菊花文三耳壺〈丹波/〉
主名称: | 菊花文三耳壺〈丹波/〉 |
指定番号: | 2627 |
枝番: | 00 |
指定年月日: | 2005.06.09(平成17.06.09) |
国宝重文区分: | 重要文化財 |
部門・種別: | 工芸品 |
ト書: | |
員数: | 1口 |
時代区分: | 鎌倉 |
年代: | 13世紀初 |
検索年代: | |
解説文: | 兵庫県篠山市に所在する中世を代表する窯業地の一つである丹波窯の作品である。丹波窯の製品は鉄分の少ない稠密な白い素地で、器表が明るい褐色を呈し、淡緑色の自然釉がたっぷりと掛かるものが多い。鎌倉~室町時代には壺、甕を中心とした製品を焼造している。 本品のような三耳壺は、平安時代後期から鎌倉時代の一二~一三世紀に、東海地方の猿投【さなげ】窯、常滑窯、瀬戸窯などを中心に各地で四耳壺とともに焼造された器種である。丹波窯では本三耳壺のように菊花文を施した作品や陶片は近年までは知られていなかったが、昭和五十二年に兵庫県篠山市今田町に所在する三本峠北窯の物原が発掘調査され、本品と類似する菊花文を含む数多くの文様陶片が確認された。これにより本作品が丹波窯の製品であることが判明するとともに、三本峠北窯の操業年代が文様陶片に供伴して出土した資料から一三世紀初期に推定され、合わせて製作年代の一端を推測できるようになった。 本三耳壺は、東海地方の作品とは口辺の仕上げが異なり、端部を平坦にして面を作り出す点はやや後出的な要素である。また、丹波窯では室町時代まで粘土紐による耳が残るが、全体がやや小さく空間をほとんど有しない耳の形態も同じく後出的な要素である。先の三本峠北窯の操業年代やこれらの点などから、本作品の製作時期は一三世紀初めに考えられる。 本壺は、肩から胴上部に菊花文が篦彫りでくっきりと描かれた、他にほとんど遺例が存在しない作品である。鎌倉時代初期まで遡る丹波窯最初期の作例で、全体にほぼ欠けるところなく器形も整った形姿を見せる。平安時代後期(一二世紀)に比定される国宝・秋草文壺(渥美窯、慶應義塾所蔵)や重文・渥美灰釉芦鷺文三耳壺(愛知県陶磁資料館所蔵)などに続く、鎌倉時代の陶器を代表する優品である。 |
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