経歴と思想
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/10 07:06 UTC 版)
「アンドレア・ドウォーキン」の記事における「経歴と思想」の解説
1960年代から平和運動やアナーキズムに関わるが、左翼の中にもひそむ女性への暴力に気づく。オランダに渡り、結婚生活を送るが、「夫からの暴力を受け」、1970年代初頭よりラディカル・フェミニストとして活発に活動するようになる。ポルノや売春の暴力性を訴え、キャサリン・マッキノンとともに反ポルノグラフィ運動やデモを行った。文芸批評においても、男性作家達がレイプや性暴力をエロティックに肯定していると糾弾した。彼女の思想は、「合意の上で行われた結婚もレイプと同じ」であり、「ポルノは撲滅されるべきもの」というものであった。自身の思想を実現するためには、表現規制や抗議行動も当たり前と捉えていた。 ラディカル・フェミニズムを象徴する人物であるが、その急進的な主張には反フェミニズムのみならずリベラル・フェミニズムからも批判を受けている。その一方で共感や支持も少なくないのも確かである。 極端な肥満体のため、晩年は変形性膝関節症や血栓などの病気に悩まされ、2005年にワシントンD.C.の自宅で睡眠中に心筋炎により死去した。58歳。 ドウォーキンは著書『ポルノグラフィ―女を所有する男達』(ISBN 9784791751280)で、以下のように書いている。 「結婚とはレイプを正当化する制度。レイプは本来、婦女を無理矢理連れ去るという意味だが、連れ去って捕虜にすると結婚になる。結婚とは捕虜である状態の拡大延長。略奪者による使用のみならず所有を意味する」「家族という孤立した小単位に分断されることにより、人々は共通利益のために一致団結して闘うことができなくなった」 ドウォーキンにとって制度は、それが宗教的なものであれ慣習であれ法律であれ、女に対する男の優位を創りだして持続させるものとしての性交に、貢献している。性交は「プライヴェート」なものではない(『インターコース 性的行為の政治学』、第8章「法律」)。「プライヴァシー」は国家の規制を被らない自由の領域であるが、女にとってはしばしば独房、ゲットーになる。 ドウォーキンによれば、身体の接触を伴わない「強姦」がある。ポルノグラフィの撮影のさい、被写体の女が使用されたとき、それは「第1の強姦」である。「第2の強姦」は、その写真を見る人がそれを消費することである(『ポルノグラフィー女を所有する男たち』、第5章「力の行使」)。ここでドウォーキンが言及している写真は、2人の女が写ったものと女の恥部がクローズアップされたものである。 また、ドイツ版『プレイボーイ』からアメリカ版に再掲載された、レーザー照明が使用されているという別の或る写真に至っては、「魔女は火あぶりにされた。ユダヤ人は焼却された。レーザーは焼く。ユダヤ人であり女である『プレイボーイ』のモデルは、捕らわれ、縛られ、焼かれる危機にさらされている」と、ドウォーキンは言う。このモデルがユダヤ人「である」という表現が隠喩であるのか否かは判然としない。
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