腸毒素(エンテロトキシン)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/22 07:07 UTC 版)
「ウェルシュ菌」の記事における「腸毒素(エンテロトキシン)」の解説
詳細は「クローディン」を参照 1953年、イギリスのベティ・コンスタンス・ホブス(Betty Constance Hobbs)により、ウェルシュ菌が食中毒の原因になることが確認された。 ウェルシュ菌A型菌がヒトへの病原性を示す。A型菌は、主要抗原 (major antigen)ではα毒素のみを産出する。A型菌のうち、(組織傷害性毒素とは別に)エンテロトキシンを産出する株によってウェルシュ菌食中毒が起こる。これがヒトへの毒性で頻度が高い。アメリカではサルモネラ中毒、ブドウ球菌食中毒に次いで多く、日本でも原因別患者数で常に上位を占めている。エンテロトキシンはウェルシュ菌の他の毒素とは異なり、芽胞を形成するときにだけ産出され、栄養型菌の増殖中には産出されない。 ウェルシュ菌による食中毒は、多量の生菌を含む食物の摂取により起こる。発症の原因は毒素であるが、食物中で予め産出された毒素によるものではなく、生菌の摂取が前提になることから、本症は感染型食中毒に分類される。ウェルシュ菌エンテロトキシンは、芽胞形成時に産出される特徴的な毒素と考えられている。 本菌で汚染された食物を加熱調理すると、耐熱性の芽胞は生残していて、調理後の冷却とともに発芽し、食物中に急激に増殖する。食物とともに腸管に達した菌は芽胞を形成する。このときにエンテロトキシンが作られ、菌体の融解に伴って放出され、腸管粘膜細胞に作用して症状が発現する。 分離されるウェルシュ菌のうち約5%がウェルシュ菌エンテロトキシン(CPE、Clostridium perfringens enterotoxin)を産出する。ほとんどCPE陽性株はA型ウェルシュ菌に分類されるが、C型やD型であることも一般的である。変異CPEを産出する菌も認められるが。A型、C型、D型のウェルシュ菌が産出するCPE蛋白質のアミノ酸配列は、原則として同一と考えられている。E型ウェルシュ菌の産出するCPEは、10アミノ酸程度の変異が知られている。 CPEは、N末端の細胞障害性領域とC末端の結合領域の2つの機能的ドメインからなるA-B毒素である。1997年にCPE受容体が同定され、1999年にCPE受容体がクローディン-4と同一であることが判明した。
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