知識経営論における暗黙知
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/01 15:48 UTC 版)
ポランニーの用語を利用した理論に、ナレッジマネジメントの分野で使用される、野中郁次郎の「暗黙知」がある。 野中は暗黙知という言葉の意味を「暗黙の知識」と読みかえた上で「経験や勘に基づく知識のことで、言葉などで表現が難しいもの」と定義し、それを形式知と対立させて知識経営論を構築した。野中は「暗黙知」を技術的次元とは別に認知的次元を含めた2つの次元に分類している。この野中の暗黙知論はポランニーの理論とは根本的に異なっており、野中独自の「工夫」と見た方が良い。ただし、同概念そのものまで野中独自の創案だとする一部見解は、ボランニーを引用しつつ野中同様「暗黙知」認識を展開した例は他にもあることから過大評価だと言える。 従来の日本企業には、職員が有するコツやカン、ノウハウなどの「暗黙知」が組織内で代々受け継がれていく企業風土・企業文化を有していた。そうした暗黙知の共有・継承が日本企業の「強み」でもあった。しかし合併・事業統合・事業譲渡・人員削減など経営環境は激しく変化している。加えてマンパワーも派遣労働の常態化、短時間労働者の増加、早期戦力化の必要性など雇用慣行の変化により「同一の企業文化の中で育ったほぼ均等な能力を持つ職員が継承していく」といった前提は崩れ、このようなステマに変化つつある。このため現場任せで自然継承を待つだけでなく「形式知」化していくことが必要とされる。その方法として文章・図・表・マニュアルなどがある。 こうした「形式知」化はナレッジマネジメントの目的の一つとしている。すなわち個人の有する非言語情報はそのままでは共有しにくいので、明文化・理論化し、知識の共有化を進めていこうという論法である。情報システムはそうした形式知化・共有化に貢献しうるのではないかとされている。 しかし形式知化しようとすると、漠然とした表現かつ膨大なデータ量となり、検索が困難で共有化が難しいとの指摘がなされている。ただ近年、形式的・分析的な管理手法が企業を席巻するなか、暗黙の次元の重要性を経営者に意識させた効果があったとされる。
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