第三話 判官流疾風剣
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/05 03:37 UTC 版)
「腕 -駿河城御前試合-」の記事における「第三話 判官流疾風剣」の解説
第3試合は、神道流槍術・進藤武左衛門と判官流疾風剣の使い手・小村源之助の対決。しかし、通常の試合と違い、進藤の得意技・陣幕突きの実演という形で行われるため、試合場には陣幕が張られた。 寛永6年、駿河城下では辻斬りが横行した。屈木頑之助による舟木道場関係者の斬殺以外にも、槍の刺突により殺害された者たちがいた。この年の4月、辻斬りを目撃した小村は曲者の後を追ったが、その者は幅の広い川を一跳びで越えて、逃げ去った。 翌月、小村は友人の佐伯修次郎に頼まれて、主君・忠長の寝所を守る宿直(とのい)の役を代わった。その夜、忠長の寝所に召された女・菊は佐伯の恋人であり、無理に夜伽を求められるならば、佐伯が菊を刺し、自らも命を絶つと誓っていたのだ。菊は忠長を拒絶し、佐伯のいる宿直の間へと走ったが、もう1人の宿直である進藤が、襖が開けられる前に、襖越しに槍を突き刺し、菊の命を奪った。その時の進藤の表情を見た佐伯は、進藤が殺しを愉しんでいると確信し、己の快楽のために菊を殺した進藤を討つことを決意した。 忠長の御前で神道流陣幕突きを披露することになった進藤に対し、陣幕を透視するというその術を見極めるべく、佐伯は陣幕の向こうで紅白の玉を捧げ持つ役を買って出た。白玉の次に紅を刺すという命に対し、進藤は「戦場の心得」と称して佐伯を突き、陣幕を破ってとどめまで刺した。忠長は、その無法を咎めるどころか、かえって進藤の行いを賞した。 一方、小村は槍による辻斬りを進藤の仕業と見極めた。槍を使い棒高跳びのように飛ぶことで川を飛び越えることが可能であり、また5月に菊を、翌月に佐伯を刺殺した件を数えれば犯行は1ヶ月に一度行われたことになる。そのことを藩の目付・渡辺監物に告げたが、証拠が得られない。しかも進藤を気に入った忠長は、禄を加増の上、家老職に取り立てると言い出した。そこで、2人は一計を案じ、御前試合で進藤を討ち取ることにした。 試合は、まず進藤が陣幕越しに突く権利があり、小村が討たれればそこで試合は終わる。小村はその一撃を凌いだ後でなければ反撃は出来ず、陣幕に遮られて素早い動きを長所とする疾風剣は封じられるという、一方的に不利な条件での対戦であった。両者が陣幕越しに対峙する様を、観客が固唾を呑んで見守る中、小村の居場所を見定めた進藤が槍を振るう。間一髪、槍をかわした小村は、陣幕を固定した縄を切断すると、陣幕の端を片手に握ったまま進藤の周囲を走り出した。陣幕に身体を絡め取られ、身動きが取れなくなった進藤を小村は一太刀で斬り捨て、佐伯の仇を討った。 登場人物 小村 源之助(こむら げんのすけ) 駿河藩の藩士。迅速な動きを命とする判官流疾風剣(はんかんりゅうしっぷうけん)の使い手。 進藤 武左衛門(しんどう たけざえもん) 仕官してまだ1年ほどの駿河藩士。神道流槍術の使い手。心眼をもって襖や陣幕の向こうにいる相手を突く「陣幕突き」という秘伝の技を使う。人を殺す快楽に目覚め、1ヶ月おきに人を1人ずつ槍で突き殺すようになっていく。 佐伯 修次郎(さえき しゅうじろう) 駿河藩の藩士。小村源之助の友人。 菊(きく) 佐伯修次郎の恋人。 渡辺 監物(わたなべ けんもつ) 駿河藩の目付。 原作との相違点 サブタイトルが、「疾風陣幕突き」から「判官流疾風剣」に変更。 進藤が忠長の命を狙う刺客ではないかという疑いには触れられず、快楽殺人者として描かれている。 佐伯の恋人の名が、千加から菊に変更。
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