社会・行動・文化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/08 01:29 UTC 版)
普段は、主に母子関係やオス間の同盟を元に構成される小さい集団(パーティ)に分かれて遊動する。特定のオスメス関係にもとづいた繁殖はせず、雌雄ともに複数の異性と交尾をする。そのため、産まれてくる子の父親は明らかでない。メスが出自群をでることによって近親交配の回避をしていると考えられている(第一子を出自群で生む例や、子供を連れた群間の移籍例など、例外も知られている)。群れ内の個体間には順位差があり、とくにオス間には順位を巡った争いがあることが知られる。野生下・飼育下共にオス間での連合の形成が見られる。 チンパンジーの特筆すべき習性として「子殺し」がある。子殺しによって、他のオスの血統を減らし、自らの遺伝子をより多く残す繁殖戦略であるという説もあるが、ライオンなどの子殺しと違ってどの子が自分の血を引いていないか明確でなく、この習性がチンパンジーの社会でどのような役割を果しているのかはよく分かっていない。 集団から離れて一頭でいるところを数頭で狙うことが多い。単位集団内のオス、メスの比が出生時は1:1であるのに対し成獣では1:2に偏っているのは、ここに一因があると考えられる。同属別種のボノボのオス、メス比が1:1であるのと比べると特筆されるべきことである。 チンパンジーには笑いがある。くすぐったり、追いかけ合ったりして笑い声を出す。ただし、テレビ番組でチンパンジーが芸などを披露する際、歯を見せて笑っているように見えることがあるが、これは英語で「グリマス」 (grimace) と称される表情であり、チンパンジーが恐がっている時の顔である。 チンパンジーは乱婚で、優位のオスに交尾の機会が多いが、野生では下位のチンパンジーが「かけおち」することが観察されている。草陰に隠れていた気の弱いオスのところに、いつのまにか一頭の発情中のメスが寄り添っている。そして、一日、長い時は一週間以上も群れの中心から離れて遊動範囲の周縁へと「かけおち」する。時には、オスに手荒に叩かれたりしながらしぶしぶ「かけおち」するペアもいる。ニホンザルのDNA解析から、ボスよりも下位のオスの子孫の方が多かったという研究結果があることから、チンパンジーも同じようなことが予想されるが、まだ報告はされていない。交尾は一回10秒程度でメスの排卵日に一日5、6回し、オスは毛づくろいで機嫌をとるが交尾後は毛づくろいをしない。 チンパンジーは道具使用や挨拶行動を含め、さまざまな文化的行動が報告されてきたが、1999年のホワイテンらの論文以降2000年代急増している。ホワイテンらが取り扱った文化的行動は物の操作に関するものが多い。 ここで使われている「文化」の定義は、ある行動レパートリーが集団の多くのメンバーによって共有され、世代から世代へと社会的に情報が伝達される現象ということである。行動レパートリーのうち、社会的学習によって伝播または伝承され、なおかつ地域間の行動上の差異が単に生態的要因の差異によるものではないものを指している。
※この「社会・行動・文化」の解説は、「チンパンジー」の解説の一部です。
「社会・行動・文化」を含む「チンパンジー」の記事については、「チンパンジー」の概要を参照ください。
- 社会行動文化のページへのリンク