っ赤な栞が零れ出してそれ以上読み進めることを牽制したが、露伴が彼女の問いにNoと答え意を決してページを開くと、答えを知り好奇心が満たされた事に満足したのかその瞬間に姿を消した。 露伴は彼女を「好奇心の権化」と評するもその正体については最後までわからないままだったが、彼女が次に「好奇心に殺されそうになっても好奇心を捨てられなかった漫画家は、どうすれば好奇心を捨てるのか」という問いの答えを求めて必ず接触してくると予想し、その時こそ読めなかった記憶に目を通してその正体を確かめようと意気込んでいた。 用語 河豚食の誘い 明治中期に書かれたフグ料理に関する書籍。単なる料理本ではなく、フグの禁食令が敷かれていた時代に命懸けでフグを食していた武士たちの話や、中毒するリスクを負いながら安全な調理法を模索した挑戦者たちの記録などといったフグ料理の歴史をまとめたもので、中毒した際の症状についても詳細に記されているという。 再版されていない稀覯本であり、杜王町の図書館にも所蔵されてなかったことから露伴はわざわざS市の図書館までこの本を探しに来ている。 真っ赤な栞 S市の図書館にまつわる噂話で、図書館の蔵書に真っ赤な栞が挟まっており、それを見つけた者は不幸になるという。 司書によれば最近はその噂のせいで図書館の来館者も減っているというが、関心を持った露伴はそれを探そうとし、探していた『河豚食の誘い』のくっつき合ったページを好奇心で開いた際にその中から発見する。 外見は噂通り赤一色で表面に錆のようなブツブツがあり、すり切れたワインレッドの飾り紐が付けられている。不幸になるという噂も本物で、露伴も手に入れてすぐに立て続けに不幸に見舞われている上、素材を確かめようと栞の端をちぎろうとした際には親指の爪を剥がしている。 本性を現した司書によれば栞はそこで読むのをやめた証で赤い色はそれ以上進むなという警告であるとし、彼女は露伴の目の前で二枚目の栞を出し、ヘブンズ・ドアーで本にされた彼女の内部にも大量の栞が挟まっていた。 司書が姿を消した際には栞も全て消えており、ほとんど人がいなかったはずの図書館もいつものように人で賑わっていたため、栞やそれにまつわる一連の出来事は彼女が好奇心を満たすために仕組んだことではないかと露伴は推測している。
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