緑肥植物とは? わかりやすく解説

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緑肥

(緑肥植物 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/06/05 21:29 UTC 版)

代表的な緑肥植物のヒマワリ(小野市立ひまわりの丘公園

緑肥(りょくひ)とは、緑色植物をそのまま又は乾燥させてに漉き込む肥料[1]草刈りで得られた雑草のほか、緑肥とするために栽培される「緑肥作物」を使う[1][2]土壌窒素カリウムなどの栄養や有機物を供給でき、空隙を増やして透水性を改善するといった土壌改良効果があるほか、緑肥作物の種類によっては線虫などによる病害の抑制につながる[1][3]

緑肥としての効果と風雨による表土流出の防止も兼ねて使われる植物を英語ではカバークロップCover crop)と呼ぶ[4]

植物などを腐熟させてから用いる堆肥とは区別される[1]

背景

第二次世界大戦後、硫安(硫酸アンモニウム)、尿素など、安価な化学肥料が大量生産されるまでは、窒素肥料になる物は貴重品で、人間尿、捕れすぎたや、食用にならない海藻ホンダワラSargassum fulvellum)など)とともに、肥料としてよく利用されていた。

有機農業など、化学肥料や化学農薬などを使わない又は使用量を抑える農法では現代においても重要であり、日本では農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)が2020年に利用マニュアルを公開したほか、農林水産省が2021年に策定した『みどりの食料システム戦略』でも実現手段の一つに挙げている[1][3]

自然に生える雑草だけでなく、植える農地の土壌の性質やそこで栽培を予定する農作物の種類、期待する土質の改良効果や防ぎたい病虫害に合わせて緑肥植物を選んで、種子を購入して植えることも多い[5]

緑肥にはマメ科Fabaceae)の植物が使われることが多いが、これは以下のようなメリットがあるためである[2]

  • 窒素固定をする
  • 耐寒性があるものが多く、秋から育てて春に漉き込める。
  • 根が長いものが多く、普通作物が利用できない深さの養分も集められる。
  • 漉き込まれてから分解しきるまでが早い。
  • マメ科植物の栽培で土地の通気性や排水性が良くなる。

効果

  • 土の構造がよくなることで、水はけ、保水力などが高まる。
  • マメ科の植物は共生する菌による窒素固定が可能なため、後に栽培する作物に施肥する窒素肥料を減らす事ができる。
  • 有機物が増加することで、土壌中の微生物の繁殖が促進される。
  • 土壌中の微生物間のバランスがよくなり、病害虫の発生を防ぐ。
  • 施設野菜土壌の塩類濃度を下げる[5]
  • マリーゴールドTagetes)などの植物はセンチュウに対する防御効果があり、栽培しておく事で後に栽培する作物のセンチュウ被害を抑える事ができる。
  • 土中で分解される際に有害な有機酸を出す(このため植え付け前に石灰を施肥して中和するか、排水をよくして有機酸の分解を早める必要がある)[2]

緑肥作物

緑肥として栽培される例として、次の植物がある。マメ科(Fabaceae)、イネ科Poaceae)の植物が多く見受けられるが、雑草を利用することもある。

マメ科
イネ科
その他

ギャラリー

脚注

  1. ^ a b c d e 緑肥利用マニュアル-土づくりと減肥を目指して-』国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 中日本農業研究センター
  2. ^ a b c 小学館編『世界原色百科事典 8 ほち-わ』(小学館昭和41年)p.491「緑肥」
  3. ^ a b [みどりワード]緑肥:すき込んで養分を供給/減肥、病害抑制に効果日本農業新聞』2025年6月2日9面
  4. ^ 「カバークロップ 緑肥栽培 米国で拡大/大学が大規模農家に調査 環境配慮、資材高追い風」『日本農業新聞』2021年10月18日16面
  5. ^ a b c d e f g h i j k 緑肥の効果について タキイ種苗公式サイト
  6. ^ 『有畜農業の役割と展開』(独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研究所山地畜産研究チーム 池田哲也、2008年8月26日 平成20年度革新的農業技術習得研修資料):「山羊、牛、馬、豚及び家禽は全てクロタラリアに中毒する。」「…飼料にクロタラリア種子で汚染されていることが米国南東部で収穫されたトウモロコト及びダイズが含まれる飼料を購入する畜産農家にとって大きな問題となっている。商業的にトウモロコトとダイズを生産している業者は畑に生えているクロタラリアの種子にしばしば汚染されている。スクリーニングにおいて種子は特に広範に見付けられる。処理種子のクロタラリア汚染は米国南東州の飼料管轄部署によって飼料中のクロタラリア種子の汚染をなくす基準が採用されるようになっている。…」(※原文のまま引用)
  7. ^ ヘアリーベッチ[1] 農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所

関連項目

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