精神鑑定実施
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/16 03:12 UTC 版)
「広島タクシー運転手連続殺人事件」の記事における「精神鑑定実施」の解説
弁護人側は「検察側は『金銭目当ての犯行』を主張しているが、被害者4人とも奪った額は数万円程度で、普通はこの程度の額のために強盗殺人を犯すとは考えられない」と主張し、1997年10月30日付で「動機がはっきりとしないため責任能力の有無を問いたい」として広島地裁に対し被告人Hの精神鑑定を行うよう請求した。 これを受けて1997年11月5日の第10回公判で広島地裁(谷岡武教裁判長)は弁護人側による精神鑑定請求を認める決定をした。広島地裁はこの理由について「犯行の動機に曖昧な点があり、事件当初の精神状態を調べる必要性がある」「各犯行状況を鑑みてその動機をはっきりさせるためにも精神鑑定が必要だ」と説明した。弁護人側による申請に対し、検察側は犯行動機について「遊興費など借金返済に窮した末の自暴自棄な犯行であることは明白だ」と異議を唱えたものの、精神鑑定の決定そのものには異議を唱えなかった。 この決定により審理は一時中断し、広島地裁が精神科医・山上皓(当時・東京医科歯科大学教授)に依頼して精神鑑定を実施した。精神鑑定では「被告人Hの事件当時の精神状態」に加え「被告人Hが殺人に至った動機」についても解明が試みられ、精神鑑定を担当した山上は以下のように結論を出した。 被告人Hは「男性としての自信に欠けた」とする挫折感を抱き「暴力犯罪の空想などで強い男性像を示したい」という性癖があり、犯行はこの空想を実行に移したものである。 被告人Hの挫折感は「青春時代に経験した大学受験の失敗などの挫折」に端を発しており、そこで自分自身に失望した反面で絶えず「自分はこんなものではない」という自負心を抱き続けており「自分の力を証明する方法」として女性を殺害することを思いついた。 被告人Hは一時期「神経症的な葛藤が高まったり、気分の高揚した状態で刹那的な行動を繰り返す」など「通常とは異なる精神状態」だった可能性がある。その人格には著しい偏りがあるが「責任能力に影響を及ぼしうるような病的なもの」とはみなされない。 1999年(平成11年)2月24日に広島地裁(谷岡武教裁判長)で第11回公判が開かれ、約1年3か月ぶりに公判が再開された。また同日の公判で精神鑑定の結果が報告・提出され、検察側・弁護人側とも鑑定書の証拠採用に同意したが、弁護人側は同日に「鑑定書には疑問点や確認したい点がある」として山上の証人申請をした。
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