第一次控訴審 (昭和51年 東京高裁) の要旨
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「パロディ・モンタージュ写真事件」の記事における「第一次控訴審 (昭和51年 東京高裁) の要旨」の解説
一審判決を不服としてアマノ側が控訴している。東京高裁は、巨大タイヤとその直下から下降するシュプールという構図が「全体として現実にはありえない虚構の世界」であると一目瞭然であることから、白川側が主張した「偽作」ではないことは明白だと認定した。アマノは独自の創作性を発揮し、白川の原著作物を取り込んだことから、このモンタージュ写真はパロディであると判断した。これは、フォトモンタージュが風刺目的で創作される場合、「言語によらないパロディ」であるとの解釈に基づく。そして剽窃とは、他者の著作物をそのまま取り込むことを指すため、本件は剽窃に該当しないと示された。 また、控訴審で示された旧30条の「節録引用」の法的解釈は以下の通りである。 辞書的な意味での節録とは、適度に省いて書き記すことである。 節録引用は、他者の原著作物の一部を自己の著作物の目的に沿う形で取り込む行為であり、広義である。 取り込む際に、旧30条の定める「正当の範囲内において」の要件を満たしていれば、原著作物の思想・感情を改変しても節録引用だと認められる。 「正当の範囲内」とは他者による自由利用 (フェアユース) であり、公共性の観点で著作者に認められた独占的な著作権には制限がかかる。 アマノのモンタージュ写真は、独自の創作性が認められることから、旧30条の節録引用が定める「自己ノ著作物」に該当すると認定された。 改変と同一性保持権の関係性 (現20条1項) については、第一次控訴審ではフェアユースや公共性の観点を持ち出している。仮に同一の著作物の枠内で二次的著作物を創作しているならば、同一性保持は尊重されるべきである。しかし本件モンタージュ写真は原著作者とは異なる思想・感情で創作された別の著作物であり、憲法第21条第1項 が保障する表現の自由が尊重されるべきだとした。特にパロディの場合、一般的には芸術的価値が低いとも評価されがちであるが、それを理由に引用の目的正当性が否定されるべきではないと述べている。 旧第30条が求める引用の際の出所の明示 (氏名表示権) については、AIUのカレンダーには白川の氏名が表示されておらず、現48条2項に照らし合わせて、無名の著作物の著作者を調べてまで表示する必要はないと判断された。これは、旧5条 (現19条1項) が定めた氏名を表示しない権利を行使したものとみなされたためである。よって偽作ではないと判断され、第一次控訴審では一審を取消し、アマノ勝訴の判決を下している。
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