系統安定と直流送電
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/10 02:18 UTC 版)
自然エネルギー由来の発電システムでは計画的で安定的な電源供給は望めないために、送電・配電系統に影響を与えないように高機能なパワーコンディショナー(パワーコンディショナ(パワコン)は和製英語で、海外では一般にPVインバーターと言う(PVはPhotovoltaic:太陽電池))。といった系統安定化のための技術開発が進められており、特に送電系統に関しては日本では電気設備技術基準、電気設備の技術基準の解釈、電力品質確保に係る系統連系技術要件ガイドライン、系統連系規程などにより規制されている(詳細は系統連系を参照)。 分散型電源の中でも燃料電池や太陽電池のように直流出力型のものは、直流-交流変換を行って交流式の送電網に接続するよりも、そのまま直流送電を行うことがある。 交流式の送電網では系統安定化のために、三相の位相や周波数、電圧、電流を常に整えておく必要があり、直流送電では電圧のみの制御で済むために有利なためである。交流送電では、表皮効果の問題や、リアクタンスの影響や静電容量の影響などのデメリットがある。 また、洋上風力発電機などから50キロ、100キロといった距離を送電することは、送電中に電力ロスの大きい交流では不可能なのが実情だが、直流であれば1000キロでも2000キロでも、技術的に無理なく送電可能である。 日本の交流送電網における送電ロスは6%程度だが、高圧直流送電なら、1000キロでも3%程度のロスに抑制可能である。 他にも、交流送電には「交流ループによって潮流調整が難しい」「フェランチ効果による障害が発生しやすい」デメリットがある。 イタリアのチェパガッティとモンテネグロのコトルをアドリア海を挟んでおよそ400キロの距離を海底ケーブルで結び、主にモンテネグロ側から高圧直流電気を送るプロジェクトが立ち上がり、2017年現在建設工事を進めている。 中国では、直流の超高圧送電網の整備も進んでおり、800kV以上の直流送電網が7つ建設中または承認待ちとなっている。「昌吉ー古泉」のプロジェクトは電圧1100kV、距離3300kmである。 将来、仮に直流送電や直流配電が一般化すれば、電気製品への給電も交流ではなく直流のまま行う直流給電が採用されることも考えられる。その際、直流電流を遮断する時に発生するアーク放電が課題になると思われる。
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