精神障害との関連性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/16 21:18 UTC 版)
一般社会や医学界では、「複数の人格」(英: multiple personalities、多重人格)があることは、一般的に精神障害の兆候であると考えられている。タルパマンサーは、解離性同一性障害や統合失調症と混同されることが多いが、タルパを有していることは、どの精神障害の診断基準にも当てはまらない。とはいえ、タルパコミュニティの人口の大多数が、何らかの精神障害を有していることが調査により判明している。2018年、サブレディットの「r/tulpas」が行った調査では、203名の回答者のうち、59%が抑うつ、44%が不安障害、28%がADHD、21%が自閉症、9%がPTSD、7%が双極性障害、6%がパーソナリティ障害と診断されたことがあると回答している。141名のタルパマンサーを対象にサミュエル・ヴェイシエールが行った調査では、タルパマンサーの自閉症・ADD・ADHDの割合は一般集団よりも著しく高いことが判明した。ヤコブ・J・イスラーが行った研究では、被験者の半数以上が何らかの精神障害、または神経発達障害(英語版)を有していることが判明した。ヴェイシエールは、自閉症やADHDなどのグループは強い孤独感を抱いているため、タルパを作りたがる傾向にあるのではないかと推測している。実際に、精神障害と診断されたことのあるタルパマンサーの93.7%が、タルパを作成することによって症状が改善したと答えている。 Martin et al.(2020)は、タルパとホストのパーソナリティ特性(英語版)と関係満足度の研究を行った。そこでは、すべての被験者がタルパと全体的に良い関係を持っていると答えた。データ分析では、タルパとホストのパーソナリティは基本的に類似しており、パーソナリティ特性の各ドメインのスコアが二者共に低いことが関係満足度の高さと相関していることが分かった。しかし、脱抑制(英: disinhibition)においてホストがタルパよりも高いスコアを示した場合、より高い関係満足度が示されることが分かった。脱抑制の項目は、人間関係を作り、維持し、上手く機能する上で重要な能力に関する質問をするものであり、スコアが高いほどその領域で機能不全であることを示している。孤独感や社会的不安をタルパ作成の動機としてよく挙げるホストが脱抑制の領域で高いスコアを得たことから、人間関係や社会生活に影響を与える高レベルな機能障害を経験していることが必然的に理解される。したがって、そのようなケースでは、脱抑制の低いタルパが脱抑制の高いホストの苦闘・苦痛を和らげるようなコーピングメカニズム(英語版)(対処・適応メカニズム)としてタルパマンシーは機能している可能性があり、タルパとの相補的な関係がホストの生活の中で有益なメカニズムとして働いている可能性があると著者らは指摘した。これに加え、タルパマンシーは必ずしも精神障害を有していることを示さないとしつつも、ホストが他の形の精神障害を経験したことがタルパ作成の動機となり、タルパを使って精神障害に対処している可能性も指摘された。また、その保有者に利益を与えるという点で、タルパとイマジナリーフレンドの著しい類似性を著者らは認識したが、子供たちが自分のイマジナリーフレンドを「友達のふりをしたものである」と理解しているのに対し、タルパのホストらは、タルパを「自律的で意識を持った存在である」と理解しており、内在性よりも外在性(自分の内言や単なる想像の産物ではなく、実際に外部の他者と話しているように感じられるということ)が重視されているため、その点で区別されるとした。
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