第一次上告審 (昭和55年 最高裁) の要旨
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「パロディ・モンタージュ写真事件」の記事における「第一次上告審 (昭和55年 最高裁) の要旨」の解説
第一次控訴審判決を破棄して著作権侵害を認めている。第一次上告審における最高裁の判決要旨は以下の3点に集約されるが、とりわけ引用の要件を示した1点目は、日本の著作権法のリーディングケースとして知られている。 旧著作権法30条1項2号で定められた「節録引用」とは紹介、参照、論評などを目的とする。合法的な節録引用にあたっては、(1) 引用して利用する側の著作物が引用される原著作物との間で明瞭に区別・認識されること、および (2) 前者が主、後者が従の関係にあることが必要とされる。 モンタージュ写真は原著作物とは別の作品として捉えることができたとしても、原著作物の本質的な特徴を直接感得することができることから、無断でのモンタージュ写真創作は原著作物の著作者人格権侵害に当たる。 無断で原著作物たるカラー写真から一部風景を省き、タイヤ画像を合成して白黒のモンタージュ写真を創作して発行する行為は、著作者人格権侵害 (特に同一性保持権侵害) に当たる。 1点目の引用の2要件は、「明瞭区別性」と「主従関係」(付従性、附従性) と呼ばれる。本件では特に主従関係の観点で、引用の要件を満たしていないと判断された。そして風刺目的であったり、フォトモンタージュ技法が世間的に受け入れられているという事実によって、この主従関係の要件が緩和されることはないとも示された。なお、旧18条3項によれば、引用の際にも著作者人格権が尊重されることから、引用の3つ目の要件として原著作者の著作者人格権侵害が行われていないことも重要となってくる。これらの引用要件については、#判決の第三者分析と影響にて学説を詳述する。 2点目については、最高裁判所裁判長の環昌一から補足意見が述べられている。パロディ目的のモンタージュ写真の場合、原著作物を大きく取り込まざるを得ず、原著作者から事前許諾を得るのも困難であるとして、パロディ特有の難しさが指摘されている。一審では、原著作物のごく一部から引き出して組み合わせるモンタージュ作品が世に存在すると指摘されているが、最高裁では、原形が分からないほどに細断されてモンタージュ写真に取り込んだ場合、パロディとしては意義が成立しないとの現実的な問題が言及されている。したがって、本件モンタージュ写真は著作権法の規定の限界を超えてしまっている。原著作物の著作者人格権を侵害せずにモンタージュ写真を創作するには、模した雪山写真を自ら撮影した上で画像合成するなどのモンタージュ技法などが考えうるとして、本判決が広くフォトモンタージュ技法やパロディ全般の途を閉ざすものではないとも補足している。
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