細胞内の膜
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/10 04:03 UTC 版)
細胞膜の内側の、細胞の内容物も多数の膜結合性の細胞小器官から構成されており、それらは細胞の全体的な機能に寄与している。 ミトコンドリアと葉緑体は細菌から進化したと考えられており、この考えは細胞内共生説として知られている。この理論は、パラコッカス属とロドシュードモナス属の細菌がミトコンドリアと類似した機能を有しており、藍藻 (シアノバクテリア) と葉緑体と類似した機能を有している、という考えに由来する。細胞内共生説では、真核生物の細胞はこれらの2種類の細菌を飲み込み、細胞内でミトコンドリアと葉緑体が形成されたとされる。これらの細胞小器官の二重の膜構造はこの飲み込みによるもので、その外膜は宿主の細胞膜に由来し、内膜は共生体の細胞膜に由来する。さらに、ミトコンドリアと葉緑体の双方が独自のDNAを持っていることも、これらの細胞小器官が真核細胞に飲み込まれ、細胞内で生育した細菌から進化したことを支持している。 真核細胞では、核膜が核の内容物を細胞質から分離している。核膜は内膜と外膜から構成され、核への物質の出入りを厳密に調節している。細胞質と核の間の物質の移動は核膜孔を経由して行われる。細胞核での転写が活発になるほど、核膜には多くの核膜孔が形成される。多くのタンパク質は拡散によって核膜を越えることはできないため、核のタンパク質の組成は細胞質とは大きく異なっている。核膜の内部でも、内膜と外膜ではタンパク質の組成は大きく異なる。外膜は小胞体の膜と連続しており、小胞体と同様に外膜にもリボソームが存在し、タンパク質の生産と2つの膜の間の領域への輸送を行っている。核膜は有糸分裂の初期の段階で解体し、末期の段階で再集合する。 小胞体は、細胞内膜系の一部であり、細胞の膜の総量のうちの大きな割合を占めている。小胞体は細管と嚢状構造の閉じたネットワークであり、主要な機能はタンパク質の合成や脂質の代謝である。小胞体には、粗面小胞体と滑面小胞体の2つの種類がある。粗面小胞体はリボソームが付着しておりタンパク質合成に用いられる。滑面小胞体は毒素の処理や細胞内のカルシウムの調節などに主に利用される。 ゴルジ体は、円盤状のゴルジ扁平嚢 (Golgi cisternae) の層が積み重なった構造をしている。ゴルジ体は3つの主要な区画 (シス嚢、中間嚢、トランス嚢) から構成され、複数の細管状・網状のネットワークと小胞によって、全体の組織化、層構造の連結、積み荷の輸送が行われている。
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