第二次上告審 (昭和61年 最高裁) の要旨
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「パロディ・モンタージュ写真事件」の記事における「第二次上告審 (昭和61年 最高裁) の要旨」の解説
アマノ側は第二次控訴審の判決を不服として、最高裁に再度上告している。表現の自由を保障した憲法に違反するとの理由での上告であったが、最高裁では合憲の判断が下され、各種権利侵害についても、第二次控訴審の判断と根拠を支持している。 第二次上告審で争点となったのは、損害賠償請求の対象となる行為のカウント方法である。本件では著作財産権と著作者人格権の両侵害にまたがっており、これらを併合して損害賠償請求する際には分解して算出する必要がある。白川側は第一次控訴審の際に、著作財産権侵害にかかる損害賠償請求を自ら取り下げており、著作者人格権侵害に限定して50万円の賠償を求めた。ところが第二次控訴審では再び、著作財産権と著作者人格権の両侵害を併合して、計50万円の賠償を求めており、東京高裁は著作者人格権侵害のみに損害賠償が発生するとして、単独で50万円の支払を命じた。50万円の内訳に否定された著作財産権侵害分も含まれているのではないかとして、第二次上告審では控訴審に内訳を釈明するよう求め、差し戻している。 また、旧36条の2に基づいて第二次控訴審では謝罪広告の掲載を命じているが、この条文解釈についても第二次上告審で問われた。旧36条の2 (現115条) は著作者人格権侵害によるいわゆる「名誉回復措置請求権」を定めたもので、委嘱状不法発送謝罪請求事件 (昭和45年12月18日最高裁判決) の先例に基づき、声望名誉の定義を提示した。法的な「名誉」とは「人の社会的評価を意味する社会的名誉」と、「自己に対する評価を意味する主観的名誉」の二つが存在し、一般的に「名誉毀損」とは前者の社会的名誉のみを指し、後者は単なる「名誉感情」でしかないと区別される。つまり名誉毀損を問う裁判では、単に自尊心を傷つけられただけでなく、社会的評価が貶められたと立証されなければ名誉毀損が成立しない。そして実態として社会的評価が低下したと立証するのは容易ではなく、実際には立証不足で名誉毀損の訴えが退けられるケースが散見される。本件モンタージュ写真でも、白川の社会的声望名誉が毀損された事実は認められなかったことから、謝罪広告の掲載は不要と判示された。
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