経口生ポリオワクチン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/17 06:13 UTC 版)
「ポリオワクチン」の記事における「経口生ポリオワクチン」の解説
経口生ポリオワクチン(OPV)は、弱毒化された生ワクチンである。ヒト以外の培養細胞で培養され、ヒトの体温より低い温度で馴化されたことによって、ウイルスゲノム内で自然突然変異が誘発され、それによって弱毒化されている。 経口生ポリオワクチンは、咽頭と腸管での局所免疫と全身免疫の両者を誘導する。集団免疫によるポリオ根絶には経口生ポリオワクチンが優れているが、腸管で増殖したワクチン株ウイルスは便中に排泄され、周囲の人に感染し、周囲の感染を繰り返す中で強毒化する危険性がある。 経口生ポリオワクチンはポリオワクチンを研究するいくつかのグループ(その内の1グループにはアルバート・サビンがいる)で開発がなされ、他のグループにはヒラリー・コプロウスキーやH. R.コックが指揮するもあり、グループ独自の弱毒化ワクチンが研究開発されていた。 1958年、アメリカ国立衛生研究所はポリオワクチンの特別委員会を創設する。あまたあるワクチンの、動物実験において、猿の神経病原性の低発生率を維持し、ウイルスの及ぼす免疫誘導効果を慎重に評価した。1950年後半から1960年前期によるソビエト連邦の大規模な治験は、ミカイル・チュマコブとその同僚によって、ワクチンの効果と安全性が実演された。 これらの治験の結果に基づき、アルバート・サビン達は世界中に経口生ポリオワクチンを配布した。サビンワクチンは、57個あるDNAやRNAを構成する塩基置換(ヌクレオチド)を、ポリオウイルスの有毒原(マホーニー血清型)の中から、ウイルスを弱毒化をしたサビン1系統と、2つの塩基置換になる弱毒化サビン2系統と、10の塩基置換になる弱毒化サビン3系統をそれぞれ区別させた。 この弱毒化要因の共通する3種類のサビンワクチンは、ウイルスの配列内リボソーム侵入部位(IRES)において突然変異を起こし、RNAやDNAのヘアピン様二次構造のステムループ(stem-loop)構造を変化させ、ポリオウイルスの繁殖力を低減させる事で、主細胞のRNAへの感染を防いだ。サビンワクチンの弱毒化したポリオウイルスは、腸の中でとても効果的に増殖し、ポリオウイルスの細胞への感染と複製を阻止したが、神経系組織においては複製することができなかった。 経口生ポリオワクチン(OPV)は管理することが容易で、無菌の注射器や大規模なワクチンキャンペーンのために、持ち運ぶ必要がなかった(経口生ポリオワクチンは、角砂糖に溶かして接種できる)ため、ソークワクチンよりも免疫の観点から、長く提供がされていた。
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