矛盾の解消とは? わかりやすく解説

矛盾の解消

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/27 01:10 UTC 版)

ラッセルのパラドックス」の記事における「矛盾の解消」の解説

ラッセル時代には何をもって集合と呼ぶかがはっきりしていなかったので、概要述べた議論集合論矛盾指摘するかに見えた。しかし公理的集合論によって何をもって集合とするかについての形式的な整備が進むとともに、素(だが超越的)な R {\displaystyle R} の構成許容しない体系構築された。 公理的集合論ではまず集合論形式化する。次にいかなる形の集合存在するかを公理によって規定する例え素朴集合論では、上のような集合存在保証するために次の内包公理置いた任意の性質 P ( x ) {\displaystyle P(x)} に対して、 P ( x ) {\displaystyle P(x)} を満たす元 x {\displaystyle x} の集合 { x | P ( x ) } {\displaystyle \{x|P(x)\}} が存在する しかしながら内包公理からは、上述のとおり、 R = { x | x ∉ x } {\displaystyle R=\{x|x\notin x\}} が構成でき、パラドックス発生する。したがって集合論公理通常の数学集合論の上展開するために十分なだけの集合存在保証しつつ、パラドックス発生させる集合構成できないように慎重に設定する必要がある1.公理的集合論による解消 具体的に内包公理次の分出公理弱めるツェルメロによる版)。任意の性質 P ( x ) {\displaystyle P(x)} と集合 A {\displaystyle A} に対して、 P ( x ) {\displaystyle P(x)} を満たす A {\displaystyle A} の元 x {\displaystyle x} の集合 { x ∈ A | P ( x ) } {\displaystyle \{x\in A|P(x)\}} が存在する この場合R A = { x ∈ A | x ∉ x } {\displaystyle R_{A}=\{x\in A|x\notin x\}} は、 A {\displaystyle A} の要素でないため、それ自身要素としなくても矛盾発生しない。 また R {\displaystyle R} のような集合構成できないのでやはり矛盾発生しない。 (なお現在のZFC集合論では、フレンケル設定した置換公理から分出公理導けるため、分出公理自体公理としていない。) なお、ラッセルのパラドックスでは論理式 x ∉ x {\displaystyle x\notin x} に内包公理適用することによってパラドキシカル集合構成している。これは論理式 x ∈ x {\displaystyle x\in x} の否定である。ZFC集合論では x ∈ x {\displaystyle x\in x} のように循環的な帰属関係を持つ集合存在正則性公理によって否定される。もっとも正則性公理ラッセルのパラドックス排除しているわけではない。何故なら公理追加して証明できる論理式減らないからである。さらに反基礎公理呼ばれる循環的な集合存在積極的に保証する公理を置く集合論体系存在しており、この体系無矛盾性ZFC集合論無矛盾性から相対的に導かれる。ただしある種循環性を制限することによって無矛盾性確保しようという試み存在しており、例え後述する単純型理論はその典型的な例である。 2.単純型理論による解消 項に型と呼ばれる自然数 0, 1, 2,… を割り当て述語記号 ∈ を (n階の項)∈(n+1階の項) の形でのみ許容する(すなわち論理式文法制限する)ことで矛盾回避する。単純型理論は階型毎に無制限内包公理を持つが、無矛盾である。 3.部分構造論理による解消 古典論理を(グリシン論理BCK論理などの)縮約規則取り除いた部分構造論理置き換え無制限な内包公理認め代わりに外延性公理排除した素朴集合論矛盾無く展開できることが知られている。外延性公理排除されるのは、外延性公理から縮約規則導かれ、したがって矛盾するからである。例えBCKβでは次のようにして外延性公理から矛盾導かれる次の集合 A {\displaystyle A} を考える。 A = { x | A = ∅ } {\displaystyle A=\{x|A=\varnothing \}} ここで ∅ {\displaystyle \varnothing } は空集合であり、 ∅ = { x | ⊥ } {\displaystyle \varnothing =\{x|\bot \}} で定義される集合 A {\displaystyle A} の定義には自己参照含まれるが、不動点コンビネータによってこれは可能である。この集合論において外延性公理成立する仮定する。すると次のようにして矛盾導かれる等号 x = y {\displaystyle x=y} の形の仮定に対して縮約規則使用できることに注意。まず A = ∅ {\displaystyle A=\varnothing } を仮定する集合 x {\displaystyle x} を何でもいいのでひとつ取る。すると仮定および A {\displaystyle A} の定義より x ∈ A {\displaystyle x\in A} が成り立つ。再び仮定使用すれば x ∈ ∅ {\displaystyle x\in \varnothing } が成り立つ。したがって空集合の定義より ⊥ {\displaystyle \bot } が導かれる。これは不合理であるから A ≠ ∅ {\displaystyle A\neq \varnothing } である。いま y ∈ A {\displaystyle y\in A} を一度だけ仮定する。すると仮定および A {\displaystyle A} の定義より A = ∅ {\displaystyle A=\varnothing } が成り立つ。ところが A ≠ ∅ {\displaystyle A\neq \varnothing } であったはずだか矛盾 ⊥ {\displaystyle \bot } が導かれる。ゆえに空集合の定義より y ∈ ∅ {\displaystyle y\in \varnothing } が成り立つ。逆に y ∈ ∅ {\displaystyle y\in \varnothing } を一度だけ仮定する。すると仮定および空集合の定義より矛盾 ⊥ {\displaystyle \bot } が導かれる。ゆえに爆発原理より y ∈ A {\displaystyle y\in A} が成り立つ。したがって A {\displaystyle A} と空集合外延的等価である。外延性公理より A = ∅ {\displaystyle A=\varnothing } が成り立つ。これは A ≠ ∅ {\displaystyle A\neq \varnothing } と矛盾するウカシェヴィッチの3値論理上の素朴集合論では、 R ∈ R {\displaystyle R\in R} の真理値不定値解釈すればラッセルのパラドックス生じない。ところが莫少揆のパラドックス呼ばれる別のパラドックス生じる。 詳細は「3値論理#ウカシェヴィッチの3値論理」を参照

※この「矛盾の解消」の解説は、「ラッセルのパラドックス」の解説の一部です。
「矛盾の解消」を含む「ラッセルのパラドックス」の記事については、「ラッセルのパラドックス」の概要を参照ください。

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