第2段階 100万分の1秒から3秒 「火球の出現」
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/10 02:29 UTC 版)
「原爆投下・10秒の衝撃」の記事における「第2段階 100万分の1秒から3秒 「火球の出現」」の解説
アメリカが行なった過去の核実験のデータに基づき、次のように推定された。まず爆弾の内部でウラン235の核分裂が進行し、原爆の炸裂に至る。爆弾内部の温度は250万度(摂氏。以下同じ)に達する。内部から放射されたエネルギーは、爆弾周辺の空気に衝撃を与える。衝撃波が半径約8mに広がったあたりから、閃光というより火の玉「火球」として視認される。放射線が周囲の空気に衝突し青白く光らせる。100万分の15秒後、温度は40万度に下がり、火球は直径20mとなる。0.2秒後には火球の直径は310mとなり、表面温度は6,000度で、この時に最も大きく明るく見える。また地上に熱線の影響が出てくる。2秒後までに熱線は90%が放出される。この頃からガンマ線が大量に放出され、空気が反応して紫色に見える。0.51秒後、火球は縮み始め、煙が出始める。1.7秒後にはキノコ雲が形成され始める。 この頃に地上を襲った熱線による瞬間的なやけどが、被爆死亡者の20 - 30%の死因となった。広島市では爆心地から2.3kmの距離まで、この「閃光やけど」の被害があったとされる。また、熱線を浴びた建築物は表面の塗料に瞬時に気泡が生じるなどした。その時に建物の前に人体などがあればそれが熱を受けるため、陰になった部分は変化がみられず「影」として残ることとなった。 またこの段階で衝撃波が地上を襲う。窓ガラスが割れ、破片が音速を超える速度で人々を襲った。分析に参加したポストル博士は、衝撃波は地上に激突し、反射する力が上から加わる力によって再び戻され、2倍の圧力になって建物等を襲ったと推定した。 番組では、猿楽町にあった産業奨励館が熱線と衝撃波によって破壊され「原爆ドーム」となる過程が、松屋産業による復元映像データに基づくCG映像によって再現された。爆心地(猿楽町の隣、細工町にあった島病院)の北西160mの産業奨励館に、高度567mから1,900 - 2,200度以上の熱線が0.2秒後に降り注ぐ。現在ドーム状の鉄骨が残る丸屋根を覆っていた厚さ0.3mmの銅板が溶けたが、他の部分の屋根はスレート葺きであり高熱に耐えた。その0.6秒後、1平方mあたり20トンと計算される衝撃波が到達する。衝撃波は、溶けずに残った鉄骨の間をすり抜け、内部の螺旋階段のみを破壊する。いっぽうスレート屋根が残った部分は衝撃波の圧力によってほぼ垂直に押し潰された。番組では、熱線と衝撃波による破壊にかかった時間を1秒と推定した。
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