立証の困難性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/19 08:51 UTC 版)
被疑者・被告人となった者が合意を主張する場合、刑事事件においては検察側が強いられる立証の困難の問題がある。日本の刑法では、暴力や脅迫があったか、被害者が抵抗不能だったと検察が証明しなければ強制性交とは認められない。検察側立証には被害者の証言以外に目ぼしい証拠がない場合も多く、捜査機関側には不公平な重荷が科されている。 民事事件において不法行為責任を追及する場合には暴力や脅迫の立証までは求められないものの、合意がないことについては被害者側に挙証責任がある。また、検察と違って相手方に対する強制的な捜査権を持たない被害者が立証することとなり、刑事事件とは異なる立証の困難性がある。 性行為そのものは犯罪ではなく、一定の人間関係があれば適法かつ日常的に行いうるものである。また、性犯罪の多くは知り合いの間で発生しているため、その場合は仮に性行為が立証できたとしてもそれによって行為者の性犯罪を推認することは困難である。そのため、性行為に至る経緯を詳細に調査しないと、合意の有無を判断することは難しい。また、単純に、性行為が行われる状況では、通常、目撃者が少ないといった問題もある。 強制性交被害者が法廷や取り調べの場で、加害者につけいる隙を作ったか否かを詮索されたり、被害者が異性との交友関係、性体験の有無について詮索されることがある、複数の異性の警官の前で等身大の人形相手に事件を再現させられるという指摘があり、実際、裁判実務上でも、このような例は後を絶たないと指摘される。 性的同意年齢に満たない13歳未満の子供が被害者である場合は合意の有無に関係なく犯罪であるとされる。しかし被害児童の性に対する知識不足や証言の信憑性に対する疑いから、明確な物的証拠(例えば被疑者の体液が残留していたり犯罪行為をビデオなどに記録した物が押収されるなど)がないと、犯罪行為の有無自体の立証が難しいケースが多い。そもそも被害児童に自分が犯罪の被害者になったという認識自体がない場合が多く、犯罪行為自体がなかなか発覚しにくいという問題がある。これについては早期の性教育を行うことで、子供に自身が性的搾取から保護されるべき権利主体であることを認識させようとする動きがある一方、子供が性知識を持つことに難色を示す意見もある。
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